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STUDY

2023.7.10

ドイツ・ルネッサンスの画家デューラーの人生とは?作品と見どころを紹介


16世紀に活躍したドイツ人のデューラーは、絵画以外にも版画でも大きな功績を残した画家です。ラファエロをはじめとした同世代のイタリア画家との交流や、ドイツ人文主義の知識を組み合わせて北方ルネッサンスの発展を支えました。

デューラーの自画像,I, Sailko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


デューラーの作品は、彼の豊かな人生経験から構築されています。この記事では、イタリア・ローマの大学院で美術史を学ぶ筆者がデューラーの人生、作品の特徴、見どころについて解説します。

北方ルネッサンスの立役者・デューラーの人生

デューラーの自画像,Albrecht Dürer, Public domain, via Wikimedia Commons


アルブレヒト・デューラー(1471-1528年)は絵画や版画など幅広いジャンルの作品を残した芸術家です。デューラーは金細工職人だった父から金細工やデッサンを学びました。

15歳にはとくにデッサンの才能を認められ、ニュルンベルクの芸術家の工房に弟子入りします。当時ニュルンベルクは印刷業や贅沢品の産業で栄え、地理的に比較的近い北イタリアとの交流もあった年でした。デューラーが版画、とくに木版画で非常に精度の高い作品を残せたのは、時代に版木切削工について学ぶ機会があり、木の構造を正しく理解していたからと言われます。

1494年から1495年にかけてデューラーは初めてイタリアに渡航し、当時のイタリア画家のジョヴァンニ・ベッリーニやマンテーニャの影響を受けました。帰国後はニュルンベルクに自分の工房を開き、北方的な絵画にイタリア要素をますます積極的に取り入れるようになりました。

その後デューラーは木版画以外にもエングレービング(凹版版画)の技術を身に着け、版画家とよりさらなる成功をおさめます。版画は1枚の版から多くの作品ができるため、絵画よりも拡散力があります。デューラーの名は版画を通してヨーロッパに広く広まり、芸術界の中心人物に上りつめました。

デューラーの作品の特徴は「細部へのこだわり」

『Wing of a European Roller』,Albrecht Dürer, Public domain, via Wikimedia Commons


デューラー作品の特徴は、強烈でドラマチックな雰囲気です。しかし、何よりもデューラーの作品の基礎を支えているのは徹底的な細部へのこだわりと精密さでしょう。

風景画や動物画など、独特な作品テーマを取り扱っていたデューラーは、そのなかで自然へのあくなき研究心を表明しています。デューラーは精度の高いデッサンを多く残したことでも知られ、解剖学や自然を熱心に研究していました。

北方の伝統でもある繊細で神経質なほどの細部への執着は、デッサンにも表れています。水彩画で描かれたデッサンはほかに類をみないほどの表現力で、なにも知らなければ16世紀初頭の作品とは到底思えない質の高さです。

デッサンの交換を通じてラファエロと交流していた形跡もあり、当時の芸術家の間ではデッサンを送り合う文化があったことが伺えます。

デューラーの作品の見どころ「精密すぎる版画」

『アダムとイヴ』銅版画,Jl FilpoC, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


デューラーの作品では、絵画はもちろんですが版画にぜひ注目しましょう。写真のない時代、版画は芸術家によって自分の力を宣伝するための強力な材料でもありました。

デューラーの木版画は、とくに目を見張る精巧さがあります。鉄の板に絵を彫り、その溝にインクを塗りこんで印刷するエングレービング(凹版技法)に対し、一般的に木版画は精密な図版を描きにくい技法です。木を彫って図版を生み出す木版画は、オーガニックな素材のもろさによる制約や、彫った線のゆらぎが発生しやすいためです。

しかしデューラーの木版画は、一見してエングレービングかと錯覚するほど、線にゆらぎがなく安定した実線が出ています。それだけでなく、木を使用する不安定さを感じさせない精密で繊細な構図は、デューラーの版画家としての底知れない才能を表しています。

デューラーはエングレービングでは木版画よりさらに精巧な図版に挑戦しており、作品の多くは人が手で彫ったとは思えないような精密さがあります。デューラーの絵画だけでなく、ぜひ版画作品にも目を向けてみてください。きっと驚きますよ!
以上、デューラーの人生、作品の特徴、見どころについてでした。

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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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