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2024.4.1

若冲の激レアな巻物《果蔬図巻》が見つかった!福田美術館で一般公開の予定

美術が大好きな皆さま、大変なニュースです。なんと、今まで存在を知られていなかった伊藤若冲の巻物が新たに発見され、京都の福田美術館に収蔵されました!

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

若冲といえば江戸時代を代表する画家。鶏などの動物画をはじめ、人物や植物までさまざまなモチーフを自由自在に描き出しました。色彩や構図の大胆な表現は、令和の今も人々の心を惹きつけています。

今回、ヨーロッパで新たに見つかったのは《果蔬図巻(かそずかん)》という若冲の巻物。3メートル近い横長の巻物に、野菜や果物が約40 種類も描かれています。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政 3 年(1791) 福田美術館蔵

本作は 2024年10月に開幕する展覧会「開館5周年記念:京都の嵐山に舞い降りた奇跡! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」にて、一般公開される予定とのこと。

これに先駆けて、3月5日(火)の記者発表で本作を拝見してきました。この記事では、実物と対面した筆者が、見てほしいポイントをお伝えしたいと思います!

伊藤若冲ってどんな画家?

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう、1716-1800)は江戸時代中期の画家で、独自の色彩感覚による鮮やかな色づかいや、大胆な構図などに特徴があります。「奇想の絵師」とも呼ばれ、近年、再評価が進んでいます。

国宝の《動植綵絵》がよく知られているとおり、鶏などの動物画のイメージが強い画家ではないでしょうか。しかし、実は人物や植物などいろいろなモチーフを描いています。実物の魅力に忠実でありながらクリエイティブな作品が多く、卓越した観察力と描写力がうかがえます。

果蔬図巻(かそずかん)を見てみよう!

そんな若冲が76歳のときに描いたのが、《果蔬図巻(かそずかん)》です。

3月5日(火)記者発表で果蔬図巻を広げる岡田学芸課長

本作のサイズは、縦 30.5cm×横 277.5cm(跋文部分 54.5cm を加えると横 332.2cm)で、横は3メートルに近い長さ。唐辛子やカボチャをはじめ、私たちにも馴染み深いものからあまり身近ではないものまで、約40種類の野菜と果物が描かれています。

若冲とはいえ、「野菜と果物の絵を見ても、感動できる自信ないなあ……」と思った方もいらっしゃるのでは。私も、本作を直に目にするまではそう思っていました。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

ですが、これが本当に素晴らしくて……! 緑や赤、黄色、所々に青系の色と、鮮やかな色を使いながらも全体的には調和しています。華やかながら落ち着いた印象もあり、若冲の絶妙な色彩感覚がうかがえました。

絹の上で色が混ざり合う綺麗なグラデーションや、果実の表面の手触りまでも伝わってくる点描の表現など、細部には若冲の技が光りに光っています。自然の美を描き出す流れるような線も、見ていてとても心地が良かったです。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

若冲の作品にはリアリティがありますが、リアルとは少々違うように思います。本物の魅力を的確に捉えて増幅させ、美の領域に高めている、と言えるでしょうか。

それは果蔬図巻も同様で、野菜と果物のユニークな形や色の魅力が存分に引き出されており、見応えのある作品になっています。「さすが若冲〜!」と唸らずにはいられませんでした。

どうして「奇跡」の発見なの?

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!」「伊藤若冲の激レアな巻物」と同館が展覧会名に掲げているとおり、果蔬図巻の発見は奇跡と言っても過言ではありません。美術が好きな人が嬉しいだけでなく、学問的にも意義深いのですね。

本作の翌年、若冲は「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(佐野市立吉澤記念美術館所蔵・重要文化財)を描きました。野菜や果物に加え、昆虫や爬虫類も描かれた作品で、描かれている野菜や彩色方法などに共通点が見られるそう。

果蔬図巻と菜蟲譜を比較することで、新たな発見があるかもしれません。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(大典直筆の跋文の部分)福田美術館蔵

また、果蔬図巻の跋文(ばつぶん、巻物の終わりに書かれた文章)は、相国寺の僧・梅荘顕常(大典)の直筆です。若冲と深い親交があった大典は、

・若冲の果蔬図巻は素晴らしく、果物や野菜の形を極め、色を備えている
・浪速の森玄郷のために若冲が制作した
・森玄郷と会ったのは約30年ほど前で、若冲と共に訪れたことがある
・森玄郷が亡くなったあと、息子の嘉続が大典に跋文を依頼した
・交流のない若冲に思いをはせて、絵の素晴らしさを述べる

など、当時のことを跋文に記しました。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

森玄郷や嘉続がどのような人物なのかは調査中だそうですが、依頼主が確定する作品は極めて珍しいのだとか。若冲の画業を考える上でも大きな意味のある発見と言えそうです。

【まとめ】この秋は果蔬図巻を見に京都へ行こう

福田美術館学芸課長 岡田秀之氏

同館学芸課長である岡田秀之氏は、「一つ一つ彩色が施された果物や野菜は、若冲の確かな観察眼と優れた描写力によって描かれている」とコメントされています。

また、同館によると、奇想の画家として若冲の再評価にいち早く取り組んだ辻惟雄氏は、「色の対比をきちんと考えた彩色が興味深い。初々しさを感じる」と評したそう。

専門家の視点でも、私のような美術が好きな人の視点でも、本作の発見は大変嬉しい出来事です。

伊藤若冲《果蔬図巻》寛政3年(1791)(部分)福田美術館蔵

本作の一般公開は、10月に開幕する展覧会「開館5周年記念:京都の嵐山に舞い降りた奇跡! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」を予定されています。

秋といえば嵐山の紅葉も美しいシーズン。若冲の果蔬図巻の鑑賞をメインイベントに、秋の京都を満喫してはいかがでしょうか?

【写真11枚】若冲の激レアな巻物《果蔬図巻》が見つかった!福田美術館で一般公開の予定 を詳しく見る
明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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