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2023.12.5
流行り病に悩まされてきた民衆の祈りの姿とは?特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」が市原歴史博物館にて開催中!
2020年1月に国内で発生が確認され、いまだ蔓延が完全に克服されていない新型コロナウィルス感染症。その感染拡大に伴って、多くの人々の命が脅かされただけでなく、ソーシャルディスタンスや日常的なマスクの着用など、生活の様式も変化を余儀なくされました。
目次
特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」展示室風景 写真提供:市原歴史博物館
現在、千葉県の市原歴史博物館では、コロナ禍を踏まえて「流行り病」と「民衆の祈り」をテーマにした特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」が開催中です。古代から現代までの様々な疫病に悩まされてきた民衆の祈りの姿を、同市に残る仏像彫刻や古文書などの歴史資料から読み解いています。
「いちはら流行り病史」で知りたい!いちはら周辺で流行った病の歴史とは?
特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」展示室風景 写真提供:市原歴史博物館
まず振り返っておきたいのが、人々は歴史上、何度も繰り返す流行り病によって、命を脅かされてきたことです。それはいちはらをはじめとする上総国でも同じように、天然痘や麻疹(はしか)、赤痢やコレラ、インフルエンザなどが流行の波に乗って次々と人々を襲いました。
冒頭の「いちはら流行り病史」ではいちはら周辺で流行った病を年表形式にて紹介。古くは
『続日本紀』に記述のある709(和銅2)年の上総・越中にて起こった疫病や、1264(文永元)年に市内加茂地区にて悪疫が流行したことなどが分かります。
また明治以降はジフテリアや腸チフス、スペイン風邪による患者や死者の数も記録され、流行り病が何度も何度も起こってきたことを知ることができます。
人々の信仰は眼病平癒の霊験あらたかな薬師如来へ。「赤物」や絵馬に込められた祈りのかたち。
『鴻巣の赤物』 明治時代 千葉惣次 写真提供:市原歴史博物館
病の原因は悪霊や鬼などがもたらすと考えていた古代の人々は、目に見えないものへの恐れから、神社へ祈願や、呪いにがすがることで難を逃れようとしました。また疱瘡や麻疹などが流行するたびに、寺社仏閣への参詣をはじめ、疱瘡送りや虫送りなどの行事を行いました。
『鴻巣の赤物』とは江戸から明治時代、疱瘡に罹患した際、枕元に赤い色の玩具や赤い絵を置いて疱瘡神の過ぎ去るのを祈る風習を表す置物です。赤い色には病魔退散などの呪術力があると信じられ、埼玉県の鴻巣では赤物と呼ばれる鴻巣人形が作られました。
『源為朝大絵馬』 1807(文化4)年 飯香岡八幡宮 写真提供:市原歴史博物館
万能薬の入る薬壺を持つ薬師如来は、時代とともに眼病平癒の霊験あらたかな仏として信仰を集め、多くの絵馬が奉納されました。そして祈願して成就すると絵馬を奉納し、その霊験を得たいとほかの人も祈願するようになりました。飯香岡八幡宮(市原市八幡)に伝わる絵馬も、疱瘡神を退ける力をもつ源為朝にあやかり奉納されたものと考えられる作品といえるでしょう。
上総国における薬師如来信仰の拠点として機能したいちはら。市内のお寺より42体の仏像が出陳。
特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」展示室風景 写真提供:市原歴史博物館
上総国分寺・国分尼寺を擁するいちはらは、上総国における薬師如来信仰の拠点として機能していたと考えられていて、市内各地には平安時代後期以降の優れた仏像が残されました。
『木造薬師如来坐像及び両脇侍立像』 平安時代後期 金乗院(上高根)稱禮寺管理 写真提供:市原歴史博物館
上高根別所金乗院の本尊で、稱禮寺(市原市上高根)が管理する『木造薬師如来坐像及び両脇侍立像』は、柔らかな肉付けや浅い刻み衣文表現などの特徴が共通する、定朝様を承けた平安時代後期の一具作です。薬師如来や信仰する人々を守護する江戸時代の十二神将像が伝存することから、この頃には遅くとも薬師如来として信仰されていたことが分かります。
会場には市内のお寺より42体の仏像が出陳。いずれも露出にて並んでいて、中には初めて公開される秘仏といった貴重な仏像もあります。
このほかには関東における飛鳥時代の希少な金銅仏作例として知られる龍角寺(印旛郡栄町)の『銅造薬師如来坐像』が公開されているほか、「くすりと予防策」と題し、江戸から昭和時代にかけての薬の生薬や製造方法、医療器具などを紹介し、どのように人々が病を防いだり、治そうとしていたのかについても紐解いています。
「いちはら歴史ミッションラリー」からフォトスポット「なりきり薬師如来」まで。体験型の展示を楽しもう!
最後にご紹介したいのが、親しみやすく鑑賞できるように工夫された、体験型を含めたさまざまな取り組みです。
会場入口では「ペタペタ千社札ウォール」として、千社札を寺社フレームに貼ることのできるコーナーを設置。神社や仏閣に参拝した記念として貼る千社札は、通常は自分の名前を記入するものですが、ここでは願い事を書いている札も目立っていました。
館内を巡って市原市の歴史に関するミッション(クイズ)に挑戦する「いちはら歴史ミッションラリー」の特別展のバージョンも登場しています。上級編・初級編の2種類のコースが用意され、参加者には特別展オリジナルステッカー、上級編・初級編のそれぞれをクリアした場合は、どこか懐かしいお菓子のおまけを彷彿させる限定のご利益ステッカーがプレゼントされます。
会場内の造作にも注目してください。まず仏像を展示する木製の結界と組物はワークショップで作られました。
市内の光善寺にある県内最古の石灯籠を3Dスキャンして、段ボールで再現するワークショップにて作られた「3Dとうろう」も特別展の展示物として公開されています。ダンボール製とは思えないほど大変精巧に作られていて、3Dスキャンは千葉大学と、色塗り・組み立てワークショップは市内の姉崎高校美術部や市民の方々との協働で実施されました。
会期中は7日間限定にて薬師如来像の木版刷り体験も実施され、市内の橘禅寺に伝わる江戸時代の版木を復刻して、お札を刷る体験も楽しめます。※次回は12月16日(土曜日)に開催(最終回)。
フォトスポット「なりきり薬師如来」 写真提供:市原歴史博物館
出口では新感覚のフォトスポット「なりきり薬師如来」も登場し、用意された持物を手にして、薬師如来になりきりながら記念撮影をすることもできます。また同館のSNSではフォトスポットにて投稿された写真も随時公開中です。
開館1周年を迎えた市原歴史博物館。隣接する歴史体験館でチャレンジしたいさまざまな体験プログラム。
2022年11月に開館した市原歴史博物館にはいちはらの至宝が集結。「旧石器・縄文」や「民俗」など6つのテーマに分かれた展示にて、市内にゆかりのある貴重な文化財を間近に見ることができます。
この博物館に隣接する歴史体験館では、古代住居や古墳、発掘現場や納屋風建物が再現され、自分で作った埴輪を古墳に並べて撮影したり、遺跡から出土した土器を使った発掘調査などのさまざまな体験も楽しめます。
ものづくり広場での勾玉づくり、貝輪づくり、また古代衣装試着体験などにチャレンジするのも面白いのではないでしょうか。さらに泥めんこづくりや火おこし体験など盛りだくさん。いずれもこの場所だからこそできる貴重な体験といえます。
特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」は12月24日まで開催中です。ぜひ市原歴史博物館へとお出かけください。
展覧会情報
特別展「いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-」 市原歴史博物館
開催期間:2023年10月1日(日)〜12月24日(日)
所在地:千葉県市原市能満1489番地
アクセス:
【平日】JR内房線五井駅東口より小湊バス「市原歴史博物館・中央武道館」行き乗車約20分。「市原歴史博物館」(終点)下車、徒歩2分。
【土日祝日】五井駅東口と市原歴史博物館の間で無料シャトルバスを運行。(特別展開催中。先着順、9名まで)
開館時間:9:00~17:00
※最終入場は16:30まで
休館日:月曜日。月曜日が祝日の場合、翌平日休館。
観覧料:一般800円、高校生500円、中学生以下無料。
※特別展観覧料には歴史博物館・歴史体験館常設展示観覧料を含みます。
公式サイト:いちはらのお薬師様-流行り病と民衆の祈り-
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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