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2023.4.21
「優等生」ラファエロの生涯とは?ルネサンス巨匠の作品を楽しむための基本知識
ラファエロ・サンティ(1483年4月6日 - 1520年4月6日)はミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチに並んでルネッサンスの3大巨匠に数えられるイタリア画家です。ラファエロの作品は、バランスと調和を大切にしたスタイルに特徴があります。
ラファエロは37歳という若さで亡くなったものの、のちの芸術界に大きな影響を与えた天才でした。この記事では、そんなラファエロの生涯を重要なポイントに分けて紹介します。
ラファエロの生涯①:若くして才能を認められた天才
ラファエロの自画像, Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロは中央イタリアのウルビーノという街で画家をしていた父のもとで育ちました。幼い頃から芸術の才能を示したものの、8歳のときに母親を、11歳のときに父親を亡くし、ラファエロは孤児になってしまいます。
10代のラファエロのキャリアについてはウンブリア(中央イタリア)の画家ペルジーノに弟子入りしていた*1といわれますが、史料が少なく確かではありません。少なくとも1500年頃からはペルジーノの助手として芸術活動にあたっており、初期のラファエロの作品には明確に師匠の特徴が受け継がれています。
ラファエロ『聖母の結婚』,1500年初期, Public domain, via Wikimedia Commons
20歳前後のラファエロは、ペルージャとシエナとフィレンツェを往来する生活だったようです。とくに1504年頃からフィレンツェに長期的に滞在した際には、同じく3大巨匠の1人であるレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を強く受けたと言われます。
実際、若年期のラファエロの作品はペルジーノやピントゥリッキオのように静的で落ち着いた画風が特徴ですが、20代前半以降から解剖学に基づく人間らしい自然な体勢を描く作品が増えます。
ラファエロの生涯②:「古典主義」は優等生的?
ラファエロ『美しき女庭師』のための習作 Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロの作品は、このようにさまざまな芸術家の影響を受けながら少しずつ変化していきます。そんな中でもラファエロの作品は、一般的に「古典主義」と称されることが多く、ミケランジェロやレオナルドに比べると優等生的な要素があります。
ミケランジェロ『天地創造』, circa 1511, Public domain, via Wikimedia Commons
レオナルド・ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』, Public domain, via Wikimedia Commons
ルネッサンスの最も重要なコンセプトは、古典復興であり、古代の調和的で写実的な芸術に立ち戻ろうとする思想でした。しかし、当然ルネッサンスの芸術は古代の写実主義芸術をそのまま模倣しただけでなく、芸術家ごとの独自の新しい解釈が含まれています。
ラファエロはルネッサンスの他の同世代の芸術家と比べても特出したバランス感覚があり、後世の画家からは「古典主義」の代名詞とみなされています。とくにダイナミズムを表現しようとした挑戦的なミケランジェロの作品と比べると、優美で安定的なラファエロの作品はまさに「優等生的」にうつるでしょう。
ラファエロの生涯③:芸術界に残した作品以外の功績
ラファエロ『シビュラたち』, Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロとミケランジェロは同時代に活躍した偉大な天才として列挙されることが多いですが、この2人には作風以外にも大きな違いがあります。
ミケランジェロは他の人の手を借りることを嫌い、システィーナ礼拝堂のような大きな作品のときでさえ1人で完成させたほどでした。一方、ラファエロは弟子たちに仕事を分散し、効率的に依頼を遂行する仕組みを構築していました。
ラファエロには自身の芸術作品による影響以外に、このような「工房」の仕組みを一般化し確立した功績があります。ローマ出身画家のジュリオ・ロマーノに代表されるような優秀な弟子を抱え、最大50人規模の大きな工房になったとも言われます。
実際、この工房の組織を活用して構図や下絵をラファエロが手掛け、作業を弟子に任せることもありました。協調的で効率的な工房によって制作された作品の中には、実際に作品を描いたのがラファエロかどうか見分けられないことも珍しくありません。それほど、ラファエロの工房は組織として統率がとれていたのです。
このおかげでラファエロは37歳という若さで亡くなっているにもかかわらず、たくさんの重要な作品を世に残すことができました。
ラファエロの生涯④:作品を楽しむためのコツ
ラファエロ『キリストの埋葬』, Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロの作品を鑑賞する際は、まず全体のバランスに注目しましょう。全体的な構図は、乱れることなく全方位に調和の取れた安定性があります。
同時代の画家ミケランジェロのようなダイナミズムや、レオナルドのようなミステリアスさではなく、ラファエロは理想的で写実的な「美しさ」の追求に徹したのです。
ラファエロの絵画を「優等生」たらしめるものは、構図だけではありません。複数人が登場するような作品であっても、1人‘1人の体勢が安定的で自然になるよう配置されています。ラファエロは美術史上で最も多くのデッサンを残した画家としても知られ、徹底的な人物像の研究を大切にしました。
情景の一部を切り取ったような自然な構図でありながら、決して調和を失わないラファエロの「バランス感覚」を感じることが、彼の作品鑑賞を楽しむ最大のコツです。
参考文献
*1『ルネサンス画人伝』 ジョルジョ・ヴァザーリ(平川祐弘・田中英道ほか訳注),白水社,1982年.
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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