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2021.12.2
タイガー立石から佐藤雅晴、それに「金魚」を描く深堀隆介まで。12月に見たいおすすめ展覧会5選
早いもので残り1ヶ月。イロハニアートにて8月から毎月ご紹介してきた「おすすめ展覧会5選」も今年最後の更新となりました。この一年で皆さんはどのような展覧会が深く印象に残ったでしょうか?
秋に比べると12月にスタートする展覧会は多くありませんが、それでも見ておきたいものは少なくありません。おすすめの展覧会をピックアップします!
目次
『大・タイガー立石展 POP-ARTの魔術師』(千葉市美術館)より『昭和素敵大敵』(1990年)
国内最後の巡回地!マルチ・アーティスト、タイガー立石の回顧展が見逃せない
絵画、陶彫、マンガ、絵本、イラストなど幅広いジャンルで創作活動を行った立石大河亞、またはタイガー立石(1941〜98年)。福岡県で生まれた立石は上京後、前衛美術の「読売アンデパンダン」展でデビューすると、和製ポップ・アートの先駆けとして評価され、のちに漫画の連載も手がけて活躍。さらにイタリアへ渡ってイラストレーションの仕事でも地位を得ると、帰国後も絵画や漫画などでマルチな才能を発揮しました。
そうした立石の業績をたどるのが『大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!』で、埼玉県立近代美術館とうらわ美術館の2つの会場にて約500点を超える作品と資料が公開されます。なお県立近代美術館では画業を全体的に振り返り、うらわ美術館では漫画や絵本に着目した内容となります。
すでに展覧会は昨年の千葉市美術館を皮切りに高松市美術館にて開かれてきましたが、多様なイメージを魔術を繰り出すように展開しつつ熱気を帯びた作品に、美術ファンの間にて大きな注目を集めました。またともにさいたま市内の2館は徒歩20分ほどの距離に位置するため、歩いてはしごすることも可能である上に、「とら割」として2会場目の観覧料が割引になる企画も実施されます。ここ埼玉が最後の巡回地です。「千葉を見逃した!」という方にも見ておきたい展覧会といえそうです。
『大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!』 埼玉県立近代美術館
開催期間:2021年11月16日(火)~2022年1月16日(日)
所在地:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
アクセス:JR線北浦和駅西口より徒歩3分(北浦和公園内)。
開館時間:10:00~17:30 ※入館は17:00まで
休館日:月曜日。ただし1月10日は開館。年末年始(12月27日〜1月6日)。
料金:一般1100(880)円、高大生880(710)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金。
https://pref.spec.ed.jp/momas/
『大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!』 うらわ美術館
開催期間:2021年11月16日(火)~2022年1月16日(日)
所在地:埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ3階
アクセス:JR線浦和駅西口より徒歩7分。
開館時間:10:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
※毎週金・土曜日は20時まで
休館日:月曜日。ただし1月10日は開館。年末年始(12月27日〜1月4日)、1月11日。
料金:一般620(490)円、高大生410(320)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金。
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/
日本における初期のアイヌ研究の成果を学ぶ。國學院大學博物館にて開催中の『アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―』
東京・渋谷にある國學院大學の敷地内に建ち、考古や神道に関する資料を所蔵する國學院大學博物館。常設展示では同大学の学術調査を踏まえながら、土偶や銅鐸、鏡から男神像や女神像などが公開されていて、日本列島史や文化の基盤である神道について深く学ぶことができます。
國學院大學博物館の企画展として開かれているのが、『アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―』です。そもそも國學院大学では言語学者で同大教授でもあった金田一京介がアイヌ民族の言葉や習俗を研究。のちに教え子であった久保寺逸彦がアイヌ口承文芸の採集を進めるなど、日本における初期のアイヌ文化研究について大きな役割を果たしました。
今回は同館の所蔵するアイヌ民族関連資料に加え、金田一記念文庫に収蔵された貴重書などを公開。アイヌの伝統的な風俗や文化とともに、いわゆる和人から見たアイヌ観や江戸や明治のアイヌ語理解、または金田一らのアイヌ研究などが紹介されます。なお同館では新型コロナウイルス感染症対策にともない、水曜〜土曜の正午から17時までの短縮開館を実施中です。開館日時に注意してお出かけください。
『アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―』 國學院大學博物館
開催期間:2021年11月18日(木)~2022年1月22日(土)
所在地:東京都渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス内
アクセス:JR線・地下鉄・京王井の頭線・東急線渋谷駅から徒歩約13分。渋谷駅東口バスターミナル54番のりばから都営バス「学03日赤医療センター前行」に乗り、国学院大学前下車すぐ。
開館時間:12:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:日・月・火、および年末年始(12月26日~1月7日)
料金:無料
http://museum.kokugakuin.ac.jp
パラレルワールドのような日常の風景を描く。若くして亡くなったアーティスト、佐藤雅晴のアニメーション表現とは?
カメラで撮影した日常の風景をパソコンソフトのペンツールを用いてトレースし、アニメーションに表現した作品で知られる現代美術家、佐藤雅晴(1973〜2019年)。東京藝術大学大学院修士課程修了後にドイツを拠点に活動し、2010年には帰国。直後にがんを患って闘病生活を送りながら制作に励みましたが、2019年に惜しまれつつも45歳の若さで亡くなりました。
佐藤が帰国後に居を構えたのは茨城県の取手市でした。いわばゆかりの地での回顧展といえるかもしれません。水戸芸術館にて『佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在』が開催されています。ここでは1999年に渡独して初めて制作した映像作品から、死の直前にまで描き続けた『死神先生』シリーズなど、映像26点と平面38点の計64点が公開されます。佐藤の美術館での展覧会といえば、東京の原美術館にて『ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行』(2016年)が開かれましたが、それ以来の単独の展示となります。
レストランでの食事のシーンやビルの解体現場、またオフィスの光景や伊達巻の製造工程を捉えた作品など、佐藤の映像のモチーフはさまざまですが、どの部分が実写でまたトレースであるのか分からなくなるような面白さがあるのも魅力の1つです。佐藤がパラレルワールドのように描いたアニメーションを水戸芸術館にて体感してください。
『佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在』 水戸芸術館
開催期間:2021年11月13日(土)~2022年1月30日(日)
所在地:茨城県水戸市五軒町1-6-8
アクセス:JR線水戸駅北口バスターミナル4~7番のりばから「泉町1丁目」下車。徒歩2分。
開館時間:10:00~18:00 ※入館は17:30まで
休館日:月曜、年末年始(12月27日~1月3日)。ただし1月10日(月・祝)は開館、1月11日(火)は休館。
料金:一般900円、団体(20名以上)700円、高校生以下無料。
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/
本物と見間違うほどリアルに描かれた金魚たち。金魚の画家、深堀隆介の展覧会が上野の森美術館にて開催
丸い木桶やガラスの鉢の中で気持ちよさそうに泳ぐ金魚たち。知らずとして写真のみを目にすれれば、本物の金魚と見間違ってしまうかもしれませんが、実はすべて絵画だった…金魚のヒレからウロコの質感はおろか、水の流れまでを立体的かつリアルに描き続ける画家がいました。
上野の森美術館にて行われる『深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」』では、金魚をテーマにした作品を手がける深堀隆介(1973年〜)の世界を紹介。器の中に樹脂を流し込み、表面にアクリル絵具で金魚を少しづつ描き、さらに樹脂を重ねて描いた「深堀金魚」が約300点も公開されます。まるで命が吹き込まれたように生き生きとした金魚に囲まれる展覧会となりそうです。
深堀はアーティストとしての活動を悩んでいた時期に、放置していた水槽で生きる金魚の存在に気づき、その美しさに心打たれて金魚をモチーフにした作品を描きはじめたと語っています。過去にも国内外にて作品が人気を集めてきた深堀ですが、東京の美術館では初めての本格的な展覧会としてさらなる注目を浴びるのではないでしょうか。
『深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」』 上野の森美術館
開催期間:2021年12月2日(木)~ 2022年1月31日(月)
所在地:東京都台東区上野公園 1-2
アクセス:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ・京成電鉄上野駅より徒歩5分。
開館時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:12月31日(金)、1月1日(土)
料金:一般1600円、高校・大学生1300円、小・中学生800円。
https://www.kingyobachi-tokyo.jp/
暮らしを彩る魅惑的なデザイン。『ザ・フィンランドデザイン展 自然が宿るライフスタイル』
アルヴァ・アアルトにルート・ブリュック、そしてムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソン。北欧のフィンランドにはいまも広く知られるデザイナーや建築家、アーティストが登場し、その作品は時代を超えて世界で愛され続けてきました。
Bunkamura ザ・ミュージアムで開かれる『ザ・フィンランドデザイン展 自然が宿るライフスタイル』では、ヘルシンキ市立美術館の監修のもと、マリメッコのテキスタイルやカイ・フランクのガラス工芸、また陶磁器や家具といったプロダクトや絵画など約250点の作品と80点の資料を公開し、フィンランドが育んできたデザインの歩みを紹介します。自然とともに生き、暮らしを彩ろうとするフィンランドの人々の豊かな創造性に触れられる機会となりそうです。
日本でも人気の高いフィンランドのデザインですが、今回は50名以上のデザイナーとアーティストが紹介されるため、あまり知られていないアーティストの作品にも新たなお気に入りが見つかるかもしれません。またミナ ペルホネンの皆川明が展覧会ナビゲーターに就任し、フィンランドへの思いを綴ったエッセイをスマホで楽しめるスペシャル音声コンテンツも公開されます。19歳の時に同国を旅し、暮らしの中に根差すデザインに感銘したという皆川ならではのエピソードにも注目が集まるかもしれません。※音声コンテンツの利用にはスマホとイヤホンの持参が必要
『ザ・フィンランドデザイン展 自然が宿るライフスタイル』 Bunkamura ザ・ミュージアム
開催期間:2021年12月7日(火)~ 2022年1月30日(日)
所在地:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
アクセス:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東京メトロ銀座線、京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線渋谷駅A2出口より徒歩5分。
開館時間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日:1月1日(土・祝)
料金:一般1700円、高校・大学生1000円、小・中学生700円。
※会期中の土日祝、および最終週の1月24日(月)~30日(日)はオンラインによる入場日時予約制
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_Finland/
※新型コロナウイルス感染症の状況等により、各展覧会の会期や時間の変更、また事前予約など入場の方法が変わる可能性があります。最新の状況は各館のウェブサイト、公式Twitterアカウントなどでご確認ください。
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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