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2024.2.5
クリムトの絵画を発見!100年間消息を絶っていた作品がオークションへ
オーストリアの画家グスタフ・クリムトの残した作品「フラウリーン・リーザーの肖像」が、ウィーンで発見されました。本作が最後に公の場で公開されたのは1925年で、その後100年近くにわたり消息が不明になっていたものです。
クリムト『フラウリーン・リーザーの肖像』, Public domain, via Wikimedia Commons
クリムトの絵画「フラウリーン・リーザーの肖像」はどこで見つかった?
「フラウリーン・リーザーの肖像」は、ウィーンの一般市民家族が保有していました。作品が公の記録に残っている1925年以降の消息はわかりませんが、少なくても1960年代にはこの家族が所有していたそうです。
「フラウリーン・リーザーの肖像」は長らく失われたものと考えられていたものの、クリムトの作品カタログを通じて存在は知られていました。しかしカタログの写真は白黒のみだったため、本物が見つかって初めて鮮明な色彩が公開されました。
ヨーロッパでは、20世紀の2度の対戦により多くの芸術作品が失われ、「作品が存在したことは明らかだが実物がない」ことは珍しくありません。また、ナチスの略奪により作品が元の保管場所から持ち去られているケースもよくあります。
肖像画の女性はオーストリアの裕福なユダヤ人女性で、ウィーンの上流社会の一員でした。クリムトは上流社会との交流のなかでパトロンを見つけることも多く、彼女もその1人だったのでしょう。しかし、肖像画モデルの女性の詳しい素性は明らかになっていません。
見つかったクリムトの絵画はオークションへ
見つかった作品は、今年4月24日にオークションにかけられることが決まっています。ウィーンのオークションハウスは、クリムトの「フラウリーン・リーザーの肖像」が5400万ドル(79億円)以上の価値があると予想しました。
国際協定「ワシントン原則」では、主にナチスの略奪によって失われた作品を元来の所有者に返すことが定められています。
肖像画はもともとリーザー家の所有物でしたが、ほかの家族の手に渡ったいきさつは明らかになっていません。また、オークションハウスの調べではこの作品が第二次世界大戦前後の略奪や盗難に遭った証拠は見つかっていないそうです。オークションにまつわる利権処理のための慎重な情報収集が必要でしょう。
本作はオークションまでの期間に英国、スイスなどさまざまな国で展示される予定です。一体いくらの値段がつけられるのか、4月のオークションが楽しみですね。
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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