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2024.1.23

ミレイの『オフィーリア』はどんな作品?文学的背景と見どころを紹介!

『オフィーリア』は、1851~52年にイギリスの画家サー・ジョン・エヴェレット・ミレイがシェイクスピアの戯曲『ハムレット』の一説を描いた作品です。

『オフィーリア』は自然な背景描写や人物のはかなげな表情で注目を集めました。美しい『オフィーリア』ですが、作品のシーンには悲しい物語が隠されています。この記事では、ミレイの『オフィーリア』について、作品の文学的背景、特徴、見どころをわかりやすく解説します!

ミレイ『オフィーリア』の文学的背景

ミレイ『オフィーリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

ミレイの『オフィーリア』は、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』をモチーフにしています。ハムレットは1599年から1601年にシェイクスピアが手掛けた作品で、英国文学における最高峰の作品の1つです。


作品名の『オフィーリア』は、戯曲の登場人物であるオフィーリアに由来します。オフィーリアは主人公の王子ハムレットと隠れて恋人関係にありましたが、徐々に周囲から王子との身分違いの恋を反対されるようになりました。

しかしオフィーリアの父ポローニアスは、ハムレットの行動や言動を見ているうちに、オフィーリアへの恋心にハムレットが狂いかけていると考えるようになります。

一方前王の死をめぐる疑惑を抱えていたハムレットは疑心暗鬼に陥っており、母で王妃であるガートルードと密会している最中にポローニアス(オフィーリアの父)を殺していまいます。事実を知ったオフィーリアは悲しみで正気を失ってしまいました。

気がふれたオフィーリアは足場の悪い場所で花を摘んでいる際に川に転落します。オフィーリアの重いドレスはどんどん水を含みますが、オフィーリアは意に介さない様子で花輪を握りしめ、歌を口ずさみながら川底に沈んでいきました。オフィーリアの死は「自殺」と判断されます。

ミレイが描いたのは、オフィーリアの「自殺」シーン、今まさに川底に体を鎮めようとしている彼女の姿です。オフィーリアの死のシーンは芸術界でもしばしばテーマに取り上げられるほど、人気があります。

ミレイ『オフィーリア』の特徴

ミレイ『オフィーリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

ミレイ『オフィーリア』の特徴は、落ち着いた構図の中に描かれる狂気です。オフィーリアの死を描く芸術家は、ミレイと同じように悲しみと狂気のなかで美しく散りゆく1人の少女に幻想的な魅力を感じていたようです。


作品を一見すると、草むらにのんびりと寝転がっているような平和な印象を受けるかもしれません。しかしよく観察すれば、体のほとんどは川に沈み、川底は暗く深いことがわかります。


危機的状況にありながら、オフィーリアは静かな表情をしています。目は落ち着いて遠くを見つめ、口は少し開いています。歌を口ずさんでいるのでしょう。手は助かるために周囲の植物をつかむわけでもなく、左右に力なさげに開かれているのみです。


右手には、作りかけていた花輪らしきものが見えますが、花輪になるはずだった色とりどりの花は、川の流れに乗ってはらはらと散らばっていきます。背景を知らなければ「美しい」とさえ感じられるような異様な平穏は、作品シーンの狂気をより際立たせています。

ミレイ『オフィーリア』の見どころ

ミレイ『オフィーリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

ミレイ『オフィーリア』の見どころは、繊細で優雅な筆致です。ミレイは「ラファエル前派」と呼ばれる美術同盟に属しており、イタリアルネッサンスの巨匠ラファエロ以前の時代の芸術に立ち返ろうとする作風に特徴があります。

19世紀中ごろ当時の芸術アカデミーは、古典やルネッサンスを重視し、とくに規範的なラファエロの芸術を中心に芸術家を指導していました。ミレイを含む数人の若手芸術家はこの潮流に疑問を呈し、中世や初期ルネッサンスの繊細できめ細やかな作品を制作するようになります。

ラファエル前派が絵画技術で重視したのは自然の徹底的な観察と描写であり、これはラファエロ以前の後期ゴシック/初期ルネッサンスの芸術家に多い傾向の1つでした。『オフィーリア』のなかでも、水面に浮かんでながれゆく花びら、周辺の植物など、見れば見るほど細やかに描かれていることがわかります。


ミレイの『オフィーリア』を鑑賞する際は、作品のテーマと自然描写に目を向けると、面白い発見があるかもしれません。以上、ミレイの『オフィーリア』の特徴と見どころの解説でした!


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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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