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2023.3.7
そのとき日本画の歴史が動いた?福田美術館で『日本画革命 〜魁夷・又造ら近代日本画の旗手』が開催中!
京都・嵐山にある福田美術館で『日本画革命 〜魁夷・又造ら近代日本画の旗手』が開催中。会期は2023年4月9日(日)までです。
約1800点のコレクションを有する同館に、国内有数の美術収集家であった山本憲治氏の所蔵作品約200点が加わりました。本展ではこれらの中から、近代日本画壇に革命を起こした画家たちの名品が紹介されます。
近代の日本美術は、西洋美術との関わりの中で発展し、前進してきました。本展では近代日本画のターニングポイントとして重要な画家の作品が広く紹介されています。
私には、名品の優美さと同時に、筆一本で世界を変えなければならない画家のプレッシャーと緊張が感じられました。そんな本展の見どころを、美術ライターの明菜が紹介していきます。
西洋画に対しての「日本画」
まず、「近代」はカッチリ定義が決まっているわけではないのですが、明治から第二次世界大戦前後あたりを「近代」とすることが多いです。
「日本画」という用語が生まれたのも明治に入ってから。西洋の絵画が日本に流入し、区別のために日本の絵は「日本画」と呼ばれるようになりました。
画題や画風も西洋の影響を受け、花鳥風月を美しく描いた江戸時代までの価値観から変化しました。例えば、横山大観と菱田春草が確立した「朦朧体(もうろうたい)」という技法です。
それまでの日本の絵画では、モチーフの輪郭線を描くのが一般的でした。光や空気感を表現するため、大観や春草らは輪郭線を使わず、ぼかしを用いました。
昔から日本でよく描かれてきたうさぎでも、山口華楊は巣を上から覗くようなユニークな構図を取りました。
また、展覧会のために絵を額装するようになったのも明治以降です。「展覧会」も明治以降の文化。江戸時代までは掛け軸が中心でしたが、明治に入ってからは展覧会に出品するため、日本の絵画も額装されるようになりました。
日本画滅亡論って?
時代が飛んで1940年代後半。戦後になると、伝統的な日本画を否定する「日本画滅亡論」や「日本画第二芸術論」といった主張が広がりました。端的に言うと、「弱いものを描いていたから戦争に負けたのだ」と反省する風潮です。
そこで画家たちは新しい日本画を模索。当時を代表するのが、東山魁夷(かいい)や加山又造らです。
魁夷の作品はうっとりする美しさを称えていますが、絵具が厚く塗り重ねられ、日本画ながら西洋画に近い方法で描かれています。魁夷のみならず戦後の日本画家によく見られる傾向で、旧来の薄塗りの日本画とは異なる重厚感があります。
また、強い色彩で画面を構成するようになったのも、戦後の日本画の特徴です。又造の作品にはコントラストの強いはっきりとした色彩が見られます。静物画は特にそうですね。赤、青、緑と原色がまぶしい画面になっています。
魁夷の馬
ちなみに魁夷の《緑の朝》には、もともと白い馬が描かれており、それが消された跡があるそうです。
白い馬は魁夷が頻繁に描いたモチーフですが、苦悩の中にあって助けを求めるときによく描いたとのこと。馬を描いて消したということは、本作を描いている間は苦しかったけれど、最終的には苦悩から抜け出せた……といった解釈ができそうです。
まとめ
本展では近代日本画に起きた「革命」を学ぶことができました。芸術は自由、というイメージがあるかもしれませんが、開国や戦争など社会情勢の影響を大いに受けてきたのです。
また、多くの作品が額に付随するアクリル板を取り外して展示されています。ガラスケースの向こうには作品本体がある……という贅沢な鑑賞環境です。
さらに、写真撮影も一部を除きOKです。東山魁夷は著作権が有効なため、撮影不可のことが多いのですが、本展は関係者の厚意により、全作品が撮影可となっております。フラッシュ禁止などのルールを守り、覚えておきたい絵画を写真に残してみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
日本画革命 〜魁夷・又造ら近代日本画の旗手
会場:福田美術館
会期:2023年1月28日(土)~ 2023年4月9日(日)※一部展示替えあり
開館時間:10:00〜17:00(最終入館 16:30)
休館日:毎週火曜日、3月21日(火祝)は開館
https://fukuda-art-museum.jp/exhibition/202211102659
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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