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2023.8.23

【パリ】「モードの帝王」のリアルな息遣いさえも感じられる『イヴ・サンローラン美術館』

言わずと知れたフランスを代表するデザイナーのひとりであり、世界的ファッションブランド「イヴ・サンローラン」の創業者のイヴ・サンローラン。

「モードの帝王」と呼ばれている彼は、クリスチャン・ディオールから手解きを受け、後に自身のメゾンを立ち上げ、数々の伝説を打ち立てていきました。

イヴ・サンローランの素晴らしいアイデアや作品が生まれた場所であり、彼のリアルな息遣いが感じられる『イヴ・サンローラン美術館』を紹介します。

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『イヴ・サンローラン美術館』(撮影:新麻記子)

イヴ・サンローランとは?

出典:Europe Fashion Summary

1936年、アルジェリアの港町オランで生まれ、裕福な家庭で育ったイヴ・サンローラン。

17歳でパリオートクチュール組合経営の学校に入学し、3ヶ月のコースが終了するころにIWS主催のデザインコンクールに応募。ここでカクテルドレスを発表し、ドレス部門最優秀賞を受賞しました。

そのコンクールの審査員だったヴォーグのディレクターがイヴのポートフォリオを見て、友人であるクリスチャン・ディオールの新作と同じAラインの線が描かれていることに驚き、彼に紹介しました。

『イヴ・サンローラン美術館』,左:イヴ・サンローラン,右:ピエール・ベルジェ(撮影:新麻記子)

54年、サンローランはディオールに迎え入れられたものの、57年、亡くなったディオールの遺志により21歳で後継デザイナーに就任。60年、アルジェリア戦争に徴兵されたことでディオールを解雇されます。

61年、PR系で実績のあるピエール・ベルジェとともに、自身のオートクチュールメゾンを設立します。

以後、彼が生み出すエレガントで革新的なデザインは、創業当初から世間の脚光を浴び、ニューモードなスタイルは好評を呼び、20世紀のフランスのファッション業界をリードしました。

2002年の引退まで40年にわたり活躍し、「モードの帝王」と呼ばれました。

イヴ・サンローラン美術館

『イヴ・サンローラン美術館』内観(撮影:新麻記子)

そんなイヴ・サンローランの作品が生まれた場所であり、彼のリアルな息遣いが感じられる『イヴ・サンローラン美術館』。

パリ16区にあるこの建物は、1974年から2002年までの約30年間、メゾンの本社が置かれた場所でもあり、ナポレオン3世様式の素敵な邸宅です。

オートクチュールメゾンの閉鎖から15年後、2017年7月に「ミュゼ・ド・フランス」に指定され、同年10月に開館しました。

館内では、回顧展やテーマ別の企画展を開催し、ピエール・ベルジェ・イヴ・サンローラン財団の豊かでユニークなコレクションを紹介しています。

サンローラン自らが選び抜いた数々の『イヴ・サンローラン美術館』のコレクション

『イヴ・サンローラン美術館』布サンプルやデザイン画などがあるコレクションボード(撮影:新麻記子)

館内では、イヴ・サンローランが生み出したニューモードなスタイルだけでなく、デッサン、ドローイング、写真や映像などの貴重な資料を展示。

こちらに展示しているすべての作品は、サンローラン自身が保存すべきコレクションとして、自ら選んだものだそう。5,000点以上のオートクチュールコレクション、15,000点以上のアクセサリー、3万5,000点のデッサンや布製品など、そのすべてを財団が所有しています。

会場では、アイデアと想像力が詰まったコレクションボード、精緻な技術や美しい生地のオートクチュール、色鮮やかな超絶技巧のアクセサリーなど、間近で鑑賞することができます。

アートからインスピレーションを得た『イヴ・サンローラン美術館』の作品

『イヴ・サンローラン美術館』モンドリアン・ルックのワンピースたち(撮影:新麻記子)

イヴ・サンローランは、1965年にピート・モンドリアンの代表作品《赤、青、黄のコンポジション》から着想を得たミニドレスをデザインしました。

この洋服はモンドリアン・ルックと呼ばれ、現代アートをファッションに取り入れた初の試みとして注目を集め、サンローランの名を世界的に広めました。

会場ではモンドリアンをはじめ、ピカソやマティスなどのアーティスト、宗教画に描かれているマリアやモデルなど、アートへのオマージュを捧げた数々のコレクションをご覧になれます。

サンローランの人生に触れられるコーナーにも注目!

『イヴ・サンローラン美術館』アトリエデスクの展示(撮影:新麻記子)

館内には展示作品以外にも、サンローランのパートナーであるピエール・ベルジェが語るサンローランと、2人が好きだったモロッコ・マラケシュの邸宅の様子がご覧になれる映像上映ルームがあります。

輝かしく煌びやかなファッション界の裏で、サンローランを支え続けたピエール・ベルジェ…この美術館の展示作品はもちろん、そのブランドの業績を保てたのは、彼の存在があったからこそ。

『イヴ・サンローラン美術館』オートクチュールドレスのパーツやデザイン画などが机の上に並ぶ(撮影:新麻記子)

また、サンローランの趣味や思考、息遣いまでもが伝わってくるアトリエデスクがあります。デスクの周りにあるこちらの書籍、写真、雑貨小物、布サンプルなど、サンローランが大切にしていたものだそうです。

デスクの背景にある壁一面の書籍に目を向けていると、浮世絵や日本美術がタイトルになっている書籍を発見しました!「モードの帝王」であるサンローランが、日本に影響を受けていたなんて嬉しいですね。

『イヴ・サンローラン美術館』日本書籍関連(撮影:新麻記子)

最後に…

『イヴ・サンローラン美術館』絵画モチーフのオートクチュールドレスなどが並ぶ展示(撮影:新麻記子)

イヴ・サンローランの素晴らしいアイデアや作品が生まれた場所『イヴ・サンローラン美術館』。

2002年の引退まで40年にわたり活躍し、「モードの帝王」として君臨した、イヴ・サンローランのデザイナーとしての人生とその創造の全貌に迫り、彼のリアルな息遣いさえも感じることができます。

こちらの美術館では、10歳未満の子ども、そしてアートやファッション系の学生は無料で鑑賞できます。

それは、ピエール・ベルジェがイヴ・サンローランを愛を持って導いたように、次世代のアーティストやクリエーターの溢れ出る情熱と才能を支える彼の姿勢を、財団が受け継いでいるように感じられました。

アートやファッションが好きな方はもちろん、機会があったらぜひ足を運んでみてほしい美術館です。
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【施設情報】

Musée Yves Saint Laurent Paris イヴ サンローラン美術館
住所:5 Avenue Marceau, 75116 Paris, フランス
営業時間:火曜日~日曜日 11:00~18:00 土曜日のみ21:00
定休日:月曜日
最寄り駅:Alma-Marceau 9号線
公式サイト: Musée Yves Saint Laurent Paris

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新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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