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2023.10.24

『モネ 連作の情景』でたどる印象派の画家、モネの軌跡。上野の森美術館にて展覧会が開催!

印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネ(1840〜1926年)。戸外での制作時に見られるモチーフの一瞬の表情や風の動き、また時間の移り変わりに着目したモネは、同じ場所やテーマを異なる天候や時間、それに季節を通して描くと、「連作」という表現手法により作品を発表しました。

《ヴェンティミーリアの眺め》 1884年 油彩、カンヴァス 65.1×91.7cm グラスゴー・ライフ・ミュージアム(グラスゴー市議会委託) © CSG CIC Glasgow Museums Collection. Presented by the Trustees of the Hamilton Bequest, 1943

モネの「連作」に焦点を当てつつ、画家の生涯をたどる『モネ 連作の情景』が、2023年10月20日(金)から2024年1月28日(日)まで上野の森美術館にて開催されます。国内外の40館以上から集められた60点以上の代表作が集結。展示作品のすべてがモネという贅沢な展覧会となります。

第1章「印象派以前のモネ」:サロンに落選した大作『昼食』が初来日!

《昼食》 1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cm シュテーデル美術館 © Städel Museum, Frankfurt am Main

1840年にパリで生まれたモネは、5歳から18歳までをフランス北西部のル・アーヴルで過ごします。そして素描を学び、似顔絵(カリカチュア) が地元で評判を得ました。17歳の時にブーダンと出会うと、戸外のスケッチに誘われ、風景を描きはじめました。

画家を志したモネは18歳でパリに出ると、画塾で出会ったピサロやルノワール、シスレー、バジールと親交を深めます。1865年には2点の海景画でサロンに初入選。 翌年ものちに妻となるカミーユをモデルにした《カミーユ(緑衣の女性)》などが入選し、順調なデビューを飾ります。

しかし、戸外で描いたモネの意欲作は保守的なサロン審査員によって評価されず、落選を重ねるようになりました。

《ルーヴル河岸》 1867年頃 油彩、カンヴァス 65.1×92.6cm デン・ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag - bequest Mr. and Mrs. G.L.F. Philips-van der Willigen, 1942

1870年7月に普仏戦争が勃発すると、徴兵を逃れるためモネは妻子とともにロンドンへ避難します。翌年に休戦すると、オランダでの滞在を経てパリへ戻りました。

第1章「印象派以前のモネ」では、サロンに落選した初来日の大作《昼食》を中心に、オランダで描いた風景画などモネの初期作品が紹介されます。

第2章「印象派の画家、モネ」:セーヌ川流域を拠点にしたモネ。水辺の風景を好んで描く。

《ヴェトゥイユの教会》 1880年 油彩、カンヴァス 50.5×61.0cm サウサンプトン市立美術館 © Southampton City Art Gallery

オランダから帰国したモネは、1871年末からパリ郊外のアルジャントゥイユで生活をはじめ、マネやルノワールもこの地を訪れてモネと一緒に制作します。そしてモネと仲間はサロン落選の経験から新たなグループ展を構想すると、1874年春、パリにて第1回印象派展を開催しました。

モネは1886年までに計8回開催された印象派展に5回参加します。第2回印象派展には和服姿の妻をモデルにした《ラ・ ジャポネーズ》を発表。しかし次第に人物画の制作は減り、風景、とりわけ自然の情景、水辺の景色を好んで描くようになりました。

これまで比較的恵まれた生活をしていたモネですが、1875年に急激な景気後退がはじまると、絵が売れなくなります。そして最大の顧客だった実業家エルネスト・オシュデが破産するなど、モネは深刻な経済難に見舞われました。

1878年にはヴェトゥイユへと移り、生活費の節減のためオシュデ家(夫婦と6人の子)とモネ家(夫婦と2人の子)の同居がスタートしました。しかし体調を崩したカミーユは1879年にまだ32歳の若さにて亡くなってしまいます。最良のモデルでもあった妻を失ったモネは、深刻な精神的危機に陥りました。

第2章「印象派の画家、モネ」では、1870年代から80年代にかけて、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れたモネの作品を紹介。セーヌ川に浮かべたボートの上からヴェトゥイユをモチーフとした《ヴェトゥイユの教会》や、セーヌ川に係留され自らのアトリエ舟を描いた《モネのアトリエ舟》などが公開されます。

第3章「テーマへの集中」:ノルマンディー地方のプールヴィルからエトルタへ。

《ラ・マンヌポルト(エトルタ)》 1883年 油彩、カンヴァス 65.4×81.3cm メトロポリタン美術館 Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY. Bequest of William Church Osborn, 1951 (51.30.5)

19世紀のフランスにおいてツーリズムが大衆化し、鉄道網が発達すると、モネは新たな画題を求めて精力的に旅をするようになります。

それはパリ近郊の村はもちろん、ノルマンディー地方のル・アーヴルやエトルタ、ブルターニュ地方のベリール島といったフランス国内だけでなく、イタリアのボルディゲラ、地中海に面したモナコなどヨーロッパ各地に及びました。

モネは旅先に時に数ヶ月ほど滞在しながら集中的に制作しましたが、行楽地には関心がなく、人影のない海岸などを好んで描きました。

《エトルタのラ・マンヌポルト》 1886年 油彩、カンヴァス 81.3×65.4cm メトロポリタン美術館 Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY. Bequest of Lillie P. Bliss, 1931 (31.67.11)

第3章「テーマへの集中」では、ノルマンディー地方のプールヴィルの海岸を描いた作品群も見どころといえるでしょう。1882年の作品では断崖などの目立つ造形に着目して描いていますが、15年後に再訪した際は、構図をさほど変えず、海や空の天候による変化を主題としています。

夏の晴天の下、切り立った崖が砂浜と海に青い影を落とす《プールヴィルの断崖》も見ておきたい作品のひとつです。

またモネは同じくノルマンディーのエトルタにも魅せられていて、1883年から86年の間に毎年訪れていました。奇岩のラ・マンヌポルトを間近に大きく捉えた2点、《ラ・マンヌポルト(エトルタ) 》や初来日の《エトルタのラ・マンヌポルト》における縦横の違いや色使いの変化にも注目してください。

第4章「連作の画家、モネ」:〈積みわら〉にて初めて体系的に「連作」の手法を実現。

《積みわら、雪の効果》 1891年 油彩、カンヴァス 65.0×92.0cm スコットランド・ナショナル・ギャラリー © National Galleries of Scotland. Bequest of Sir Alexander Maitland 1965

1883年春、42歳のモネはヴェトゥイユの下流に位置するセーヌ川流域のジヴェルニーに移り住みます。そして自宅の近くで秋になると現れる積みわらを、当初はありのままに描いていました。

1890年前後になると複数のカンヴァスを並べて、光を受けて刻々と変化する積みわらを同時進行で表していきます。よってモネが体系的に「連作」の手法を実現したのは、〈積みわら〉が最初だと考えられています。

第4章「連作の画家、モネ」にて展示される《積みわら、雪の効果》は、1891年5月、デュラン=リュエル画廊で公開された15点の連作のうちの1点です。そしてこの個展が大好評を博すと、その後は〈ポプラ並木〉や〈ルーアン大聖堂〉などの連作も生み出します。

《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》 1904年 油彩、カンヴァス 65.7×101.6cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー © National Gallery of Art, Washington. Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.27

1899年からはロンドンを訪れ、〈チャリング・クロス橋〉や〈ウォータールー橋〉などの連作を数年かけて描きます。構図はより単純化し、湿り気のある大気が充満したような画面に建造物の形態が柔らかく浮かび上がり、大まかな筆致で光と大気を緻密に表現していきました。

第5章「『睡蓮』とジヴェルニーの庭」:モネを代表する〈睡蓮〉の名作も公開。

《睡蓮》 1897-98年頃 油彩、カンヴァス 66.0×104.1cm ロサンゼルス・カウンティ美術館 Los Angeles County Museum of Art, Mrs. Fred Hathaway Bixby Bequest, M.62.8.13, photo © Museum Associates/LACMA

ラストを飾るのは第5章「『睡蓮』とジヴェルニーの庭」にて紹介される〈睡蓮〉の作品たちです。後半生を過ごしたジヴェルニーはモネのインスピレーションの源。セーヌ川支流のエプト川が流れる村の四季の風景を描いていきます。

借りていた家と土地を購入すると、敷地を拡げて「花の庭」と「水の庭」を整備し、「水の庭」では睡蓮を栽培して、池に日本風の太鼓橋を架けて藤棚をのせ、アヤメやカキツバタを植えました。

1890年代後半からは300点もの〈睡蓮〉に取り組みます。さらに友人で政治家のクレマンソーに大装飾画の計画を働きかけると、巨大な専用アトリエを建てて史上最大の〈睡蓮〉を制作しました。

《睡蓮の池》 1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション © Hasso Plattner Collection

モネは1908年頃から視覚障害に悩まされ、1923年には白内障の手術を受けます。当初は風景として描かれていた〈睡蓮〉は、次第に視線が水面に集中すると、視力の衰えとともに筆致はより粗く、対象の輪郭は曖昧になりました。

やがて色と光の抽象的なハーモニーが画面を占めると、大画面を色と光の筆致が覆う晩年の作品は20世紀半ばの抽象表現主義の画家を刺激します。モネの作品は後生の芸術家たちに大きな影響を与えたのです。

1874年4月の第1回印象派展から150年目の節目を迎える今年、「100%モネ !!」の『モネ 連作の情景』で、モネが「連作」を通していかに革新的な表現を切り開いていったのかを目の当たりにしてください。

展覧会情報

『モネ 連作の情景』 上野の森美術館
開催期間:2023年10月20日(金)〜2024年1月28日(日)
所在地:東京都台東区上野公園1-2
アクセス:JR上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ・京成電鉄上野駅より徒歩5分。
開館時間:9:00~17:00
 ※金・土・祝日は〜19:00
 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)
入館料:日時指定予約推奨
 平日(月〜金):一般2800円、大学・専門学校・高校生1600円、中学・小学生1000円
 土・日・祝日:一般3000円、大学・専門学校・高校生1800円、中学・小学生1200円
公式サイト:『モネ 連作の情景』 
※大阪中之島美術館へ巡回予定。会期:2024年2月10日(土)〜5月6日(月・休)。

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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