EVENT
2022.10.27
他者の旅に想像を巡らせ、旅とは何かを考える『旅と想像/創造』展が開催中
新型コロナウイルス感染症による影響から2年半もの間移動が制限され、世界中の人々は旅を諦めました。
旅に出たい…ここではないどこかへ行きたい…Google Earthで行きたい土地や旅行ツアーのウェブページを眺めては旅への想いを募らせていた人も少なくないでしょう。
一体、旅とは何なのか…他者の旅をヒントに考えるための展覧会『旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる』が東京都庭園美術館にて開催中です。
旅を再考するための展覧会
本展覧会は、旅をテーマにした幅広いジャンルの作品・資料から、旅とは何なのかという問いの行方を、他者の旅(展示作品)を手がかりにし、再考するための“旅のアンソロジー”です。
庭園美術館の本館建築に影響を与えた朝香宮夫妻の100年前のヨーロッパ旅行から、ある個人コレクターの鉄道資料蒐集(しゅうしゅう)の旅、そして現代アーティストたちによる作品まで、本館の建築空間を生かしたインスタレーションによって紹介されています。
それぞれの旅に潜むさまざまな物語は、もはや旅が旅人だけのものではなく、受け取る側の鑑賞者と共有され、疑似体験として経験されることでしょう。本展覧会の作品を通して出会う旅が、想像を膨らませるきっかけとなり、新しい旅を切り開く手助けをしてくれます。
イントロダクションは100年前の欧州旅行
本展覧会のイントロダクションとなるのは、本館の建築にも大きな影響を与えた、朝香宮夫妻によるヨーロッパ旅行です。
朝香宮夫妻のコレクションである美術工芸品をはじめ、旅路の途中で撮影したとみられる写真、当時のポスターや雑誌などによって、1920年代の旅風景が描き出されています。
展示室では、今でいうインフルエンサー的役割を担う朝香宮允子妃が着衣したお洋服の様子がご覧になれる婦人画報の紙媒体のほか、そんな朝香宮夫妻が旅路の時に持っていたトランク、欧州から持ち帰った可愛らしいペンギンの置物、直筆の葉書などが展示されていました。
100年前の世界の様子をあらわした写真や資料から、「100年前の旅行ってこんな感じだったんだ」と、各国や地域などの特色や文化・芸術などを知る手がかりになるのと同時に、違う場所だけでなく、違う時代にも思いを馳せることができるでしょう。
数々の蒐集物やファッション、現代アート作品から旅に思いを馳せる
朝香宮夫妻のコレクションだけでなく、個人コレクターの鉄道資料蒐集の旅、そして現代アーティストたちによる数々の作品も見どころのひとつです。
旧朝香宮邸が誕生した20世紀前半の鉄道関連資料を約900点蒐集した、コレクター・中村俊一郎氏による自邸ホビールームを再現した展示は必見! 鉄道ポスターのコレクションからはじまり、書籍、パンフレットだけでなく、座席、信号機、柱時計、鉄道パーツなどを展示しています。
また、パリを拠点に国際的に活躍したファッションデザイナーの高田賢三氏による世界各国の民族衣装を取り入れたフォークロアシリーズも面白く、中国、エジプト、ポーランドなど、世界の服飾文化から着想を得たお洋服は、まるで世界中を旅しているかのような体験ができます。
その他、会場では旧朝香宮邸の各部屋を生かした6名の現代アーティストによるインスタレーションもご覧になれます。歴史的建造物である本館ならではの特別な空間と、旅に対する作家独自の視点とが交差し、いつかまた出会うであろう新たな旅の入り口へと鑑賞者を誘います。
だれかの旅は、“いつかわたしの旅になる”
会期中は、本展覧会のテーマとコラボレーションし、レストラン・カフェでは鮮やかなダークチェリー「1920 旅の頼り」と旅をイメージした「想像の旅〈コース料理〉」がいただけるほか、ミュージアムショップでは出展作家関連の商品や東欧の蚤の市やヴィンテージショップからやってきたアクセサリーなどが販売されています。
未だに新型コロナウイルス感染症による影響が残るなか、旅についてさまざまな想いを巡らせる機会となりそうです。
取材・撮影・文:新麻記子
展覧会情報
『旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる』展
会期:2022年9月23日(金・祝)〜2022年11月27日(日)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
東京都港区白金台5-21-9
休館:毎週月曜日(ただし10月10日は開館)、10月11日(火)
開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)
ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/220923-1127_JourneyAndImagination.htm

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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