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EVENT

2022.10.17

日本に根付く「おもてなし」の精神を学べる特別展が開催中!「京に生きる文化 茶の湯」

中国から日本にお茶がもたらされたのは、奈良時代とされています。私たちが何気なく飲むお茶には、なんとおよそ1000年の歴史があるのです。
日本のお茶文化の歴史に詳しくなれる展覧会、特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」が京都国立博物館で開幕しました。12月4日まで開催されています。

展示風景

本展では歴史を代表する名碗はもちろん、千利休や豊臣秀吉に関する品々などを見ることができ、家よりも身近なのに海よりも深いお茶の歴史を学ぶことができました。美術ライターの明菜が見どころを紹介していきます。

歴史を代表する名碗が集結!

展示風景

本展では、茶の湯の原形が中国からもたらされた平安時代末頃から、時代を経て和様化され、現代につながっていく歴史を学ぶことができます。お茶の歴史を代表する名碗をはじめとする茶道具、中国から伝わった茶道具や喫茶法を書いた文書、お茶を楽しむ人々を描いた絵画など、見応えのある作品が数多く展示されていました。

重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」 通期展示

特に注目したいのは、歴史上の人物が愛した茶碗! 例えば、「大井戸茶碗 銘筒井筒」(重要文化財)は、豊臣秀吉が愛用したとされる名碗。秀吉が手で持ち、口をつけた茶碗が残っていること自体が奇跡だと思いますし、目の当たりにすると心拍数が上がります。

平清盛、足利義政が所持したと伝わる「青磁茶碗 銘馬蝗絆」も展示。淡い色合いが美しい茶碗で、繊細かつ高貴な印象がありました。

重要文化財「青磁茶碗 銘馬蝗絆」 東京国立博物館(画像提供:東京国立博物館) 通期展示

名品の鑑賞を通じ、名品そのものの魅力を感じると同時に、歴史上の偉人たちがいかにお茶を愛し、道具にこだわったかを学ぶことができました。

黄金茶室とわび茶室

重要文化財「千利休像」(部分) 伝長谷川等伯筆/古渓宗陳賛 正木美術館

茶の湯といえば、戦国時代から安土桃山時代に活躍した茶人、千利休です。茶の湯を政治に利用した織田信長、それを引き継いだ豊臣秀吉の側近として、茶の湯の指南や茶会のプロデュースなどを行いました。

中国から輸入した唐物を使ったそれまでの豪華な茶会とは異なり、利休が目指した「わび茶」は簡素なスタイルが特徴です。日々の暮らしの中にある道具を用いて「わび」の精神を取り入れ、現代につながる茶の湯を完成させました。

国宝「待庵」の再現展示

わびの精神を体現した茶室「待庵」は、秀吉の命で利休が制作したもの。本展では、再現された待庵が展示されています。

簡素やわびさびといった先入観のため、狭い茶室だと思い込んでいましたが、実物の空間は快適そうな印象でした。入口こそ小さいものの、十分な奥行きがあって無駄な飾りも無いので広く感じたくらいです。

「黄金の茶室」(復元品)京都市蔵

待庵の隣には、秀吉がつくらせた黄金の茶室の再現が展示されています。壁、天井、柱がすべて金色に光り、障子と畳は赤色というけばけばしい色遣い……!

わびとは正反対の茶室ですが、黄金の茶室にも利休が関わったそうです。同じ人物の美意識によるとは思えないほどの差ですが、秀吉には天下人にふさわしい茶室が必要だったとすれば、待庵とは正反対の黄金の茶室が生まれたのも納得できます。

一見、正反対の黄金の茶室と待庵ですが、共通する利休の哲学を感じられるという声も。ぜひ会場で見比べてみてくださいね。

【まとめ】お茶に学ぶおもてなしの歴史

展示風景

展示を通して、お茶文化が日本でこれだけ発達した理由は、お茶が「おもてなし」だからではないかと思いました。茶道具や茶室の飾りにこだわるのは、お客さんの心を動かすためですよね。茶の湯の歴史は、日本に根付く精神の歴史でもあるのです。

名碗をはじめとする茶道具には、当時の茶人たちの想いが詰まっています。展示物そのものを鑑賞するのも良いけれど、その向こうにある精神を感じ取ることができると、展覧会の楽しさが一層高まるのではないでしょうか。

展覧会情報

特別展「京に生きる文化 茶の湯」ポスタービジュアル

特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」
会場:京都国立博物館 平成知新館

会期:2022年10月8日(土)~12月4日(日)
主な展示替:
○前期展示=10月8日(土)~11月6日(日)
○後期展示=11月8日(火)~12月4日(日)
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替えあり

開館時間:午前9時~午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで開館)
※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(ただし、10月10日[月・祝]は開館、翌11日[火]は休館)

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/chanoyu2022

【写真10枚】日本に根付く「おもてなし」の精神を学べる特別展が開催中!「京に生きる文化 茶の湯」 を詳しく見る
明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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