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2022.1.26

まるで昭和の竜宮城!ホテル雅叙園東京の「百段階段」で楽しむ『ちいさな世界』

90年以上の伝統を誇り、2500点もの日本画や美術品が館内を飾る「ホテル雅叙園東京」。東京でも格式あるホテルとして知られ、宿泊だけでなく、結婚式や宴会などでも多くの人々に親しまれてきました。

その「ホテル雅叙園東京」の名物として人気を集めるのが、1935年に建てられたホテルで唯一の木造建築の「百段階段」です。そして現在、ミニチュアハウスやペーパーアート、お雛さまなどを展示する『時を旅する百段階段 ちいさな世界』が開かれています。見どころをご紹介します。

ホテル雅叙園東京、「百段階段」より『星光の間』

ホテル雅叙園東京の館内風景

「昭和の竜宮城」。東京都指定有形文化財「百段階段」とは?

「百段階段」の階段部分

まず展示の内容に入る前に「百段階段」についてご説明しましょう。「百段階段」とは「ホテル雅叙園東京」の前身である「目黒雅叙園3号館」に当たる建物で、かつて宴会に用いられた7つの部屋を99段の長い階段廊下がつないでいます。そして階段は厚さ5センチのケヤキ板を使用し、各部屋には名だたる芸術家や職人らが手がけた壮麗な装飾が施されています。その文化的価値は高く認められ、2009年には東京都の有形文化財に指定されました。

『漁礁の間』

そのうち『漁礁の間』は「百段階段」一の豪華な部屋として知られ、日本画家の尾竹竹坡(おだけ ちくは)の原画による盛鳳嶺(さかり ほうれい)の極彩色の彫刻が空間全体を彩っています。

『漁礁の間』より天井の立体彫刻

写真では天井が絵に見えるかも知れませんが、これも立体彫刻なのです。国会議事堂の議長席なども手がけたという盛鳳嶺は、雅叙園の彫刻のほとんどを制作した彫刻家として活躍しました。

現代では再現不能?「百段階段」の各部屋の華麗な装飾の魅力

『草丘の間』

40畳敷きの大広間である『草丘の間』は、磯部草丘(いそべ そうきゅう)が描いた四季山水図が見どころの部屋です。風景画を得意とした草丘は、奥の間の欄間に四季草花絵、控えの前には松原の風景を描き、さらには15面の天井にも花鳥画をダイナミックに表しました。なおほかの部屋に比べて格天井の一つ一つの格が大きくとられていて、格縁もシンプルな造りになっていますが、これは絵を活かすことを優先したためではないかと推測されています。

『十畝の間』

荒木十畝(あらき じっぽ)の花鳥画や黒漆の螺鈿細工が見どころの『十畝の間』や、美人画の大家である鏑木清方が愛したと伝わる『清方の間』、また北山杉天然絞り丸太を随所に使用した『星光の間』など、各部屋そのものが1つの美術品のようなきらめきを放っています。まさに異空間、「もはや現代では再現できないのでは?」と思うほどにゴージャスでした。

かわいらしく愛おしいミニチュアの世界

入江千春の『あかり絵』

それでは『時を旅する百段階段 ちいさな世界』の展示作品をいくつかご紹介します。福岡在住の入江千春が手がけているのは、素焼きの人形と博多弁を合わせた灯りのオブジェ『あかり絵』。昭和の時代を連想させるような懐かしい風景の中に、子どもたちが遊ぶすがたなどを生き生きと表現しています。

イホシロ窯による『美味しそうな箸置』

目玉焼きやお好み焼きに団子…どれも美味しそうなものばかりですが、これは岐阜県瑞浪市の陶磁器工房「イホシロ窯」の職人たちが制作した箸置きです。わずか数センチほどの大きさながらも大変に細かく作られています。小さなお皿と組み合わせているのも面白いのではないでしょうか。

小出信久『木のぼりネコとテントウムシ』

千葉県生まれの木彫作家、小出信久による動物や乗り物のミニチュアも見逃せません。『木のぼりネコとテントウムシ』はツツジやツゲの木から作られた極小の木彫。この他にもコクタンなどで象られた豆粒サイズのテディベアにも目を奪われましたが、あまりにも小さいためにルーペを通さないとどのように作られているのか分かりません。写真ではなかなか伝わりにくいのがもどかしいですが、その高い技巧に驚かされました。

映画の舞台も登場!2人のアーティストのジオラマが見逃せない

太田隆司の展示作品

ペーパークラフトでジオラマをつくる2人のアーティストにも要注目です。まずテレビ東京の「TVチャンピオン」ペーパークラフト王選手権にて優勝した経歴を持つ太田隆司は、かつての都電が走る東京の街をモチーフにしたジオラマを制作。建物や車だけでなく、行き交う人々のリアルな表情までも紙で再現しています。

タカマノブオ『鉄道員ぽっぽや「幌舞駅」(JR幾寅駅)』

一方、身の回りの素材でペーパークラフトハウスを作り、独自の技法にて屋根が取り外せる住宅模型を製作するタカマノブオは、「ALWAYS 三丁目の夕日」や「男はつらいよ」のくるま菓子舗、それに「鉄道員ぽっぽや」の「幌舞駅」といった映画などに登場する住まいを展示。どれも大変に精巧ですが、図面等は本来存在しません。

タカマノブオ『男はつらいよ「くるま菓子舗」』

よって作者自身が書籍や映像を元に推理して作ったというから、どれほどの労力が込められているのかが分かることでしょう。

お雛さまとつるし飾りによる早春の華やかな彩り

江戸崎のつるしびな会による『つるし飾り&創作人形』

こうしたミニチュアと並んで「百段階段」を華やかに彩るのが、お雛さまとつるし飾りです。そもそも雛あそびとはちいさなものを愛でる「ひゐな遊び」を語源としたもの。さいたま市の北浦和にあり、国の登録有形文化財である懐石料亭の二木屋のちいさなお雛さまや、茨城県稲敷市の江戸崎のつるしびな会によって作られたつるし飾りが展示されています。ひな祭りを先取りするように楽しむのも良いかもしません。

ホテル雅叙園東京。左手の屋根が連なるのが「百段階段」の建築部分。

最後に「百段階段」の見学についての情報です。入口は正面玄関のすぐ左手。カウンターにて当日チケットも購入することもできますが、オンラインでは割引となるペアチケットも販売されています。

螺鈿で細工された「百段階段」へのエレベーター

受付を済ませたら、唐獅子や牡丹の螺鈿にて細工されたエレベーターで3階まで上がりましょう。するとミュージアムショップとともに、右手に「百段階段」がすがたを現します。順路は特にありませんが、下から見学していくのが一般的かもしれません。

「百段階段」のてっぺんに広がる『頂上の間』

なお「百段階段」は土足禁止ですが、新型コロナウイルス感染症対策の観点より、当面の間、スリッパの共用を中止しています。古い木造建築のために足元が冷える場合があるので、厚手の靴下でのお出かけをおすすめします。

『漁礁の間』の彫刻作品

戦前へとタイムスリップしたかのような雰囲気をたたえる『百段階段』。かつて「大衆に開かれた料亭」として運営された雅叙園では、高い知識がなくとも誰もが「すごい」と思えるような場所を提供するため、こうした豪華絢爛な部屋を建てたそうです。「お大尽気分」が味わえるような異空間を、ミニチュアやひな飾りとともに楽しんでみてください。

『時を旅する百段階段 ちいさな世界』 ホテル雅叙園東京・百段階段
開催期間:2022年1月15日(土) 〜3月27日(日)
所在地:東京都目黒区下目黒1-8-1
アクセス:JR線、東急目黒線、東京メトロ南北線、都営三田線目黒駅より徒歩3分。
開館時間:12:30〜18:00
 ※3月27日は17時閉館
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般1000円、学生500円。
https://www.hotelgajoen-tokyo.com

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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