EVENT
2022.5.18
四季の湿度まで絵に描く。『花ごよみ ー横山大観・菱田春草らが咲きほこるー』
嵯峨嵐山文華館で『花ごよみ ー横山大観・菱田春草らが咲きほこるー』が開幕しました。季節の花々をはじめ、日本の四季を題材にした近代日本画の名品がずらりと展示されています。
本展では、幻想的な夜桜を描いた加山又造の「おぼろ」や、竹内栖鳳・横山大観・川合玉堂の合作「雪月花」など、画家が表現した美しい四季を堪能できます。癒しを得るとともに、画家の巧みなテクニックも読み取れる展覧会でした。本展の見どころを、美術ライターの明菜が紹介していきます。
花と果実でたどる四季
2章構成の本展の第1章は「季節を彩る花と果実」と題され、速水御舟「残雪図」や横山大観「桃」など、花や果実を題材にした作品が展示されています。
加山又造の大作「おぼろ」は特に必見! 桜の名所である青森県の弘前公園の桜をモチーフに描いたそうです。満月がこれほど大きく見えることは実際にはありませんが、絵画の構成としてとても素晴らしいです。屏風の大きな画面に桜と月がつり合い、心地よいバランスで成立しています。
近づいて見ると、桜の花びらがすべて正面を向いており、実物の桜をそのまま描写したのではないことがわかります。琳派をはじめとする日本の絵画では、記号化した花を繰り返し描く手法がしばしば用いられてきました。
満開に咲き誇る桜なのに、どこか夜に溶けていきそうな表現も見どころです。黒を用いて明るさと鮮やかさを抑え、しっとりした夜の香りが濃厚な画面に仕上がっています。
光と湿度が映す四季
「日本の四季を描く」と題された第2章では、横山大観「春夏秋冬」をはじめ、四季を描いた作品が展示されています。季節や時間帯によって異なる光や、靄のかかったような濃密な湿度が伝わってきて、光や湿度でも四季を表現できることに気づかされました。
たとえば菱田春草「夏の朝・冬の夕」は、色数は少ないにも関わらず、光と湿度が雄弁に表現されています。右の「夏の朝」では、雨が上がったばかりでしっとりした空気の中を、優美な白鷺が飛び去っていきます。左の「冬の夕」では、木々の枝まではっきりと見渡せる乾燥して澄み切った空気を描いています。
日本の四季といえば、春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪……と目に見える色彩を最初に思い浮かべます。しかし、気温や湿度、日照時間など、肌で感じる四季もありますよね。画家たちは目だけでなく、肌で感じた四季をも画面に描こうとしたのです。
【まとめ】癒しを得られる名品を見に行こう
本展では、画家が描いた花や果実、光や湿度を通して日本の四季を堪能することができました。繊細な美を表現した絵画に癒しを得られると同時に、画家の感性の鋭さにも驚かされます。
実は、本展は2021年4月末から始まったものの、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言の発令を受け、わずか2日で閉幕したという経緯があります。展示を再編成し、近代日本画を中心にさらに充実した内容で、あらためての開催となりました。前期・後期をあわせて49点が初公開作品と、見応えのある展覧会になっています。
※画像写真の無断転載を禁じます
展覧会情報
花ごよみ ー横山大観・菱田春草らが咲きほこるー
会場:嵯峨嵐山文華館
会期:2022年04月23日(土) - 2022年07月03日(日)
●前期:4月23日(土)〜5月30日(月)
●後期:6月1日(水)〜7月3日(日)
休館日:火曜日
公式ウェブサイト:https://www.samac.jp/exhibition/detail.php?id=15
会場から徒歩3分ほどの距離にある福田美術館では、京都ゆかりの作品を集めた展覧会『やっぱり、京都が好き ~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち』が開催中(2022年7月3日まで)。あわせて鑑賞してみてはいかがでしょうか。レポートは以下のURLからご覧ください。
関連記事:京都は画家に筆を取らせる。『やっぱり、京都が好き ~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち』
https://irohani.art/event/7494/
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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