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2023.4.18

古今東西のガラス職人の技とは?サントリー美術館にて『吹きガラス 妙なるかたち、技の妙』が開催!

熔かしたガラスに金属製の吹き竿で息を吹きつけ、風船のように膨らませて器をつくる吹きガラス。ガラス工房などにて実際に吹きガラスを体験された方も少なくないかもしれません。

その吹きガラスの起源、いつだと思いますか? なんと紀元前1世紀中頃、ローマ帝国下の東地中海沿岸域にはじまると考えられています。サントリー美術館で開かれる『吹きガラス 妙なるかたち、技の妙』では、作り手の「技」に着目し、ローマ時代から現代までの吹きガラス作品を展示。見どころを紹介します。

見どころ①ローマ時代に作られた吹きガラスから、15〜17世紀のヴェネチアで発達したホットワークの名品まで。

三連瓶 東地中海沿岸域 2〜3世紀 岡山市立オリエント美術館 【全期間展示】

まず注目したいのは、ローマ時代に作られたさまざまな吹きガラスです。初期の吹きガラスは石や金属の器を思わせる色づかいを見ることができますが、次第に型を使わずに成形された、柔らかな造形が生み出されるようになります。自然な曲線美を持つ形と、それを彩る飴細工のようなおおらかな装飾が、ローマ時代の吹きガラスの魅力です。

吊手付二連瓶 東地中海沿岸域 4〜5世紀 遠山記念館 【全期間展示】

ローマ時代は道具が限られていたため、制作にかかわる痕跡が作品の至る所に残されているのも特徴です。そうした痕跡を通して、2000年前の吹きガラス職人の技を想像するのも楽しいのではないでしょうか。

船形水差 イタリア 16〜17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】

このほかヨーロッパからは、16〜19世紀にかけてヴェネチアと周辺地域で作られた吹きガラスも展示。15〜17世紀頃のヴェネチアにおいて頂点に達したホットワーク(※)による表現の名品と、16世紀に発展したレース・ガラスを楽しむことができます。ホットワークによる複雑で繊細でかつ立体的な装飾に注目してください。

※熔解炉で熔かした熱いガラスを成形・加工すること。

見どころ②素朴な愛らしさ、はかなげな美しさが魅力。東アジアの吹きガラスの造形美を見る。

蓋付壺・水滴 伝滋賀県比叡山根本如法堂付近出土品のうち 宋もしくは日本 12世紀 奈良国立博物館 画像提供:奈良国立博物館 【全期間展示】

東アジアで作られた吹きガラスも見どころです。東アジアにおいて吹きガラスの生産がはじまったのは5世紀頃。西方からの影響によるものでした。そして西方のものに比べるとおおむね小さくて薄手で、ホットワークによる装飾も少なく、素朴なつくりをしています。

そもそも近代以前の東アジアの吹きガラスの工程は西方の製法と異なっていました。しかしこの違いがあってからこそ、東アジアならではの吹きガラスの造形が生まれます。素朴な愛らしさ、はかなげな美しさといった趣きも魅力です。

藍色ちろり 日本 18世紀 サントリー美術館 【全期間展示】

展示では12〜19世紀までの東アジアで作られた吹きガラスを、日本に伝わる作品を通して紹介します。また本展にあわせて実施された『藍色ちろり』(サントリー美術館所蔵)の技法研究の成果をもとに、江戸時代の吹きガラス職人の技にも迫ります。

見どころ③近現代の日本の吹きガラス。新進気鋭の現代作家の作品も公開!

籠目文赤縁碗形氷コップ 日本 20世紀 個人蔵 【全期間展示】

日本における近現代の吹きガラスも見逃せません。明治時代に入ると日本ではヨーロッパから招いた技術者の指導のもと、近代的なガラス産業の道が拓かれます。そうした導入初期に重要な役割を果たしたのが、明治9年に民営のガラス工場を買い上げて国営となった品川硝子製造所でした。ここで学んだ伝習生たちが、のちに全国各地へと渡ってガラス工場を開きます。

sghr recycleシリーズ 菅原工芸硝子株式会社 【全期間展示】

西洋から伝えられた技術が国内において習熟したことを示すのが、明治時代末頃から昭和時代初期にかけて作られた氷コップ(かき氷入れ)における多様な装飾の技法です。そして展示ではバリエーション豊かな氷コップを中心に、明治時代以降の日本で作られた吹きガラスを紹介します。またあわせて現在も手吹きによる生産を続けている企業3社の製品も展示されます。

一連の産業としての吹きガラスと並行し、20世紀以降には芸術表現としての吹きガラスも数多く生み出されました。

しろの くろの かたち 2022 小林千紗 2022年 作家蔵 【全期間展示】

そうしたアートとしての最先端の吹きガラスを、小林千紗に竹岡健輔、そして藤掛幸智や横山翔平などの若手作家の作品を通して紹介。「これも吹きガラス?どうやって作ったのだろう?」と思うような斬新な造形美を見ることができます。吹きガラスの未来へ可能性を感じる展示となります。

写り込みのほとんどない展示ケースや美しい照明など、作品展示では大いに定評のあるサントリー美術館での展覧会です。かつてないほど吹きガラスが映えて見えるに違いありません。

レース・ガラス脚付鉢 イタリア 16〜17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】

古今東西の吹きガラスの名品とともに、ガラス職人の創意工夫や現代のガラス作家の技法研究の成果に迫る『吹きガラス 妙なるかたち、技の妙』へ是非、お出かけください。

展覧会情報

『吹きガラス 妙なるかたち、技の妙』
会場:サントリー美術館
開催期間:2023年4月22日(土)~6月25日(日)
※会期中展示替えあり
所在地:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
アクセス:都営大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。
開館時間:10:00~18:00(金・土は20:00まで)
 ※5月2日(火)~4日(木・祝)は20時まで開館
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日 ※5月2日は20時まで、6月20日は18時まで開館
観覧料:一般1500円、高校・大学生1000円、中学生以下無料
https://www.suntory.co.jp/sma/

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はろるど

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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