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EVENT

2024.3.20

浮世絵師と探検家の異色のコラボとは?!静嘉堂@丸の内の『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』の見どころ。

浮世絵師・河鍋暁斎(1831~89年)と、探検家で好古家、著述家でもあり、北海道の名付け親として知られる松浦武四郎(1818~88年)。幕末から明治時代に活躍したふたりは、武四郎の愛玩品を集めた書物『撥雲余興(はつうんよきょう)』の挿絵を暁斎らに依頼した、明治時代のはじめ頃より親交を深めました。

ポスタービジュアル

その幕末明治の多才なふたりを中心に、彼らと関わりのあった人物との交流をさまざまな作品と資料でたどる『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』が、4月13日より静嘉堂@丸の内にて開催されます。3つの見どころを紹介します。

見どころ①武四郎が暁斎に依頼して描かせた『武四郎涅槃図』。愛玩品を同じ空間で展示。

河鍋暁斎 重要文化財『武四郎涅槃図』  明治19年(1886)  松浦武四郎記念館蔵

まず必見なのが、武四郎を釈迦に見立てた河鍋暁斎の『武四郎涅槃図』(松浦武四郎記念館蔵)と、そこに描かれた武四郎の愛玩品が、生誕の地にある松浦武四郎記念館(三重県松坂市)と静嘉堂の双方から集結することです。晩年の武四郎は骨董品の収集を趣味としていました。

河鍋暁斎(画鬼 暁斎)

武四郎が晩年、釈迦の涅槃図になぞらえて暁斎に制作してもらった『武四郎涅槃図』は、縦約152センチ、横約84センチもの大作。そこには松の下では昼寝をするように眠る武四郎を中心に、泣いて嘆く妻や、自らが集めた愛玩品などが細やかに描かれています。

松浦武四郎(鬼才 武四郎)  明治15年(1882)撮影 松浦武四郎記念館蔵

暁斎が『武四郎涅槃図』の制作に当てた年月は実に約5年。まさにふたりの記念碑的作品と言われています。それを『大首飾り』(静嘉堂蔵)をはじめとした武四郎愛玩の品々と史上初めて同じ空間で展示することで、「武四郎涅槃図」を立体的に体感することができるのです。

見どころ②暁斎の大作『武四郎涅槃図』と『地獄極楽めぐり図』の競演が18年ぶりに実現!

河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』 明治2〜5年(1869〜72)  静嘉堂蔵 ※会期中場面替えあり 

2つ目の見どころは『武四郎涅槃図』とともに、暁斎の代表作のひとつである『地獄極楽めぐり図』(静嘉堂蔵)を全場面展示(会期中場面替えあり)することです。

河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』 明治2〜5年(1869〜72)  静嘉堂蔵 ※会期中場面替えあり

全40図におよぶ画帖『地獄極楽めぐり図』とは、暁斎のパトロンであった小間物問屋・勝田五兵衛の愛娘・田鶴(たつ)の冥福を祈り描かれたもの。田鶴は死後、諸仏に導かれて旅立ち、地獄見物などをしながら、最後は鉄道で極楽往生するというユニークな作品です。開業直前の鉄道が描かれることや、内箱の絵を漆芸家・柴田是真が担当している点でも注目されています。


この『武四郎涅槃図』と『地獄極楽めぐり図』が競演を果たすのは、2008年に京都国立博物館にて開かれた 『絵画の冒険者 暁斎 Kyosai-近代へ架ける橋-」展以来、実に16年ぶりのことです。暁斎畢竟のふたつの大作を見比べながら楽しめる、絶好の機会と言えるのではないでしょうか。

見どころ③暁斎と武四郎、それに彼らを支えた文化人や実業家との関わりをたどる。

河鍋暁斎『野見宿禰』 明治17年(1884)  松浦武四郎記念館蔵

最後に武四郎旧蔵、あるいは静嘉堂所蔵の新発見、初公開品の数々登場するのも見過ごせません。

土佐光重『天満宮神影』 明治19年(1886)  静嘉堂蔵

松浦家伝来の暁斎筆『野見宿禰(のみのすくね)』(松浦武四郎記念館蔵)絵馬額をはじめ、ともに松浦家伝来『蔵書目録』に掲載された土佐光重の『天満宮神影』(静嘉堂蔵)や『渡唐天神像』(静嘉堂蔵)が初めて公開されます。

※野見宿禰は土師臣となり、土師氏の中に菅原姓を名乗るものがでたことから、菅原道真は野見宿禰の末裔とする説があります。

『撥雲余興』より「鬼面鈴」 河鍋暁斎挿絵 明治15年(1882)  静嘉堂蔵

もちろん武四郎と暁斎との当初からの付き合いを示す、武四郎自慢の愛玩品図録『撥雲余興』(静嘉堂蔵)も展示。『撥雲余興』にみる暁斎挿絵の品はかなりユニークです。自ら画鬼と称した暁斎の卓越した画技がいかんなく発揮されています。

『鬼面鈴』 年代不詳 静嘉堂蔵

また武四郎の親友・川喜田石水(1822〜79年/川喜田家第14代)と百五銀行頭取などを務めた実業家であり陶芸にも秀でた川喜田半泥子(1878〜1963年/川喜田家第16代)、三菱第四代社長で静嘉堂初代理事長である岩﨑小彌太(1879〜1945年)との縁を示す品々も紹介されます。

『大首飾り』 縄文時代〜近代 静嘉堂蔵

このほかにも武四郎の65歳の肖像写真や『武四郎涅槃図』で自慢げに身につけている、『大首飾り』(静嘉堂蔵)も見どころとなりそうです。

伝土佐光起『渡唐天神像』 江戸時代 静嘉堂蔵

【展示構成】

第一章:画鬼・河鍋暁斎「地獄極楽めぐり図」の世界―14歳で早世した少女のための奇想天外な鎮魂歌
第二章:鬼才・松浦武四郎―知られざる仏教美術コレクション、天神信仰と古写経を中心に
第三章:暁斎×武四郎―リアル「武四郎涅槃図」の世界
第四章:好古趣味の系譜―静嘉堂文庫(岩﨑彌之助・小彌太創設)と千歳文庫(川喜田半泥子創設)へ

『撥雲余興』より「古銅老猿仮面」 河鍋暁斎挿絵 明治10年(1877)  静嘉堂蔵

住いも近く、ともに天神を信仰し、情にも篤かった暁斎と武四郎との関わりを追いながら、彼らを支えた人々の古物(文化財)への情熱を、特別展『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』にて感じてください。

展覧会情報

静嘉堂文庫竣工100年・特別展『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』 静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)
開催期間:2024年4月13日(土)~6月9日(日)
所在地:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
アクセス:東京メトロ千代田線二重橋前〈丸の内〉駅3番出口直結。JR線東京駅丸の内南口より徒歩5分
開館時間:10:00~17:00
 ※毎週土曜日は18時まで、第4水曜日は20時まで
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、5月7日(火)。※4月29日(月・祝)、4月30日(火・トークフリーデー)、5月6日(月・祝)は開館。
観覧料:一般1500円、大高生1000円、中学生以下無料
公式サイト: 『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』 

【写真13枚】浮世絵師と探検家の異色のコラボとは?!静嘉堂@丸の内の『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎』の見どころ。 を詳しく見る
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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