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EVENT

2022.7.18

「よく生きること」とは?森美術館で開催中!『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』

2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響から、目に見えないウイルスにより日常が奪われ、私たちの生活や心境は大きく変化しました。

地球がまわる音を聴く_堀尾貞治_展示風景

パンデミック以降の新しい時代をいかに生きるか、現代美術に込められた多様な視点を通して、心身ともに健康である「ウェルビーイング」とは何かを考える美術展が開催中!

森美術館の『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』をご紹介します。

本展覧会タイトル “地球がまわる音” とは?

地球がまわる音を聴く_風景

本展のタイトルである「地球がまわる音を聴く」は、「想像しなさい」「聴きなさい」といった詩的に綴られた言葉による、オノ・ヨーコのインストラクション・アート(※)の著書作品『グレープフルーツ』から引用しています。

世界に影響を与えてきた数々の言葉の力は、きっとあなたの心にも深く響きわたり、私たちが壮大な宇宙の営みの一部に過ぎないことを想像させ、別の世界への新たな思索へと導いてくれます。

パンデミック以降の世界で人間の生を問い直そうとする時、想像力こそが未来の可能性を示してくれる手助けになるのではないか、そのような意図を込めて世界が広がる言葉が展示されています。

※インストラクション・アート…コンセプチュアル・アートの形式のひとつで、作家からのインストラクション(指示)そのもの、あるいはその記述自体を作品としたもの。

“よく生きること”を問われる美術展

モンティエン・ブンマー《自然の呼吸:アロカヤサヤ》_展示風景

本展では、パンデミック以降の新しい時代をいかに生きるか、現代アートに込められた多様な視点を通して、心身ともに健康である「ウェルビーイング」とは何かを考えます。

自然と人間、個人と社会、家族、繰り返される日常、精神世界、生と死など、生や実存に結びつく主題の作品が「よく生きること」への考察を促します。

小泉明郎《グッド・マシーンバッド・マシーン》_展示風景

会場では、美術館ならではのリアルな空間での体験を重視し、インスタレーション、彫刻、映像、写真、絵画などの多様な表現を展開する国内外のアーティスト16名による約140点の作品がご覧になれます。

ご自身の五感を研ぎ澄ませて、作品の素材やスケールを体感し、アートと向き合うことは、他者や社会から与えられるのではない、自分自身にとっての「ウェルビーイング(よく生きること)」について問い、考えるきっかけになることでしょう。

美術館のチャレンジ精神!社会を切り取った作品に注目!

提供写真(公式サイトより)「飯山由貴《家父長制を食べる》2022年 4Kビデオ、サウンド Courtesy: ウエルカム財団(ロンドン)、WAITINGROOM(東京)撮影:金川晋吾」

パンデミックは、世界中に健康危機をもたらしただけでなく、私たちの生きる社会に横たわるさまざまな問題や分断、 衝突を可視化し、国や人種、宗教といった大きな枠組みから、地域や家庭といったより身近な環境、生き方をも直視させました。

本展覧会ではさまざまな作品が展示されていますが、その中でも特に筆者が推したい作品は、過去の記録物や人への取材を手がかりに、社会と個人の関係に関心を持ちながら、映像やインスタレーションを制作している、飯山由貴さんのドメスティック・バイオレンス(DV)をテーマにした新作です。

新型コロナウイルス感染症により、新しい生活様式からおうち時間が増えたことから、ドメスティック・バイオレンス(DV)に悩む弱者が急増しました。被害者と加害者の双方からのインタビューを中心としたインスタレーション作品では、鑑賞する私たちひとりひとりに、自分自身の日常を異なる視点から見つめることを促します。

ゾーイ・レナード《アイ・ウォント・ア・プレジデント》_展示風景

また、近くに展示されていた、フェミニストとしてジェンダーとセクシュアリティ、喪失と喪、移住、避難、都市景観など多くのテーマを探求しているゾーイ・レナードの作品《アイ・ウォント・ア・プレジデント(大統領が欲しい)》も胸を打ちます。

展示予定だった《無題》とは一見、お互いに関係のないもののように見えますが、ふたつの作品に共通する、社会的な問題への私的で親密な応答の在り方は、ゾーイ・レナードの創作活動における重要な要素を示しています。

しかし、公共の場である美術館が、暴力的で政治批判的とも取れる作品を取り扱うことは難しく、きっとその裏では葛藤や努力があったことでしょう…… そんな森美術館の想いにも寄り添ってご覧になってみてください。

最後に…

手前:ツァイ・チャウエイ《子宮とダイヤモンド》、奥壁面:ツァイ・チャウエイ《 5人の空のダンサー》_展示風景

さまざまな状況下で社会や自分自身と向き合うアーティストたちの作品は、私たちの生活や身の回りの環境を異なる視点から観察し、再考することの重要性を示しています。

あらゆるものの定義や前提が揺るがされている昨今、「生きることとはなにか」という問いに、あらためて向き合う必要があるのではないでしょうか。

また2022年7月31日(日)までは、18:00以降2名でお得に入館できる「ウェブ限定!ナイトペアパス」や、学生・子供料金が500円引きになるお得な「学生応援サマーパス」などのキャンペーンが展開されています。

夏の美術館をお得に楽しみながら、パンデミック以降の生活の“ウェルビーイング”について考えてみてはいかがでしょうか?

取材・撮影・文:新麻記子

『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』

会期:2022.6.29(水)~ 11.6(日)会期中無休
会場:森美術館
時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
   ※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
ホームページ:https://www.mori.art.museum

【写真7枚】「よく生きること」とは?森美術館で開催中!『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』 を詳しく見る
新 麻記子

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

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