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2022.7.26
ゲルハルト・リヒターをモデルに描いた映画が7月29日から再上映!『ある画家の数奇な運命』
現在、東京国立近代美術館ではゲルハルト・リヒターの大規模個展が開催されています。
それに合わせて、2022年7月29日(金)から東京・TOHOシネマズ 日本橋にて、現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに描いた映画『ある画家の数奇な運命』が期間限定で再上映されます。
観る者すべてに勇気をくれる本作品についてご紹介したいと思います。
作品紹介『ある画家の数奇な運命』
ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていました。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われてしまいます。
終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋におちます。元ナチ高官の彼女の父親こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのですが、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚。
やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭しました。美術学校の教授から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻まれた叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトでしたが―。
主人公クルトのモデルは現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒター
Photo: Dietmar Elger, courtesy of the Gerhard Richter Archive Dresden(ゲルハルト・リヒター展公式サイトより引用)
ドイツが生んだ現代美術の巨匠であるゲルハルト・リヒターは、油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用いて、具象表現や抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識する原理自体を表すことに一貫して取り組んできたアーティストです。
これまで60年の画業のなかで、フォト・ペインティングからアブストラクト・ペインティング、グレイ・ペインティング、オイル・オン・フォト、カラーチャート、ミラーチャート、アトラスなど、多種多様な作品シリーズを生み出しました。
本作品を手がけたドナースマルク監督が、リヒター自身の著書や伝記に魅せられて映画化を申し込んだところ、1ヶ月にわたる取材が許可されたそうです。ただし、その映画化の条件は、人物の名前は変え、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこととしました。
そんな契約のもと、リヒターの多種多様な作品シリーズのひとつである、精密に模写した写真のイメージを微妙にぼかす、「フォト・ペインティング」が誕生するまでの過程がドラマティックに描かれています。
映画作品からドイツの歴史と美術の潮流が知れる!
©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
作中では、ヒトラーの時代から、東ドイツの共産主義、ベルリンの壁建設によるドイツの歴史が学べるとともに、退廃芸術展から、社会主義リアリズム、ドュッセルドルフの前衛芸術という美術の潮流がわかるのもポイント。
激動の時代に翻弄された主人公の成長に合わせて、歴史と美術が自然と学べるだけでなく、今の世にも大きな問題となっている戦争をはじめ、表現の自由や優生思想などのテーマがぎっしり詰まっています。
「歴史やアート…敷居が高いかも…」と一見すると思ってしまいますが、3時間が短く感じられるほど物語に引き込まれる映画作品です。ぜひ本作品をご覧になっていただくとともに、東京国立近代美術館で2022年10月2日まで開催中の『ゲルハルト・リヒター展』にも足を運び、リヒターの人生に思いを馳せながら数々の展示作品を鑑賞してみてください。
▼関連記事
【本当に難解?】ゲルハルト・リヒター展をより楽しむための見どころ紹介
https://irohani.art/event/8190/
文:新麻記子
映画『ある画家の数奇な運命』
2022年7月29日(金)TOHOシネマズ 日本橋にて期間限定上映
出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、オリヴァー・マスッチ、ザスキア・ローゼンダール
脚本・監督・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
原題:WERK OHNE AUTOR/英題:NEVER LOOL AWAY/2018年/ドイツ/ドイツ語/189分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語字幕:吉川美奈子
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式HP:https://www.neverlookaway-movie.jp/
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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。
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