EVENT
2022.2.7
27年ぶりの新作初公開!楳図かずおの芸術性にフォーカスした『楳図かずお大美術展』
ホラー漫画の神様と呼ばれ、数々のヒット作をうみだしてきた楳図かずおさん。その作品には漫画という分野だけでは語りきれない先見的な世界観、幻視的ビジョンがいたるところに発揮されています。そんな楳図さんの「比類なき芸術性」に焦点を当てた展覧会『楳図かずお大美術展』が六本木ヒルズ森タワー52階東京シティビューにて、2022年1月28日(金)からスタートしました。
目次
27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO小さなロボット シンゴ美術館』が初公開
本展の最大の目玉は、楳図さんにとって27年ぶりとなる新作『ZOKU-SHINGO小さなロボット シンゴ美術館』。4年の期間を費やし完成した本作は101点のアクリル絵画の連作形式をとっており、1980年代に描かれた『わたしは真悟』の続編であり、同時に時空を超えたそのパラレル・ビジョン(平行世界)でもあります。
28日に開催されたオープニングセレモニーでは楳図さんと楳図ファンを公言する中川翔子さんが登壇、8年ぶりの再会に笑顔のお二人。
芸術家として開催するはじめての展覧会についてどう思うかという質問に、楳図さんは「もともとぼくは芸術家なんです! …と言いたいところなんですが、やっぱり皆さんの認識は漫画ですよね。だけど漫画もそろそろ一歩上に登って、さらに高いところを目指さなければいけないなと思ったわけです。そう考えたとき、そこにあったのが絵画。これは芸術ですよね」とコメント。
絵画が連作形式であることについては「創作は新しくないと意味がないと思う。見ていただくとわかると思いますが、漫画と絵画の両方の要素がしっかりある」と語り、「漫画は連続体、つなぎの芸術だけど、絵画はクライマックスしかないんです。その違いって大きいじゃないですか。だからつながってはいるけれど、ひとつ取り出してみればいろんな要素があって、これがお話のクライマックスなんだなと、わかるように描きました」と解説しました。
また、額縁についても「“赤”と“緑”の額縁。これはかなり大胆と思っていて、ぼくの作品でないとありえないと思う。額縁も芸術の一部です。額縁と絵画が一体となってドラマ性を感じとってもらえると思います」とこだわりを語った楳図さん。
絵画ならではの“色”についても触れ、「コピーや印刷物では出てこない金や銀、特に金色を使いたかったんです。普段はなかなか使わない色なので。ああ! ここだ! というところに塗りました。今回、絵の具の色の楽しさをすごく感じて、描いているときは心が落ち着いて、絵を描くということは精神的に素晴らしいものがあるな、と思いました」と楽しそうに語っていました。
「“オペラ”というピンク色がきれいですごく気に入った」とも語っており、作品の女の子のワンピースの蛍光のピンク色にぜひ注目して観てみてください。
中川さんは「なにより楳図先生がお元気に新たな作品を生み出し続けてくださることに感謝です!」と語り、今回の新作について「角度によって金色がキラキラ光ったり、先生といえば赤と緑のイメージがありますが今回はパステルカラーや蛍光色が多用されていたり、一枚だけでみても芸術として未来永劫地球に残る作品でありながら、連作でみると漫画のようにも読み解いていくことができる」と熱弁。「みなさんにも印刷とは違う生の迫力を絶対に見てほしいです! 世界中の全人類早く見て! という思いです」とコメント。
最後に楳図さんは「今回自信満々なので! 間違いなくがっかりさせることはないと思うので、ゆっくり見ていただいて理解していただいて、お家に帰ってその結果を皆さんにお知らせしていただいて、口コミという形でお友達も呼んでまた来てくださればうれしいです」とファンにメッセージを送りました。
3組の現代アーティストによるインスタレーション
本展では3組の気鋭の現代アーティストによる楳図作品をテーマとしたインスタレーションも見どころのひとつです。
エキソニモ×『わたしは真悟』
©楳図かずお ©エキソニモ ©冨安由真 ©鴻池朋子 ©楳図かずお/小学館
千房けん輔さんと赤岩やえさんによるアートユニット「エキソニモ」は『わたしは真悟』をテーマに制作。山積みのケーブルの上に、漫画のコマ割りのように配置されたモニターには『わたしは真悟』の作中場面が映し出されます。背後の窓ガラスの外には、作中でサトルとマリンが頂上から救助ヘリに飛び移った東京タワーが見えるところにも注目です。
冨安由真×『ZOKU-SHINGO(素描)』
冨安由真さんは『ZOKU-SHINGO(素描)』の素描101点が展示される部屋全体を演出。部屋の真ん中につくられた建造物には、楳図さんの素描からインスピレーションを受けた家具やオブジェが置かれ、5分ごとに光と影の空間演出が浮かび上がります。
鴻池朋子×『14歳』
©楳図かずお ©エキソニモ ©冨安由真 ©鴻池朋子 ©楳図かずお/小学館
鴻池朋子さんは楳図さんと対談し、楳図さんの根底にあるものを探りながら『14歳』をテーマに制作。14歳の楳図さんのドローイング、『14歳』に登場する「ゴキンチの先生」の顔の振り子のオブジェ、『14歳』のセリフを左手で書き出した原稿用紙など、トータルインスタレーションを展示しています。
目移り必須のグッズの数々
展覧会会場では、新作『ZOKU-SHINGO小さなロボット シンゴ美術館』や過去の楳図作品のビジュアルを使ったアイテムなど、展覧会会場だけのオリジナルグッズを含む約190種類を販売。
アートディレクターの吉田ユニさんとのコラボグッズも登場。
楳図先生ファンでもある吉田ユニさんの楳図愛を感じるデザインにも注目です。
会場オリジナルのガチャガチャもお見逃しなく。
楳図ワールドを楽しめるコラボメニュー
展覧会会場と同フロアにあるカフェTHE SUN & THE MOONは、本展会期中はコラボレーションカフェ『UMEZZ CAFE』としてオープン。
楳図かずお作品や楳図ハウスをイメージしたコラボメニューを提供。目でも舌でも楳図ワールドを堪能できます。
楳図さんの「自信あり!」の言葉どおり、新作の連作絵画は圧巻の出来。美しくこわく不思議がつまった世界観にひきこまれ、一枚一枚のエネルギーに圧倒されました。芸術家としての楳図かずおの世界を体感できる本展、ぜひ足を運んで自分の目で確かめてみてください。
『楳図かずお大美術展』
開催期間:2022年1月28日(金)~3月25日(金)※57日間/会期中無休
会場: 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
東京シティビュー
アクセス:
開館時間:10:00~22:00 (最終入館21:30)
※情勢によりやむを得ず、営業時間に変更が生じる場合や、休業となる可能性もございます。
料金:一般2,200円/高校生・大学生1,500円/子ども4歳~中学生900円/シニア(65歳以上)1,800円
※屋内展望台入館料含む
※4歳未満無料
※料金はすべて税込です。
※障がい者手帳をお持ちの方(介助者1名まで)は無料です。
※本展は事前予約制(日時指定券)を導入しております。
主催:東京シティビュー、楳図かずお大美術展製作委員会
後援:六本木商店街振興組合、J-WAVE
問い合わせ:03-6406-6652(東京シティビュー)
公式サイト:【展覧会公式ポータルサイト】https://umezz-art.jp
※本展覧会に関する情報は予告なく変更になる場合があります。
最新情報、詳細、注意事項を公式サイトおよび公式SNSにて必ずご確認ください。
◆巡回情報:大阪会場(あべのハルカス美術館)2022年9月17日(金)~11月20日(日)
画像ギャラリー
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絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。
絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。