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2022.11.2
19世紀末のパリを彩った2大ポスター作家『ロートレックとミュシャ パリ時代の10年』
ロートレックとミュシャ。この2人によるポスターは、美術に詳しくない人でも、どこかで目にしたことがあると思います。
19世紀末、版画技術が発達し、パリの街には色とりどりのポスターが溢れるようになりました。この頃、特に活躍したのがロートレックとミュシャ。作風はもちろん、生い立ちや人生も随分とカラーの異なる2人は、時代の寵児としてベルエポックのパリを彩りました。
大阪中之島美術館では、『ロートレックとミュシャ パリ時代の10年』が2023年1月9日まで開催されています。ステート違い(同作品でも文字の有無などのバージョンが異なる作品)や、試し刷りの段階のポスターも展示され、ロートレックとミュシャのポスター芸術を鑑賞するまたと無い機会となっています。本展の見どころについて、美術ライターの明菜が紹介していきます。
ポスター制作に乗り出した画家、ロートレック
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)が初めてポスターを手がけたのは、1891年のこと。モンマルトルのカフェ・コンセール、ムーラン・ルージュの支配人からの依頼を受けてのことでした。
当時、ロートレックは画家として評価されつつありましたが、初めて制作したポスター《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》が代表版となり、これを機に石版画に打ち込みました。
ポスター作家としてのロートレックの活動期間はわずか10年でした。本展では、この間に発表されたポスター31点を、すべて鑑賞することができます。
ロートレックの作品の特徴といえば、省略の効いた伸びやかな線だと筆者は思います。ポスターの鑑賞を通じ、人物の輪郭を無駄なく正確に線に落とし込むロートレックの画力と、画家が筆で絵具を伸ばしたような質感を表現できる高度な印刷技術の両方を味わうことができました。
挿絵画家からポスター作家へ、ミュシャ
アール・ヌーヴォー様式の作家、アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)のポスターは現代でも人気で、いたるところでオマージュを見かけます。古風かつロマンティックな雰囲気が素敵で、製品のデザインに取り入れたくなるのも頷けます。
チェコ出身のミュシャは、もともとパリで挿絵画家をしていました。契機は1894年12月。クリスマス休暇の間にポスター制作の依頼が舞い込み、たまたま印刷所にいたミュシャが担当することになりました。ほんの数日で制作した劇場ポスター《ジスモンダ》に、舞台の主演女優サラ・ベルナールは涙を流すほど感激。街に貼り出されると大衆からの評価も高く、ミュシャは一躍人気者となりました。
ミュシャの作品の魅力は、物語の表現力にあると思います。ミュシャはお酒や煙草、鉄道、自転車などさまざまなポスターを手がけてきましたが、いずれも商品のイラストを描くのではなく、商品の「世界観」を作るポスターになっています。古風なファッションを纏った女性と花を用い、ミュシャならではの方法で商品の背後にある物語を伝えています。物語を把握して絵で表現する能力は、挿絵の仕事で培ったのかもしれません。
【まとめ】2大ポスター作家を知る絶好のチャンス
ロートレックとミュシャは、同じ時代にパリで活動し、同じ展覧会のポスターを手がけたこともありますが、直接の接点があったかどうかは定かではありません。もし面識が無かったとしても、街中で互いのポスターを目にする機会はあったと思います。水面下では意識し合っていたのでは……などと想像を膨らませると、展覧会で見えた景色がより現実的に感じられます。
本展の最大の特徴は、ロートレックとミュシャの主要なポスターが網羅されているだけでなく、ステート違いや試し刷り段階の作品も展示されていること。ロートレックとミュシャの芸術観に深く浸れる貴重な展覧会となっています。
展覧会情報
ロートレックとミュシャ パリ時代の10年
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
会期:2022年10月15日(土)~2023年1月9日(月・祝)
*月曜日(1/2、1/9を除く)、12/31、1/1 休館
*11月29日(火)より展示作品の一部が変更
開催時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
https://nakka-art.jp/exhibition-post/lautrec-mucha-2022/
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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