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2023.3.8
ローランサン、シャネル、ヴィオネ…女性の美をひたすら追求した女性たち『マリー・ローランサンとモード』展
女性的な美をひたすら追求したマリー・ローランサンと、男性服の素材やスポーツウェアを女性服に取り入れたココ・シャネル。
ふたりの生誕140年を記念する本展覧会では、美術とファッションの境界を交差するように生きた彼女たちの活躍を軸に、時代を彩った人々との関係にも触れながら、2つの世界大戦間にありながらもモダンとクラシックが絶妙に融合するパリの芸術界を俯瞰します。
目次
渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催中の『マリー・ローランサンとモード』展をご紹介したいと思います。
マリー・ローランサンって、どんな人?
マリー・ローランサン(1883年-1956年)は、20世紀前半にフランスで活動した、日本でも人気の高い女性前衛芸術家です。
初期の作風は、特にパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックに大きな影響を受け、キュビストとしてパリ前衛芸術シーンの重要な画家として評価されました。
その後、パステル調の色彩や曲線的な形態の女性的な芸術を追求していくうちに、独特な抽象絵画をともなった女性ポートレイトや女性グループの注文絵画を描くようになり、エコール・ド・パリの画家として活躍していきました。
死ぬまで女性性(フェミニン)をテーマにした作品を探求しました。
2人による創作の真価が明らかに!
ふたつの世界大戦に挟まれた1920年代のパリ。それはともに1883年生まれの画家マリー・ローランサンとデザイナーのココ・シャネルが、美術とファッションの境界を交差するように活躍した時代でした。
そうした2人の活動を軸にして、ポール・ポワレ、ジャン・コクトー、マン・レイ、そして美しいバイアスカットを駆使したマドレーヌ・ヴィオネといった表現者によるパリの芸術界を俯瞰します。
展示は、第1章「狂乱の時代のパリ」、第2章「越境するアート」、第3章「モダンガールの変遷」、エピローグ「ローランサンの色彩」で構成。ローランサンの絵画はもとより、シャネルの軌跡や1910〜1930年代のファッションを、オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館(※)など、国内外のコレクション約90点で紹介しています。
ともに時代を切り開こうとした、ローランサンとシャネルの2人の女性の創作の真価が明らかとなります。
※マリー・ローランサンの世界で唯一の専門美術館。コレクションは現在非公開。
本展覧会を読み解く3つの見どころ
1920年代の空気感を味わえる会場構成から、本展覧会を読み解く3つの見どころをご紹介します。
マリー・ローランサンを再発見する!
1918年の第一次大戦終結の後、1920年から1929年までパリはさまざまな人々が集まり、戦争の混沌と惨禍を忘れるように、芸術と文化が花開いた「狂騒の20年代」を形成しました。
歴史という観点から見れば短い時代でしたが、その影響力と創造力は永遠に色褪せることはありません。
この時代、美術、音楽、文学、そしてファッションなど、別々の発展を遂げてきた表現が、新たな総合芸術を生み出すために、垣根を超えて手を取り合いました。
画家として、女性として、時代に煌めいたカリスマにしてパイオニアでもあり、人気を博したマリー・ローランサンもそのひとりです。
彼女は「女性性」を引き出す独特な色彩の作品を描いただけでなく、室内装飾として調和する作品を生み出すほか、フランスを中心に人気があったバレエの舞台美術や衣装なども手がけています。
会場では装飾性を感じられる《鳩と花》、そしてバレエのパンフレットやポスター、《牝鹿と二人の女》などが鑑賞できます。
シャネルの軌跡と1910-1930年代のファッションを紐解く
会場では、第一次世界大戦を契機とした女性の社会進出、大衆文化・消費文化を背景にして、1920年代に新しい女性たち“モダンガール”が登場します。
そんなモダンガールの象徴とも言える身体の解放や装飾の簡略化は、世紀末やアール・ヌーヴォー期からスタートしていました。
会場では、1910年代ポール・ポワレによるコルセットから解放されたエキゾチックなスタイルから、1920年代ココ・シャネルが生み出したユニフォームのようなニュートラルのドレス「リトル・ブラック・ドレス」、そして1930年代マドレーヌ・ヴィオネのバイアスカットを駆使したドレスなど、その年代を象徴するファッションスタイルが展示されています。
シャネルの軌跡と1910-1930年代のファッションの潮流を紐解くことで、女性服がどんどん変化しつづけていることが理解できることでしょう。
華やかかつシックなローランサンの色彩
マリー・ローランサンのパステル調の淡い色彩は誰しもが虜になってしまうことでしょう。
私たち同様虜になってしまったひとりが、1983年から30年以上にわたりシャネルのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルド(1933年-2019年)です。
彼は、ローランサンからインスピレーションを受け、その巧妙で透明感のある色彩をデザインに取り入れ、2011年春夏オートクチュールコレクションで発表しています。
会場では、カール・ラガーフェルドが手がけたドレスと、ローランサンの作品《ニコル・グルーと二人の娘、ブノマットとマリオン》のコラボレーションがご覧になれます。
最後に…
時代とともにありながら、時代を超えた存在となった、マリー・ローランサンとココ・シャネル。
ふたりの生誕140年を記念するこの展覧会では、新しい時代を象徴する女性の姿を通して、女性が持つ独特なエネルギーに触れられるとともに、女性性(フェミニズム)やその表現、創作の今日的な意味とその真価について、改めて考えさせられることでしょう。
オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館など国内外のコレクションから、約90点の素晴らしいラインナップが見られる本展覧会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文:新麻記子
展覧会情報
『マリー・ローランサンとモード』展
会期:2月14日(火)~4月9日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
休館:3月7日(火)
HP:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_laurencin/
画像ギャラリー
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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