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2022.8.4
貴重な原画約100点が来日!「クマのプーさん」展でプーさんの魅力を再発見
黄色くぽっちゃりした体で、ちょっと間の抜けたクマといえば? …そう、クマのプーさん!
世界で一番有名なクマといっても過言ではないプーさんの貴重な原画を堪能できる企画展「クマのプーさん」展が東京・立川のPLAY! MUSEUMにて開催中。
『クマのプーさん』(Winnie-the-Pooh)は、イギリス人作家のA.A.ミルンが物語、E.H.シェパードが挿絵を担当した児童小説です。1924年から1928年にかけてイギリスとアメリカで2冊の詩集と2冊の物語が出版されました。
本展では、1950年から60年代にアメリカの出版社E.P.ダットンのシリーズ新装版のためにE.H.シェパードが新たに描き下ろした約100点もの原画が展示されます。
貴重な原画を鑑賞できるだけでなく、会場全体がプーさんの物語にひたれる空間になっていたので見どころをレポートします。
プーさんが愛される秘密を「Pooh AtoZ」で辿る
小さな入口をくぐると「Pooh AtoZ」のエリアが広がります。
プーさんが世界中に愛され続ける秘密をAからZまでの26のキーワードで紹介。知っているようで知らないプーさんや物語や作者について、イギリスの児童文学に造詣の深い聖心女子大学教授の安達まみさんが文章を添えています。
誰もが知るプーさんですが、原作を読んでいないという人も意外と多いのではないでしょうか。原画鑑賞の前に物語や背景に触れ、だんだんとプーさんの世界に入り込んでいける仕組みになっています。
メインの展示室に向かう道には「森のなかを行こう」と題した、作家の梨木香歩さんによる原作をオマージュした文章が並びます。百町森の季節ごとの様子をつづった文章はプーさんとその仲間達と歩いているような気分になりわくわくします。
ちなみに、今回の展示で登場する言葉はすべて『クマのプーさん』の日本語訳を担当した石井桃子さんによる翻訳の言葉で統一されています。なので、プーさんの物語の舞台である森は、ディズニーのアニメーションで言われる「100エーカーの森」ではなく「百町森」と紹介されています。
百町森をあるいて原画に出会う空間
通りを抜けると目の前には「百町森」をイメージしたメイン展示室が広がります。なだらかな丘のようなスロープ、風を感じさせる緑、青、黄、赤色の大きな布、こもれびを思わせる光のあたった階段。まるで森の中を歩くように、原画を楽しめる空間が演出されています。
空間デザインは建築家の齋藤名穂さん、グラフィックデザインはアートディレクターの田部井美奈さんが手がけました。
壁面に飾られた桃色の額縁には物語『クマのプーさん』『プー横丁にたった家』の挿絵が並びます。
まず驚いたのは原画のきれいさ。修復師の方も「まるで昨日描かれたよう」と驚いていたそう。繊細でありながらあたたかみのある線と大人っぽい色合いでプーさん達の生活が生き生きと描かれています。
筆者のお気に入りは上の画像の絵。プーさんの部屋のクッションや絨毯の柄の細かい部分まで色彩豊かに描きこまれており見入ってしまいました。
本展示はカラーの水彩画が多いところも注目ポイント。PLAY! MUSEUMと提携関係にあるアメリカのエリック・カール絵本美術館に『クマのプーさん』のカラー原画が寄託されているということがわかり、今回の展示が実現したそう。「カラー原画が来日するのは貴重な機会。フレッシュで見応えがあるはず」とPLAY! プロデューサーの草刈大介さんは語りました。
中央スペースの展示ケースには小ぶりの原画が展示され、ミルンのことばと共に原画を楽しめます。のびやかに描かれるプーさん達の愛らしい姿に顔がにやけてしまいます。
また、展示に夢中になっていると気づきませんが、この展示ケースもよく見ると自然の木が足になっていて、森の中にいる動物のようで今にも歩き出しそう。木材は、持続可能な森づくりをテーマに活動する東京チェンソーズさんの協力を得ているそうです。
緩やかな丘を思わせる長いスロープの壁面に飾られた紺色の額縁に収められているのは、2冊の詩集『クリストファー・ ロビンのうた』『クマのプーさんとぼく』と、2冊からの抜粋集のために描かれた挿絵です。
いくつか詩も展示されており、詩の一部はミュージシャンの坂本美雨さんによる朗読が流れ、耳からも言葉と絵のハーモニーを味わうことができます。
詩集には、プーさんや仲間たちもときどき登場していますよ。
詩集の原画エリアからは展示室が一望できます。階段に座って森の中で出会った絵と言葉の余韻に浸るのも良いでしょう。楕円型の展示室のあたたかみのある木の壁も今回のコンセプトにマッチしており、じっくりプーさんの物語を体感できる素敵な空間になっていました。
映像インスタレーション「アッシュダウンの森のきろく」
原画をたっぷり満喫したら最後のエリア。プーさんの物語の舞台となったイングランド南部のアッシュダウンの森の最新映像を味わえる映像インスタレーションです。撮影、編集、会場構成は岡本香音さんが担当。
約15分、朝から日が暮れるまでの映像が映し出されます。薄い布に投影された映像が重なり、森のような奥行きを感じさせます。
ほんのりと風や土を感じさせる自然の香りもするのでぜひ実際に感じてみてください。
カフェや会場限定グッズもチェック
PLAY! CAFEではプーさんの暮らすイギリスをテーマとしたメニューが登場。イングリッシュサンドやフィッシュ&チップスなどが楽しめます。
併設のPLAY! SHOPでは会場限定のグッズも販売します。新アイテムも続々入荷とのことなので、
入荷情報は、PLAY! MUSEUMのTwitterをチェック。
「クマのプーさん」展はプーさんの魅力を読み解く工夫がされ、プーさんの物語を体感できる夢心地の空間でした。併設している屋内広場PLAY! PARK(別料金)ではプーさんにちなんだ「あそび」も開催しているので小さいお子様は一日中楽しめそう。
大人も子どももプーさんと一緒に百町森をお散歩してみてはいかがでしょうか。
企画展示「クマのプーさん」展
https://play2020.jp/article/pooh/
開催期間:2022年7月16日(土)〜10月2日(日)
所在地:東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F
PLAY! MUSEUM
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩約10分
開館時間:MUSEUM 10:00-18:00 (日時指定制を導入)
料金:一般1,800円/大学生1,200円/高校生1,000円/中・小学生600円/*未就学児無料
チケットは日時指定制です。
事前予約のオンラインチケットを販売、空きがあれば受付で当日券を販売します。
詳しくはPLAY! MUSEUMの公式サイトをご確認ください
◆2022年10月8日(土)〜11月27日(日)名古屋市美術館へ巡回予定

絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。
絵本やインスタレーションアート系の展示が好きなデザイナーです。趣味は街中の銅像探し。
藤子・F・不二雄先生を大尊敬しています。その他好きなアーティストはミヒャエル・ゾーヴァさん、馬場のぼるさん、三沢厚彦さんなど。
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