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2022.8.1

【8月のおすすめ展覧会5選】李禹煥や皇室ゆかりの名品、それに江戸絵画まで。

暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか? 夏のシーズンの展覧会は7月に開幕する傾向があり、今月から新たにはじまる展覧会は必ずしも多くありません。

『開館15周年記念 李禹煥』の会場となる国立新美術館

そうした中でも皇室ゆかりの名品を展示する『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』や、現代美術家である李禹煥の大規模個展などは要注目です。おすすめの展覧会をご紹介します。

同い年の2人の画家がたどった人生とは?『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎』展

1882年に現在の福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を目指した青木繁と坂本繁二郎。大学在学中にデビューした青木は、『海の幸』といった作品で若くして評価されるも、肺結核を患って28歳にて亡くなります。一方の坂本は青木が没した後、遺作展の開催などで顕彰を尽くすと、自らも二科展の結成に加わるなどして活動を続け、87歳の長寿をまっとうしました。

この青木と坂本の友情関係とは? アーティゾン美術館にて開かれている『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎』では、2人の画家の生涯をたどりながら作品を紹介。代表作はもちろん、長らく非公開だった青木の「仮面スケッチ」や、40年ぶりの公開となる坂本の『眠れる少女』といった貴重な作品が公開されます。そもそもアーティゾン美術館を運営する石橋財団には、創設者の石橋正二郎と坂本に深い親交があったこともあり、多くの青木と坂本の作品が所蔵されています。まさにアーティゾン美術館だからこそ実現し得た2人展と言えそうです。

『生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎』 アーティゾン美術館
開催期間:2022年7月30日(土)~10月16日(日)
所在地:東京都中央区京橋1-7-2
アクセス:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線・京橋駅6番、7番出口より徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
 ※9月23日を除く毎週金曜日は20時まで
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
観覧料:一般1600円、大学生以下無料
 ※ウェブ予約チケット。当日チケットは1800円
https://www.artizon.museum

『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』にて愛でる皇室ゆかりの名品たち

皇室に代々受け継がれた絵画、書、工芸品など、約9800点もの貴重な美術品を所蔵する宮内庁三の丸尚蔵館。皇居・東御苑に位置する旧江戸城の三の丸に開設され、長く所蔵品を展示してきましたが、来館者が増えて手狭になったことや、収蔵、展示スペースの不足などから建て替えが決まり、現在、4年後の全面開館を目指し工事が行われています。

そうした三の丸尚蔵館と東京藝術大学のコレクションにて構成されるのが、『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』です。ここでは「文字からはじまる日本の美」や「生き物わくわく」といった分かりやすいテーマから82件の作品を紹介していて、元寇の様子を描いた『蒙古襲来絵詞』や狩野永徳の傑作『唐獅子図屏風』など、昨年に三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された5点の作品も公開されます。とりわけ大人気の伊藤若冲の代表作『動植綵絵』の10幅の展示に注目が集まりそうです。

『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』 東京藝術大学大学美術館
開催期間:2022年8月6日(土)~9月25日(日)
 ※会期中、作品の展示替えおよび巻替えあり
所在地:東京都台東区上野公園12-8
アクセス:JR線上野駅公園口、東京メトロ千代田線根津駅1番出口より徒歩10分
開館時間:10:00~17:00
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし9月19日は開館)
観覧料:一般2000円、高校・大学生1200円、中学生以下無料
https://museum.geidai.ac.jp

国内では17年ぶりの大規模個展!もの派の重鎮、李禹煥の創作のすべて

1936年に生まれ、戦後日本の美術における重要な動向の1つである「もの派」を牽引した作家の李禹煥(リ・ウファン)は、60年代後半に入って本格的に創作をはじめると、グッゲンハイム美術館(アメリカ)やヴェルサイユ宮殿(フランス)にて展示を開いて活動してきました。また国内でも横浜美術館にて大規模な個展を行ったほか、2010年には香川県直島町に安藤忠雄設計の「李禹煥美術館」を開設し、多くの人々の注目を集めてきました。

国立新美術館で開催される『開館15周年記念 李禹煥』では、最初期の作品から石や鉄、ガラスなどを組み合わせた彫刻の「関係項」シリーズ、さらには「線より」や「照応」といった絵画のシリーズなどが公開され、李の長きにわたる仕事の経緯がひもとかれます。李の静謐(せいひつ)な作品世界はもとより、自ら考案したという展示プランと美術館の空間との響き合いにも着目したいところです。

『開館15周年記念 李禹煥』 国立新美術館
開催期間:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
所在地:東京都港区六本木7-22-2
アクセス:東京メトロ千代田線乃木坂駅青山霊園方面改札6出口より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
開館時間:10:00~18:00
 ※毎週金・土曜日は20時まで
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日
観覧料:一般1700円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料
https://www.nact.jp/

知られざる工芸の優品が一堂に。大倉集古館の『合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~』展

実業家、大倉喜八郎が蒐集(しゅうしゅう)した日本・東洋の古美術などを公開する大倉集古館。日本最古の私立美術館として長く活動を続け、国宝3件、重要文化財13件を含む美術品約2500件を収蔵するともに、一般へ広く公開してきました。また建築家、伊東忠太設計による中国風のユニークな建物でも親しまれていて、2019年には地下の増築を含む5年半の改修工事を終え、リニューアルオープンを果たしました。

企画展『合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~』では、大倉財閥ゆかりの刀剣と中国の陶俑を中心に、中国の染織品やタイの美術品などの長く公開されなかった工芸品を、東京国立博物館の優品とともに展示します。実は大倉喜八郎の集めた美術品の多くは、関東大震災によって被災しましたが、その爪痕を残す作品もあわせて紹介されます。明治から昭和にかけての美術品の収集の軌跡を追体験するような展覧会になるかもしれません。

『合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~』 大倉集古館
開催期間:2022年8月16日(火)~10月23日(日)
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-3
アクセス:東京メトロ南北線六本木一丁目駅中央改札(泉ガーデン方面)より徒歩5分。東京メトロ日比谷線神谷町駅4b出口より徒歩7分
開館時間:10:00~17:00
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
観覧料:一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下無料
https://www.shukokan.org

入場無料!定評のある板橋の江戸絵画コレクションでたどる人々のすがた

1979年、東京23区初の区立美術館として開館した板橋区立美術館。狩野派をはじめとする江戸絵画や大正から昭和の前衛美術、それに板橋区ゆかりの作家の作品のコレクションで知られ、イラストやデザインに関する展覧会も行うなど、幅広く活動してきました。また2019年には建物の大規模改修を伴うリニューアルオープン。スタイリッシュかつ機能的な展示空間へと生まれ変わりました。

その板橋区立美術館が所蔵する江戸絵画から、「人びとの姿かたち」をテーマとして紹介するのが『ぞろぞろ・わいわい・人だらけ―狩野派も、それ以外も』です。礼拝の対象となった肖像画や好奇の眼差しを向けられた外国の人の姿、また画中で交情を深める人たちが描かれた絵画を、1人、2人、3人といった少人数から大勢の人びとなど人の数に着目して公開します。入場は無料。美術ファンにとって定評のある板橋の江戸絵画コレクションを気軽に楽しめる良い機会となりそうです。

『館蔵品展 ぞろぞろ・わいわい・人だらけ―狩野派も、それ以外も』 板橋区立美術館
開催期間:2022年8月27日(土)~10月2日(日)
所在地:東京都板橋区赤塚5-34-27
アクセス:都営三田線西高島平駅下車徒歩約14分
開館時間:9:30~17:00
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし9月19日は開館)、9月20日
観覧料:無料
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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