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2024.2.27
モザイク画で人々を魅了した作家の特別展「昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界」
板谷梅樹(いたや・うめき、1907-1963)はステンドグラスや陶片を用いて、モダーンなモザイク作品で人々を魅了した作家です。この度、泉屋博古館東京にて2024年8月31日(土)から 9月29日(日)の間、梅樹のモザイク作品から彼の人となりに迫る特別展「昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界」が開催されます。
この記事では、モザイク画の解説や本展の見どころをわかりやすくご紹介します!
モザイク画とは?
板谷梅樹《モザイク額「笛を吹く人」》昭和時代・20世紀 個人蔵
陶片などのかけらを寄せあわせ、絵や模様を生み出すモザイク画。古来より世界的に広まった装飾技法で、壁や床の装飾のほか工芸品にも用いられています。かの有名なアントニ・ガウディが手掛けた、スペイン・バルセロナにある「グエル公園」もモザイクで装飾されています。
もともとは白や茶色の小石が用いられていて、古代ギリシャや古代ローマで発展したのち、19世紀末に流行したアール・ヌーヴォーと共に欧米から日本に伝わってきました。
モザイク画の特徴は、なんといってもその耐久性です。装飾箇所を石や陶片、ガラスで埋め尽くすために、とても高価な技法ではありますが、その分耐久性に優れ、退色しにくい点や湿気への強さにより、数千年前の作品でも鮮やかなまま現存しています。
作家・板谷梅樹
板谷梅樹は昭和時代、モダーンなモザイク作品で人々を魅了しました。父は陶芸家の板谷波山(1872-1963)で、文化勲章を受章した初めての陶芸家です。独自の釉薬を用いた葆光彩磁という技法により、淡く微細な表現の作品を生み出しました。
梅樹はステンドグラスと、近代陶芸の巨匠であった父・波山が砕いた陶片の美しさに魅了され、モザイク画を発表します。
代表作となる、旧日本劇場一階玄関ホールの巨大なモザイク壁画は、原画を洋画家・川島理一郎が手掛け、昭和8年(1933)に梅樹がモザイク壁画として完成させました。
旧日本劇場は老朽化のため昭和56年(1981)に閉鎖され解体されてしまいましたが、「平和」「戦争」「舞踊」「音楽」などをテーマとした壮大なモザイク壁画では、陶片の色彩が存分に生かされ、当時の見る人々を感嘆させたことでしょう。
梅樹が魅了されたモザイクの世界
梅樹は帝国美術院展覧会(帝展)をはじめとした公募展にモザイク額などを発表します。第Ⅰ章:「モザイクの世界で」では、モザイク作家として活躍した梅樹が手がけた、エキゾチックなモザイク額の中から、「きりん」(個人蔵)や「花」(個人蔵)など多数の作品をご覧いただけます。
さらに参考資料として、現存していない旧日本劇場一階玄関ホールの巨大なモザイク壁画「平和」がパネル展示されます。当時の人々が見た景色を思い浮かべながらご覧ください。
モザイクが愛らしい装飾品も
梅樹の作品はモザイク額や壁画だけに限りません。第Ⅱ章:「日常にいろどりを」では、モザイクで装飾された美しい飾筥やペンダントヘッドなどの装飾品が展示されます。
なかなか日常生活に取り入れる機会がないモザイクの作品も、愛らしい小品を通せば私たちの生活により近づいてくるような感覚になります。
泉屋博古館東京会場だからこそ見られる父・波山の作品
*泉屋博古館東京のみ出展 板谷波山《彩磁更紗花鳥文花瓶》1919(大正8)年頃 泉屋博古館東京
さらに泉屋博古館東京会場では、第Ⅲ章:「板谷ファミリーと住友コレクション」にて、梅樹がモザイクに魅了されるきっかけとなった、父・波山の陶芸作品もご覧いただけます。工芸品をつくる職人としてではなく、芸術作品をつくりだすアーティストとして、日本の近代陶芸を開拓した波山の作品も、注目したいポイントです。
*泉屋博古館東京のみ出展 《小井戸茶碗 銘 六地蔵》朝鮮時代・16世紀 泉屋博古館東京
そのほか、特別展示:「住友コレクションの茶道具」では、朝鮮時代・16世紀につくられた《小井戸茶碗 銘 六地蔵》などもご覧いただけます。
板谷梅樹《ステンドクラス莨筥》1936(昭和11)年頃 個人蔵
エキゾチックなモザイク額や、人々の日常にいろどりを与えた装飾品などを通して、板谷梅樹の人となりに迫った本展。ぜひご覧ください。
展覧会情報
展覧会名:特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界
会期:2024年8月31日(土)~ 9月29日(日)
(巡回:板谷波山記念館2024年4月20日(土)~6月23日(日))
開館時:11:00~18:00※金曜日は19:00まで開館※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日は開館、翌平日休館)
入館料:一般1,200円(1,000円)、高大生800円(700円)、中学生以下無料
※20名様以上の団体は( )内の割引料金
※障がい者手帳等ご呈示の方はご本人および同伴者1名まで無料
会場:泉屋博古館東京
〒106-0032東京都港区六本木1-5-1
HP:泉屋博古館東京
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
監修:荒川正明(学習院大学教授)
主催:公益財団法人波山先生記念会、公益財団法人泉屋博古館
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ビビ
美術大学彫刻コースを卒業後、アートギャラリーで働いています。粘土を触ったり、ものをつくること、動物や自然が好きです。
美術大学彫刻コースを卒業後、アートギャラリーで働いています。粘土を触ったり、ものをつくること、動物や自然が好きです。
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