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STUDY

2023.10.4

永遠の都ローマ展:【バロック】を理解する3つのポイントを在住者が解説!

2023年9月16日(土)から12月10日(日)にかけて東京都美術館で開催される「永遠の都ローマ展」。

「永遠の都ローマ展」

この記事は、「永遠の都ローマ展」の開催にあわせ、唯一無二の都ローマを時代ごとに解説するシリーズ記事の第四弾です。バロックローマを理解するための3つのキーワードについて、現地ローマの大学院で美術史を専攻する筆者が詳しく解説します。

「永遠の都ローマ展」の詳細を知りたい方は、「【永遠の都ローマ展】カピトリーノ美術館から数々の名作が来日!」をどうぞ。
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永遠の都ローマ展【バロック①】:ベルニーニとボッロミーニ

『アポロとダフネ』,ベルニーニ,ボルゲーゼ美術館, Public domain, via Wikimedia Commons

ローマにおけるバロック芸術を避けては通れないのは、ベルニーニとボッロミーニという2人の天才の存在です。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680年)は、バロック期に活躍した彫刻家、建築家、画家です。「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と言われるほどに、ローマの一時代を築いた存在でした。

ベルニーニの彫刻作品のなかでもとくに有名な4つの作品は、いまでもローマのボルゲーゼ美術館に展示されています。大理石で作られているとは信じられないような精巧さは、制作から400年が経った今でも多くの人を魅了しています。

フランチェスコ・ボッロミーニ(1599-1667年)も、ベルニーニと同時代にイタリアで活躍した建築家です。ローマではサン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂やサンタニェーゼ聖堂の設計を手がけました。

サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂,ボッロミーニ,ローマ, Public domain, via Wikimedia Commons

古典主義的で優等生なベルニーニの建築と、幻想的で躍動感のあるボッロミーニの建築は、しばしばライバルとして比較されてきました。両者の作風の違いの分かりやすい例は、ローマのバルベリーニ宮にある階段でしょう。

バルベリーニ宮の階段,ベルニーニ,ローマ, Public domain, via Wikimedia Commons

バルベリーニ宮の階段,ボッロミーニ,ローマ, Public domain, via Wikimedia Commons

均整の取れたバランスで荘厳さがあるベルニーニの階段と、優雅でうねるようなボッロミーニの階段は、2人の芸術家の特徴がよく表れています。

どちらがより優れている、という単純な比較ではなく、バロック時代のローマはベルニーニとボッロミーニの2人の天才が切磋琢磨した場所でした。当時彼らが残した芸術の多くはいまでも荘厳に、優雅に、ローマの街を彩っています。

永遠の都ローマ展【バロック②】:カラヴァッジョ

『キリストの埋葬』,カラヴァッジョ,ヴァチカン美術館 , Public domain, via Wikimedia Commons

ベルニーニとボッロミーニがローマのバロック建築(彫刻)を牽引した芸術家だとすれば、バロック絵画における代表的な巨匠はカラヴァッジョでしょう。

カラヴァッジョはミラノ出身の画家ですが、ローマでも重要な作品を多く残しています。暴力に満ちた人生を送ったカラヴァッジョは、自らが犯した罪が原因でローマを逃亡するまで、教会や貴族のための作品を手掛けていました。

カラヴァッジョ作品のいくつかは、ベルニーニの彫刻の代表作と同じボルゲーゼ美術館に所蔵されています。さらにローマには、美術館に行かずともカラヴァッジョ作品を鑑賞できる場所がいくつもあるのです。

代表的なカラヴァッジョ作品の所蔵場所として、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会が挙げられます。この教会にはカラヴァッジョの聖マテオ3部作があり、無料で作品鑑賞が可能です。

『聖マテオ3部作』,カラヴァッジョ,サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会, Public domain, via Wikimedia Commons

カラヴァッジョの強烈な明暗(キアロスクーロ)やダイナミックな構図で描かれる作品は、後世の芸術家に多大な影響を与えます。「カラヴァッジョ派」と呼ばれる芸術家の潮流が生まれ、多くの画家が暗い背景と強い光源を絵画の基盤としました。

ローマのバロック時代は、ベルニーニ、ボッロミーニ、カラヴァッジョを中心とした芸術家が、教会や有力貴族などの強大なパトロンとともに築いた時代でした。

永遠の都ローマ展【バロック③】:欧州中の芸術家の憧れの街

ローマの眺め , Public domain, via Wikimedia Commons

古代からの遺跡、ラファエロやミケランジェロなどの巨匠の作品など、ローマは当時の芸術家にとって夢のような存在でした。ローマを訪れたいと願う芸術家は絶えず、北方(フランドルやオランダ)では「ローマ留学経験の有無」が画家のステータスにかかわるほどだったそうです。

北方のバロック芸術を牽引した巨匠ルーベンスも、実はローマで数年間過ごした経験があります。公証人や美術収集家としての側面も持っていたルーベンスは、コネを活かしローマで重要な依頼をゲットするようになりました。

17世紀以降には、フランドルやオランダからローマにやってきた芸術家グループがゆるやかな連帯を築いたことが知られます。これらの芸術家グループはローマで古代遺跡の模写をしたり、巨匠の作品を学んだり、ときには依頼を受けることもありました。

外国人芸術家のローマ訪問は、ローマ芸術にも影響を与えます。この流れは、ローマの芸術の外国への拡散だけでなく、ローマにおける他文化の受け入れという双方向の関係性がありました。

当時のフランドルやオランダの絵画市場は、新興ブルジョワが購入できるような小さいサイズの作品が流行していました。作品テーマもこれまでの宗教主題だけに限定されず、風景画や日常生活の一場面も人気があったそうです。

ローマでも小さいサイズや自由なテーマの作品が作成されるようになり、ローマの芸術は次のステップへと進んでいきます。

ローマは古代ローマ文化や教皇主導のルネッサンスの2大基盤に支えられつつ、さらに他文化を受け入れることで発展を続けました。ローマが唯一無二の永遠の都と呼ばれるゆえんは、シンプルにみえて実は複雑なところもあるのですね。

『永遠の都ローマ展』について詳しく知りたい方は、こちらの記事「【永遠の都ローマ展】カピトリーノ美術館から数々の名作が来日!」をどうぞ。
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【写真8枚】永遠の都ローマ展:【バロック】を理解する3つのポイントを在住者が解説! を詳しく見る
はな

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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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