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2023.7.18
関西を代表する芸術祭を目指して新たなステージへ。神戸・六甲山上にて「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」が開催!
「六甲ミーツ・アート芸術散歩」を知っていますか? 2010年より神戸・六甲山上で毎年行われてきましたが、14回目を迎える今年は、招待アーティストの拡充や芸術祭の拠点づくり、また一部作品の展示期間の延長や各会場を繋ぐトレイル(遊歩道・山道など)への作品展示など、内容を大幅に拡充して開催されます。
目次
写真:伊丹豪/ロゴマーク:佐貫絢郁 アートディレクション:芝野健太(株式会社ライブアートブックス)
テーマは「表現の向こう側(にあるもの)Beyond Representation」、そして芸術祭の新たな名称は「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」(以下、芸術散歩)です。見どころを紹介します!
kammy+OK!《六甲山の乳搾り》2022年 六甲ガーデンテラスエリア ※昨年の周遊イメージ
見どころ①招待アーティストを大幅に拡充!過去最大スケールのアーティストが参加。
川俣正 Photo: Gallery Kamel Mennour,
まず注目したいのは招待アーティストが拡充されることです。去年22組だった招待アーティストを今年は32組招聘。1980年代から建築物全体をインスタレーションする大規模なプロジェクトを手がけ、世界の第一線で活躍している川俣正をはじめ、巨大なバルーンの彫刻作品などで知られ、近年では「ARTIST’S FAIR KYOTO」のディレクターを務める担う椿昇といった世界的アーティストも参加します。
Artist in Residence KOBE(AiRK)
また神戸文化の活性化を目指して、2022年4月より運営を開始した「Artist in Residence KOBE(AiRK)」も招待。メンバーの森山未來のキュレーションのもと、ノルウエーのダンサーのダニエル・プロイエットが川俣正の作品とコラボしたパフォーマンスが予定されています。
このほか、土地の来歴や人々の営みをリサーチし、土地の残存物を用いて作品を手がける中﨑透や、観客参加型の美術作品を中心に手がける開発好明、絵画や写真、手回しの動画装置のキノーラの作品で知られる蓮沼昌宏、即興ドローイングや鏡などによって空間をインスタレーションする船井美佐などの実力派アーティストも招待。6月23日の時点で招待32組、公募17組の合計49組のアーティストの参加が決まっています。
見どころ②新拠点の「ROKKO森の音ミュージアム」。野外展示エリアにて作品も公開。
村山大明《アセビの切り株と想望》2022年 ROKKO森の音ミュージアム ※昨年の周遊イメージ
今回新たに打ち出されたのが、芸術祭の象徴となる拠点づくりです。今年は六甲山上の9会場、ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスエリア、六甲ケーブル、トレイルエリア、風の教会エリア、六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅、兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)が舞台となりますが、そのうちROKKO森の音ミュージアムを拠点として位置付けます。同芸術祭は過去にさまざまな場所を会場にしてきましたが、拠点を設けるのは初めてのことです。
また同ミュージアムのお庭のSIKIガーデンを拡張し、野外アート作品展示ゾーンとして一部作品を会期終了後も期間を延長して公開。4名のアーティストによる彫刻作品が設置されます。四季折々の自然に囲まれたナチュラルガーデンとアート作品が響き合う光景を楽しむことができるのです。
この野外アート作品展示ゾーンにて作品を新たに設置するのが、人間の手と自然から作られたものを組み合わせて作品を制作する三梨伸です。かつての六甲で採取された御影石をランドアートとして展開し、六甲の自然や地誌を感じる作品となることでしょう。
見どころ③トレイル沿いにもアート作品を展示。山歩きをしながらアートを楽しもう。
名村可奈子《山頂の遊具》2022年 兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台) ※昨年の周遊イメージ
各会場をつなぐトレイル沿いにも新たにアート作品が展示されます。これまでは観光施設を中心に作品を展示してきましたが、今回は六甲ケーブル六甲山上駅からROKKO森の音ミュージアム近くをつなぐ山道や散策路にも、川俣正や中﨑透らが7つの作品を展示します。そのうち中﨑は古い山荘の建物と敷地を用いて作品を展開。六甲という土地の記憶を掘り起こすようなアート作品を見ることができそうです。
またこどもたちが現代アートに触れ合える機会を創出すべく、こども向けのワークショップも開催。さらに職業体験的な取り組みとして、「1日キュレーター(学芸員)」など新企画も実施されます。親子一緒に芸術散歩に出かけるのも良いのではないでしょうか。
髙橋匡太《ひかりの実in SIKIガーデン》2021年 ROKKO森の音ミュージアム 写真:村上美都
また関連イベントとして「ひかりの森~夜の芸術散歩~」と題し、9月23日(土・祝)~11月23日(木・祝)の土日祝の17:00〜20:00の間、ROKKO森の音ミュージアムと六甲高山植物園にて夜間作品を期間限定にて公開。六甲山は夜景でも有名ですが、夜の山そのものを舞台としたアート巡りもできるのです。
見どころ④ロゴマークも一新!関西を代表する芸術祭を目指して新たなステージへと挑む。
写真:伊丹豪/ロゴマーク:佐貫絢郁 アートディレクション:芝野健太(株式会社ライブアートブックス)
今回は13年使ってきたロゴマークを一新。書籍の装丁をはじめ多くのアートワークを手がける佐貫絢郁による山のモチーフに、「beyond」という文字が登ったり降りたりしているデザインが採用されました。また海から神戸の街、それに六甲山を眺めるという、たとえ神戸に住んでいてもなかなか見られない景色を写したビジュアルも新しいのではないでしょうか。なお撮影は出展アーティストでもある伊丹豪が手がけました。
『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』記者発表会の様子(6月23日、大阪市内)。左から総合ディレクター・高見澤清隆、六甲山観光株式会社 代表取締役社長・寺西公彦、阪神電気鉄道株式会社 代表取締役社長・久須勇介、神戸市長・久元喜造、現代美術家・椿昇、阪急阪神ホールディングス株式会社 代表取締役会長 グループCEO・角和夫。
総合ディレクターを務める高見澤清隆は、「六甲ミーツ・アート芸術散歩は元々、観光産業がプラットフォームにあった」とし、「六甲山に来たらたまたまアートがあったという、現代アートとのファーストコンタクトの機能もある」と語りました。そして「自分の関心のないものに心を閉ざしがちな風潮の中、日常と違う価値観を提示するのが現代アートである」とした上で、「分からないからとして拒むのではなく、どんな作品なのかを考えながら楽しんでほしい」と、現代アートの接触を訴えました。
また現在、西宮市に在住し、有馬温泉にアトリエを構えて「六甲山は庭みたいなもの」とする椿昇は、「六甲山はもっとブラッシュアップできる」として、「単にアートだけでなく、未来への豊かな生活のあり方を考える上でも、新しい六甲ミーツ・アート芸術散歩が重要な役割を果たすはずだ」と期待を寄せました。
二ノ宮久里那《Transience》2022年 六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅 ※昨年の周遊イメージ
関西を代表する芸術祭を目指して開かれる「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」。会期は2023年8月26日(土)から11月23日(木・祝)の90日間です。6月24日から鑑賞パスポートの前売りが開始されました。六甲山の自然に触れながら、よりスケールアップしたアート作品展示が行われる新感覚の芸術祭へみんなで出かけましょう!
展覧会情報
『六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond』
会場:神戸・六甲山上の9会場
ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスエリア、六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅・山上駅・天覧台)、トレイルエリア、風の教会エリア、六甲有馬ロープウェー 六甲山頂駅、兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)
開催期間:2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)
アクセス:阪神御影・JR六甲道・阪急六甲から市バス16系統で「六甲ケーブル下」下車(約15分~30分)六甲ケーブルで「六甲ケーブル山上駅」下車、六甲山上バスで各施設へ。
開催時間:10:00~17:00
※会場により営業時間が異なります。17時以降も鑑賞できる作品があります。
会期中無休。
※ただし六甲山サイレンスリゾートのみ8月~10月の毎週月曜日休業(月曜祝日の場合は火曜に振替休業)。
鑑賞パスポート:大人2900(2800)円、小人1100(1000)円。
※Webチケットサービスでの販売料金。( )内は前売料金。
※大人:中学生以上 小人:4歳から小学生まで
※このほか、「ひかりの森~夜の芸術散歩~」の入場がセットになったナイトパス付鑑賞パスポートを販売。
https://rokkomeetsart.jp/
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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