EVENT
2022.8.22
見て学び、座って体感する!北欧家具デザインの魅力とは?「フィン・ユールとデンマークの椅子」
北欧の国デンマークはデザイン大国として知られており、とりわけ1940年代から1960年代にかけて、歴史に残る優れた家具が生み出されました。
本展覧会では、デンマークの家具デザインの歴史と変遷をたどり、その豊かな作例が誕生した背景を探ると ともに、モダンでありながら身体に心地よくなじむフィン・ユールのデザインの魅力に迫ります。
東京都美術館にて開催中の企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」をご紹介します。
「彫刻のような椅子」を生み出したフィン・ユールとは?
フィン・ユール(1912-1989)は、 デンマークの近代家具デザインにおける代表的な人物です。
当時の家具デザイナーたちの多くが家具の専門学科や家具工房の出身であるのに対し、フィン・ユールは美術史家になることを夢見ながらもアカデミーで建築を学び、建物の設計やインテリアデザインに携わるなかで家具デザインを手がけました。
彼はデンマークのデザイナーのなかでも、一際美しい家具をデザインしたことで知られ、優雅な曲線を特徴とするその椅子は、“彫刻のような椅子”とも評されています。
これまで国連本部ビルの信託統治理事会議場のインテリアと家具デザインをはじめとし、スカンジナヴィア航空のオフィスや旅客機のインテリアデザイン、世界各地で開催されたデンマーク・デザインを紹介する展覧会場のデザインなど、建築家・インテリアデザイナーとしても幅広く活躍しました。
芸術性と実用性を追求して妥協を許さなかった姿勢
会場では、椅子のデザインにはじまり、理想の空間を具現した自邸の設計や、住居や店舗、オフィスのインテリアデザインまで、フィン・ユールの幅広い仕事を紹介しています。
活動当初は個性的で彫刻的な美しい家具デザインが斬新すぎて、なかなか評価を得られなかったそうです。しかし、その後1950年代からは海を渡ってアメリカへと活動の場を広げていき、国際的にフィン・ユールの名を広めていきました。
ソファのやわらかい丸み、肘に沿う滑らかなアーム、ほっそりとシャープな脚部…アームの優しい曲線美が特徴の《イージーチェアNo.45》、ソファのような心地よさの《ペリカンチェア》、彫刻のようなモダンデザインの《ベーカーソファ》、デザイン性と機能性の共存する《フィン・ユール ポエトソファ》など。
芸術性と実用性の両方を追求して妥協を許さなかったフィン・ユールの姿勢には徹底したものがあり、彫刻のように滑らかな曲線、どこから見ても美しいフォルムが特徴です。
身体を抽象化したようなやわらかなフォルムは座っていて心地よいばかりでなく、彫刻作品にも似た静謐(せいひつ)な存在感を放ち、建築や美術、あるいは日用品と濃密に響き合いながら、空間の調和を生み出す役割をも果たしています。
デザイナーたちの豊かな発想を座って体験しよう!
本来、椅子とは座るもの。会場では、実際にデンマークのさまざまな椅子に座って、そのデザインを体験できる空間があります。フィン・ユールをはじめ、デンマークの優れたデザイナーたちの豊かな発想により生まれた椅子に座って、それぞれの優れたデザインはもちろん、そのスピリットも体感してみてください。
また、東京都美術館内にある佐藤慶太記念アートラウンジや美術情報室にも、ファン・ユールをはじめとするデンマークの家具と照明器具がしつらえられており、日本とデンマークの両国でモダニズムを受容した建築家とデザイナーによる建築と家具が心地よく響き合っています。
最後に…
本展覧会は、どこから見ても美しいフォルムと滑らかな曲線の椅子という、あらゆる日常を支える身近な家具にあらためて光を当てる内容となっています。
新しい生活を模索する私たちが快適に生きるためのヒントを見つける機会となることでしょう。ぜひフィン・ユールとデンマークの椅子を通して、北欧デザインの新たな魅力を発見してみてください。
取材・撮影・文:新麻記子
『フィン・ユールとデンマークの椅子』
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
会期:2022 年 7 月 23 日(土)~10 月 9 日(日)
※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室。
休室日:月曜日、9 月 20 日(火)
開室時間:9:30~17:30、金曜日は9:30〜20:00(入室は閉室の 30 分前まで)
展覧会公式サイト: https://www.tobikan.jp/finnjuhl
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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