EVENT
2021.11.3
人生を旅するように生きた画家が行き着く先には?『小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌』展
作品の変遷から人生が浮かび上がる…足跡を辿って行き着く先には…? 初期の歴史画、中期の戦争画、晩年の仏画まで、104点の作品から画業を幅広く展示し、その一つの生き方が見えてくる…!
東京ステーションギャラリーにて開催中の『小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌』展をご紹介します。
小早川秋聲とは?
小早川秋聲(こばやかわしゅうせい)は、大正から昭和にかけて京都を中心に活躍した日本画家。
小早川は鳥取の寺の住職の長男として生まれ、9歳で京都の東本願寺の衆徒として僧籍に入りました。おやつの代わりに毎日半紙を欲しがるほど絵が好きで、12歳からは熱心に博物館に通い模写をするほど美術に夢中な少年時代だったそうです。
その後、画家になることを志し、日本画家の谷口香嶠や山元春挙に師事。文展や帝展を中心に出品と入選を重ねて画技を磨いていきました。
旅を好んだ小早川は、北海道、山陰、紀州など日本各地を絵に描き、国外では複数回の中国渡航に加え、1922年から23年にかけてアジア、インド、エジプトを経て、ヨーロッパ十数ヶ国へ遊学。1926年には北米大陸を横断し、日本美術の紹介にも尽力しました。
やがて戦争が本格化していき、従軍画家として戦地に赴いて、数多くの戦争画を描きました。戦後は、まるで自身の出生に回帰する如く、仏画や仙人などの作品を遺しています。
異国の地を描いた旅好きの小早川
会場では、小早川の足跡を辿るような展示構成となっています。
国内のみならず国外に対して好奇心を強くした小早川は、その時代にはとても珍しく世界各国を飛び回りました。
キャプションには、秘境の地の先住民族と交流したり、武装集団に囚われ勧誘されたり、また冬のアルプス山脈を登山して遭難しかけるなど、画家というよりも冒険家のような面白いエピソードも記載されています!
その旅を通して様々なテーマを得て展開されていった作品は、それぞれの土地特有の香が漂いながらも、味わい深い豊かさが感じられることでしょう。
本展覧会の見どころ作品
その中でも見どころとなるのは、陸軍に受け取りを拒否されたというエピソードがある、小早川の代表作として挙げられる《國之盾》(1994年) 。
当初、兵士の頭の周りには光が描かれ、背後には桜の花びらが描かれていました。しかし、小早川が手を入れて背景の桜の花びらを黒く塗りつぶしています。
そんなエピソードも含めて鑑賞してみると、とても心が揺さぶられてしまいます…小早川はこの作品にどんな思いを込めたのでしょうか? ぜひあなたの目で確かめて想像を膨らませてみてください。
最後に…
従軍画家として戦争を直に見つめ続けた小早川は、兵士たちと同じく満州の極寒に耐えながら、四日四晩一睡もできないような生活のなかで、目の前の光景を描き漏らさないようにペンを走らせたそうです。
激動の時代に多くの人々と時間をすごし、そして多くの人々の死と向き合った小早川。彼の足跡は私たちにいろんなものを感じさせ、様々な気づきを与えてくれることでしょう。
清新で叙情的な小早川の画業を幅広く展示し、そんな行き着く先にある生き方を紹介している、本展覧会に足を運んでみてください。
取材・撮影・文:新麻記子
『小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌』展
会期:2021年10月9日(土)〜2021年11月28日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
時間:10:00〜18:00 (最終入場時間 17:30)
※金曜日は20:00まで(最終入場時間 19:30)
休館:月曜日
※ただし、11月22日(月)は開館
HP:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp
画像ギャラリー
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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