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2023.10.5
【10月おすすめ展覧会5選】長沢芦雪から『やまと絵』、松山智一まで
酷暑もようやく陰りを見せ、朝晩を中心に秋の気配を感じるようになってきました。10月は一年のうちでも特に多くの展覧会が開幕します。
国内では半世紀ぶりのキュビスム展や江戸時代の奇想の画家、長沢芦雪の展覧会、またコロナ禍を乗り越えてようやく開催される『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』など、おすすめの展覧会を5つご紹介します。
目次
国内では半世紀ぶりのキュビスム展。パリ ポンピドゥーセンターの名品でたどるキュビスムの軌跡。
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって生み出されたキュビスムは、遠近法や陰影法による三次元的な空間表現から脱却すると、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放しました。
そして絵画や彫刻の表現を根本から変えることによって、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道を切り開いただけでなく、装飾・デザインや建築、舞台美術を含むさまざまな分野にも影響を与えました。
国立西洋美術館の『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』では、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターの所蔵品からキュビスムの名品を数多く公開。
ピカソ12点、ブラック15点をはじめとする主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料など約140点を通してキュビスムの軌跡を辿っていきます。なお作品の50点以上は初来日を果たし、国内では半世紀ぶりという歴史的なキュビスム展が実現します。
【展示会情報】
『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』 国立西洋美術館
開催期間:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)
所在地:東京都台東区上野公園7-7
アクセス:JR線上野駅下車(公園口出口)徒歩1分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車徒歩8分。
開館時間:9:30~17:30
※金・土曜は20時まで
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日。但し10月9日(月・祝)、1 月8日(月・祝)は開館。10月10日(火)、12月28日(木)〜2024年1月1日(月・祝)、1月9日(火)。
観覧料:一般2200円、大学生1400円、高校生1000円。
※当日に限り本展の観覧券で常設展も観覧可。
公式サイト:パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ
※京都市京セラ美術館へ巡回。会期:2024年3月20日(水・祝)~7月7日(日)
大阪の美術館では初めての回顧展。江戸時代の奇想の画家、長沢芦雪の魅力とは?
江戸中期の京都で活躍し、円山応挙の高弟でもあった画家、長沢芦雪(1754〜1799年)。卓越した描写力に加えて、奇抜な着想と大胆な構図、また人を楽しませようというサービス精神や面白みです。
独自の世界を切り開くと、200年以上経った今も多くの人々を魅了し、伊藤若冲や曽我蕭白らとともに「奇想の画家」のひとりとして国内外から高く評価されています。とりわけ紀南(和歌山県南部)にて手がけた、無量寺の「龍・虎図襖」などの大画面の作品でも人気を集めてきました。
⼤阪中之島美術館の『生誕270年 長沢芦雪 —奇想の旅、天才絵師の全貌—』は、大阪で初めて開かれる芦雪の大回顧展です。国内にある芦雪の代表作から今回新たに見つかった作品など、重要文化財4件を含む約100件の作品にて芦雪の魅力に迫ります。
また西光寺(島根)、無量寺(和歌山)、高山寺(和歌山)、薬師寺(奈良)、大乗寺(兵庫)に残された襖絵が23年ぶりに揃って公開。またかわいらしく生き生きとした動物たちを描いた絵も数多く展示されます。
【展示会情報】
『生誕270年 長沢芦雪 —奇想の旅、天才絵師の全貌—』 ⼤阪中之島美術館
開催期間:2023年10⽉7⽇(土)~12⽉3⽇(日)
所在地:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
アクセス:Osaka Metro四つ橋線 肥後橋駅(4番出口)より徒歩約10分
開館時間:10:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(10月9日を除く)、10月10日(火)。
料金:一般1800円、高校・大学生1100円、小学・中学生500円。
※会期中、展示替えあり
公式サイト:生誕270年 長沢芦雪 —奇想の旅、天才絵師の全貌—
※九州国立博物館へ巡回。会期:2024年2月6日(火)~3月31日(日)
総件数約240件の7割超が国宝、重要文化財!特別展『やまと絵-受け継がれる王朝の美-』
中国に由来する唐絵や漢画といった外来美術の理念や技法との交渉を繰り返しながら、独自の発展を遂げてきたやまと絵。平安時代から鎌倉時代にかけては、中国的な主題を描く唐絵に対し、日本の風景や人物を描く作品を「やまと絵」と呼んでいました。
それ以降は水墨画といった中国の新しい様式による絵画を漢画と呼ぶのに対し、前代までの伝統的なスタイルに基づく作品をやまと絵と呼ぶように。やまと絵には、四季の移ろい、月ごとの行事、花鳥・山水やさまざまな物語など、あらゆるテーマが描かれてきました。
やまと絵の真髄を多様なジャンルの作品から探るのが、東京国立博物館 平成館にて開かれる特別展『やまと絵-受け継がれる王朝の美-』です。平安時代末に制作され、日本絵巻史上最高傑作ともいわれる《源氏物語絵巻》や《鳥獣戯画》などの「四大絵巻」が10月11日から22日まで30年ぶりに集結します。
さらに肖像画の大作である「神護寺三像」、さらに《久能寺経》や《平家納経》といった「三大装飾経」などが公開(いずれもすべて国宝)。総件数約240件の7割超が国宝、重要文化財という名品の数々にて、壮麗かつ優雅なやまと絵の世界を楽しむことができます。※会期中、一部作品の展示替えおよび巻替えあり
【展示会情報】
特別展『やまと絵-受け継がれる王朝の美-』 東京国立博物館 平成館 特別展示室
開催期間:2023年10月11日(水) ~12月3日(日)
所在地:東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR線上野駅公園口・鶯谷駅南口下車徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅・東京メトロ千代田線根津駅下車徒歩15分。京成電鉄京成上野駅下車徒歩15分
開館時間:9:30~17:00
※金曜・土曜日は20:00まで開館(総合文化展は17:00閉館、ただし11月3日(金・祝)より、金曜・土曜は19:00閉館)
※最終入場は閉館の60分前まで
休館日:月曜日。ただし本展のみ11月27日(月)は開館。
観覧料:一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料。
※土・日・祝日のみ事前予約制(日時指定)
公式サイト:やまと絵-受け継がれる王朝の美-
コロナ禍を乗り越えていよいよ開催!SOMPO美術館の『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』
花や日用品、楽器や死んだ狩の獲物や食べ物など、動かない物を描いた静物画は、ヨーロッパの美術史上、17世紀になって絵画の分野として確立しました。そして19世紀に活動したポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890年)も数多くの静物画を制作しながら独自のスタイルを身につけると、『ひまわり』に代表されるような傑作を生み出します。
当時のフランスの中央画壇において静物画は、絵画のヒエラルキーの下位に位置付けられていたものの、特に花の需要が高かったため、多く画家が花の静物画を描きました。
SOMPO美術館の『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』では、17世紀から20世紀の静物画の流れの中でゴッホを位置付けるべく、ドラクロワ、マネ、モネ、ピサロ、ルノワール、ゴーギャン、セザンヌ、シャガールの作品とともにゴッホの静物画を紹介。
国内外25ヶ所より集められた69点の作品が公開され、そのうちゴッホの油彩画は25点出品されます。なお本展はSOMPO美術館移転後の開館特別企画展として2020年に開かれる予定だったものの、コロナ禍により中止となったため、約3年の時を経て実現した西洋絵画ファン待望の展覧会となります。
【展示会情報】
『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』 SOMPO美術館
開催期間:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)
所在地:東京都新宿区西新宿1-26-1
アクセス:JR線新宿駅西口から徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線新宿駅から徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
※ただし11月17日(金)と12月8日(金)は20時まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1月8日は開館)、年末年始(12月28日~1月3日)。
観覧料:一般2000(1800)円、大学生1300(1100)円、高校生以下無料
※当日券料金。()内は事前購入券料金。
※日時指定予約制。
公式サイト:ゴッホと静物画―伝統から革新へ
国内の美術館では初の個展が弘前にて開催!世界で活躍するアーティスト、松山智一の作品世界。
1976年に生まれ、現在はニューヨークのブルックリンを拠点に活動を続けるアーティストの松山智一は、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、大規模なパブリック・アートとしての彫刻など、これまでに国内外にて多様な作品を発表してきました。
その作品には、日本や中国、ヨーロッパといった伝統的な絵画からの引用や、ファッション誌の切り抜き、さらに日常生活で慣れ親しんだ商品やロゴなど、さまざまなイメージのサンプリングが描かれています。
松山の日本初の美術館の個展、『松山智一展:雪月花のとき』が、弘前れんが倉庫美術館にて開催。初公開の新作9点を含む日本初公開作品23点に加えて、近年の絵画や彫刻など計30件を紹介します。
展示作品のなかにはコロナ禍において遠隔でスタッフたちとの制作を試みた『Cluster 2020』(2020年)や、一人で制作した『Broken Train Pick Me』(2020年)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた近年の作品群なども含まれます。コールタールの黒塗りの壁がユニークな美術館との空間との響き合いにも注目が集まります。
【展示会情報】
『松山智一展:雪月花のとき』 弘前れんが倉庫美術館
開催期間:2023年10月27日(金)〜2024年3月17日(日)
所在地:青森県弘前市吉野町2-1
アクセス:弘前駅より徒歩20分。弘南バス100円バス(土手町循環)弘前駅中央口バスのりば「D100番」より「蓬莱橋」下車(乗車9分)、徒歩5分。
開館時間:9:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日、年末年始[2023年12月25日(月)〜2024年1月1日(月)]
※ただし、2024年1月2日(火)、1月3日(水)は開館。
観覧料:一般1300円、大学生・専門学校生1000円、高校生以下無料。
公式サイト:松山智一展:雪月花のとき
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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