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2022.11.24

日本と韓国のフレッシュな絵本が一堂に!『ブラチスラバ世界絵本原画展』で探したい「お気に入りの一冊」

スロバキア共和国の首都ブラチスラバで2年ごとに開催される「ブラチスラバ世界絵本原画展」(略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)。1967年に第1回展が開かれて以来、半世紀以上の歴史を歩んできた展覧会は、世界最大規模の絵本原画コンクールとして知られ、ヨーロッパのみならず世界でも高く評価されてきました。

『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉−日本と韓国のいま』会場入口のバナー

第1回のBIBから参加する日本は、これまでに多くの作品を送り届け、受賞作家を輩出してきましたが、近年活躍が目覚ましいのがアジア、特に韓国です。そして2021年10月から翌年2月にかけて開かれたBIB 2021へのノミネート作品を中心に、日本と韓国の絵本の「いま」を紹介する展覧会が、千葉市美術館にて開かれています。

プロローグ「BIBと近年のアジアの絵本」展示風景

近年発展目覚ましい韓国の絵本。その意外な成り立ちとは?

チョ・ミザ『タイヤワールド』 2020年

まずはじめに見ておきたいのが韓国の絵本です。日本の絵本の歴史は大正時代にまでさかのぼりますが、意外にも韓国での創作絵本の成り立ちは遅く、1980年代の後半にはじめて、イラストレーションを中心とした絵本が誕生します。そして歴史が古くない分、絵本の枠にとらわれることがなく、新しいメディアとして世代を超えて絵本を受容するような文化が作られていきました。

ハン・ビョンホ『母の島』 2019〜2020年

2000年代に入って韓国の絵本が海外から注目されると、BIB 2005にてハン・ビョンホの『鳥になりたい』が金のりんご賞を受賞。さらに約10年前のBIB 2011では、チョ・ウンヨンの『はしれ、トト!』がグランプリを、ユ・ジョユンの『ある日』が金のりんご賞をダブル受賞するなど、大きな業績を残します。

イ・ミョンエ『明日は晴れるでしょう』 2017年  BIB2021金のりんご賞

イ・ミョンエ『明日は晴れるでしょう』 2017年  BIB2021金のりんご賞

展示ではBIB 2021に『明日は晴れるでしょう』で金のりんご賞を受賞したイ・ミョンエを筆頭に、韓国からノミネートされた14名の作家による作品を紹介。そしてデジタルペインティングを中心に、水彩、銅版画といったさまざまな技法による原画と絵本を鑑賞することができます。


過去に多くの受賞作品を輩出した日本。BIB 2021にて金牌に輝いた『たまごのはなし』

ミロコマチコ『ドクルジン』 2019年 亜紀書房、2019年刊

一方で日本の絵本はどうでしょうか? 第1回展以来、1993年を除くすべてのBIBに参加した日本は、これまでに38の受賞作品を輩出。近年も『もみじのてがみ』でBIB 2019の金牌に輝いたきくちちきや、『けもののにおいがしてきたぞ』でBIB2017の同じく金牌を受賞したミロコマチコなど、人気と実力を兼ね備えた作家が名を連ねています。

しおたにまみこ『たまごのはなし』 2020年 ブロンズ新社、2021年刊 BIB2021金牌

そしてBIB 2021では、15作家による17作品が出展され、しおたにまみこが『たまごのはなし』で金牌を受賞しました。展示でも繊細なタッチの原画や、驚くほど精緻なドローイングを絵本とともに見ることができます。また近年は韓国も含めて、世界的にデジタル処理を施す原画が目立つ中、日本では多くの原画がアナログの技法で描かれているのも特徴です。

しおたにまみこ『ドローイング』ほか 展示風景

『たまごのはなし』とは、家で目覚めたたまごが歩き、マシュマロと話し、一緒に台所から居間へと向かって、植木鉢や時計と出会うという3つの物語から展開しています。たまごの言動は時に哲学的でかつシュール。動いて話す、そして伝えるということについて再考を促すような内容です。大人もじっくり向き合いたい作品ではないでしょうか。

4つのキーワードからたどる日韓の絵本文化〜出版社、スクール、書店などの取り組み

第2部「BIBからみる日本の絵本」展示風景

さて今回の展覧会では、絵本や原画とともに、注目したいポイントが存在します。それが作家、編集者、出版社を取材しながら、日韓の絵本文化を「うみだす」、「そだてる」、「とどける」、「ひろがる」の4つのキーワードで紹介しているコーナーです。

バカンスプロジェクト ポスター 展示風景

まず韓国では創作絵本にいち早く取り組んできたボリム出版社の編集者にインタビュー。あわせて同社が絵本作家を育成する「ボリム絵本創作スタジオ」などを紹介しています。また絵本を中心に創作するアーティストが集まり、出版社を介さずに読者に作品を送り届ける「バカンスプロジェクト」や、AIやITを組み合わせたコンテンツの開発や普及活動も、同国ならではの動きと呼べるかもしれません。

左からうえだまこと『草の茂みがほのかに波打った』、『そのとき水面すれすれを風がわたっていった』、『無題』 いずれも2021年

日本では『たまごのはなし』の誕生のきっかけを編集者に聞き取ったり、『りすとかえるとかぜのうた』を出展した画家のうえだまことに、ライブペインティングと絵本づくりの関係についてたずねたりと、絵本の生まれるプロセスなどを丹念にひも解いています。さらに作り手と読み手をつなぐ書店の活動や、赤ちゃんに絵本を届けようと自治体などが行うブックファーストといった取り組みも重要です。

絵本は手にとることも可能!ユニークなデザインの韓国絵本の魅力

ジャン・ヒョンジョン『なんたって、カエル』 2017年

韓国の絵本のデザインは、装丁が凝っていたり、判型が変わっていたりと、かなりユニークです。また文字のないサイレントブックがあったり、函入りや表紙に穴が開いていたりといった、日本にはないスタイルの絵本も目を引きます。またこれらの絵本は実際に手にとって閲覧することも可能です。

『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉−日本と韓国のいま』展示風景

日韓のフレッシュな絵本が展示されているだけでなく、絵本が生み出される背景や、絵本を普及させる取り組みなどなどから、両国の絵本文化を知ることができる『ブラチスラバ世界絵本原画展』。絵本が読者に届くまで、どういった人々が関わっているのかについても明らかになります。子どもも大人も一緒になって楽しめる展覧会です。あなたのお気に入りの1冊を探しにぜひ出かけてみてください。

「ちば子ども審査員賞」パネル。気に入った作品のところにシールを貼ることができます(投票期間:12月11日まで)。

開催概要

『ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉−日本と韓国のいま』 千葉市美術館
開催期間:2022年11月12日(土)~12月25日(日) 
所在地:千葉県千葉市中央区中央3-10-8
アクセス: JR線千葉駅東口から徒歩約15分。京成バス(バスのりば7)から大学病院行または南矢作行にて中央3丁目または大和橋下車徒歩約3分。千葉都市モノレール葭川(よしかわ)公園駅より徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
 ※金・土曜日は20:00まで
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:12月5日(月)
休室日:11月21日(月)
料金:一般1000円、大学生700円、高校生以下無料。市内在住65歳以上800円
 ※ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額
https://www.ccma-net.jp

※千葉市美術館での会期を終えると、東大阪市民美術センター(2023年2月8日〜3月12日)、足利市立美術館(2023年4月15日〜6月4日)、うらわ美術館(2023年7月8日〜8月31日)、新潟市新津美術館(2023年9月9日〜11月5日)へと巡回予定。

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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