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2022.8.15
50点以上が初公開!名品もりだくさんの『開館3周年記念 福美の名品展』
京都の福田美術館は、2022年10月1日に開館3周年を迎えます。これを記念した展覧会『開館3周年記念 福美の名品展』が開幕しました。
福田美術館といえば、京都画壇の竹内栖鳳や上村松園、東京画壇の横山大観や菱田春草などの名品を所蔵し、日本画好きなら知らない人はいないほど人気のある美術館です。
今回は前期・後期合わせて97点が展示され、そのうちなんと50点以上が初公開とのこと。ほかにも、展示機会の少なかった作品が数多く展示されています。これまでにも数々の名品を展示してきた同館ですが、まだまだ展示機会の無かった名品があったのですね……!
特に、昭和時代以降に活躍した加山又造や杉山寧らの作品が充実していました。この記事では、本展の見どころを美術ライターの明菜が紹介していきます。
杉山寧の大作《慈悲光》が35年ぶりに公開!
杉山寧(すぎやま・やすし、1909-1993)は、東京で活動した日本画の画家です。通常、日本画では紙や絹に絵を描くのですが、杉山は油絵に使われるキャンバスを使用しました。岩絵具や砂を用いて厚塗りし、ザラザラした質感の画風を確立しました。
本展で35年ぶりに公開となる《慈悲光》は、ユニークな画風を確立する前の、若い頃に描かれた作品です。福田美術館が所蔵する額装の作品の中でもっとも大きなサイズという大作です。
本作には、奈良県の室生寺の十一面観音像と十二神将が描かれています。杉山は見たままを写生するだけでなく、霊的なものまで表現しようと意識したそうです。
実際には飛んでいなかった蛾も描き込んでおり、作中に流れる空気を非現実のものにしようとする工夫が見られます。
本作が展覧会の会場に展示されると、自分の意図が十分に表れていないことに気づき、これをきっかけに杉山は表現方法を見直したそうです。のちの画風も、《慈悲光》が無ければ生まれなかったかもしれません。
執拗なほど描き込まれた観音像と平坦な背景の対比などから、聖と俗を描き分けようとした意図を私は感じました。ただ、まだ自信を持って自分の画風とできていないぎこちなさがあり、本作は杉山が自分の描くべきものを見つけるきっかけになったのだと思います。
加山又造の名品が終結!「又造の部屋」
加山又造(かやま・またぞう、1927-2004)も日本画の画家です。昭和50年代には動物画シリーズ、60年代には江戸琳派風、70年代には裸婦、80年代には水墨画と画風や題材をおよそ10年ごとに変化させました。
パノラマギャラリーには加山の作品だけが集められ、本展の第三章として展示されています。画風の変遷を追いかけられる内容となっています。
加山作品の面白いところは、主題が強く印象に残ることです。何のどんな様子を伝えようとしているのか、観る人は一瞬で把握できるのです。一枚の絵画で伝えたい物語を加山自身がはっきり理解していて、それを描き下ろせるだけの能力があったのだな、と感じます。
主題を引き立たせるための大胆な構図は、たしかに琳派と共通しています。少ない要素を破綻しないギリギリのバランスで配置しているため、観る人に強い印象が残るのではないでしょうか。
【まとめ】まだまだある!福美の名品
ほかにも、緑が美しい東山魁夷の《静けき朝》、ミステリアスな魔力を感じる高山辰雄の《若い人》、インド風のデザインが目を引く秋野不矩の《瓶花》など、必見の名品が数多く展示されています。
初公開の作品が多く、福田美術館に通い慣れている人でも、初めて出会う作品がいくつもあるはずです。展示機会の限られる貴重な作品に、会いに行ってみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
開館3周年記念 福美の名品展
会期:2022年7月16日(土)~ 10月10日(月・祝)
○前期:7月16日(土)~8月29日(月)
○後期:8月31日(水)~10月10日(月・祝)
開館時間:10:00〜17:00(最終入館 16:30)
休館日:火曜
https://fukuda-art-museum.jp/exhibition/202204102290
画像ギャラリー
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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