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2024.1.29
モネ『印象、日の出』はどんな絵?時代背景と作品の特徴を解説
モネの『印象、日の出』は、パリで開催された「第1回印象派展」に出展された作品です。19世紀後半以降、モネやドガなど「印象派」を呼ばれる芸術家は、瞬間的な光の “印象” をとらえる作品を多く残しました。
『印象、日の出』は、印象派運動の呼称にインスピレーションを与えた作品です。この記事では、モネの『印象、日の出』の時代背景や作品の特徴、見どころをわかりやすく解説します!
モネ『印象、日の出』の時代背景
モネ『印象、日の出』, Public domain, via Wikimedia Commons
『印象、日の出』は1872年にクロード・モネが制作した作品です。2年後の1874年には、「第1回印象派展」に出展されたことでも知られます。
作品の主題となったのは、モネの故郷であるル・アーヴル港です。19世紀後半のフランスでは、絵画の中心主題に景色を据えることはまだ一般的ではありませんでした。当時のフランス芸術界では、「良い絵画=古典主義」の考えが根強かったためです。
歴史画や宗教画こそが高尚で価値のある芸術とみなされていた時代に、モネら印象派は景色や農村風景などを主題にした絵画を多く残しました。革新的な芸術のスタイルははじめ、フランス芸術界から嘲笑を受けます。
サロン・ド・パリ(審査に通った作品のみが展示される伝統的な展示会)では落選することも多く、モネらが自発的なグループ展「印象派展」を開催したのは、サロン以外の方法で作品を世の中に知ってもらう機会を創出するためでもありました。
「印象派」の呼称は、モネの『印象、日の出』からつけられたと言われます。当時、全体的にぼんやりとした『印象、日の出』の画風は理解されにくく、「印象派」の呼称には芸術家の「印象」を描いたにすぎない(=芸術的な価値が低い)という批判的な意味が込められていました。
モネ『印象、日の出』の特徴
モネ『印象、日の出』, Public domain, via Wikimedia Commons
『印象、日の出』の特徴は、奥に昇る太陽の光が周囲に広がっていく光の表現です。赤々とした太陽は、雲や水面に反射しながら辺りを照らします。
太陽の光が水平で強いため、照らされるものや人は暗い影とともに描かれていますね。遠くに見える港施設は淡い影、近くにある小舟は暗い影として表現することで、距離感を直感的に伝えています。
光の広がりや色を大切にした印象派の芸術家にとって、空と海の微妙な色味を表現することは非常に重要なポイントでした。実際、モネが『印象、日の出』のなかで表現している空間的な「光」は、水面に浮かぶ朝陽を見たことがある人の強烈な共感を生むことでしょう。
実は『印象、日の出』は、「日の出」ではなく「日の入り」を描いたのではないかとする議論がありました。1878年の競売カタログに『印象、日の入り』と記載されていたためです。しかし、制作時期にモネが滞在したとされるホテルの位置から背景に該当する位置に海を見ると、夕陽ではなく朝陽の方角であるとわかったそうです。
モネ『印象、日の出』の見どころ
モネ『印象、日の出』, Public domain, via Wikimedia Commons
モネの『印象、日の出』の見どころは、空の光の反射と水面の光の反射です。モネは水面に映る光に焦点を当てた作品を多く残しており、代表作『睡蓮』も水面を描いたものです。太陽は遠くから強烈なオレンジ色で周囲を照らしていますが、周辺に広がる色味は単純なオレンジではありません。
一般的な風景画では水平線は中央もしくは中央より下に置かれることが一般的ですが、『印象、日の出』においては、水平線が中央よりも高い位置に設定されています。そのため空部分よりも海部分の方が大きな範囲を占めており、きらきらした淡い感触の水面が太陽の存在感を引き立たせています。
空の景色は通常、海の水面に反射して同じ情景を映すものの、作中の空は比較的赤みの強い色味、反対に水面は水色がかった明るい色味が見えます。この作品の光源は朝陽であり、水平方向からの光(ほとんど真横から差す光)は、手前の雲にのみオレンジが反射しているためでしょう。
ゆらめく水面には、白で光の反射が描かれています。一見無計画に描かれたかのような大胆な筆のタッチは、「筆触分割」と呼ばれる印象派によく見られる技法です。「筆触分割」では絵具を混ぜてイメージする色味を作る伝統的な絵画技法と異なり、絵具を混ぜずにそのまま隣り合わせてカンバスに乗せることで色味を調整します。
つまり、「筆触分割」では緑をカンバスに表現したい場合に、事前にパレットで青と黄色を混ぜてから塗るのではなく、青と黄色を隣り合わせて塗ることで、鑑賞者にあたかも「緑」が描かれているように錯覚させます。一瞬のきらめきをカンバスにとらえた印象派の作品は、大胆に見えて実は緻密な技法の上に成り立っているのですね。
『印象、日の出』のことが少しでもよくわかれば幸いです。以上、モネの『印象、日の出』の歴史背景、特徴、見どころ紹介でした!
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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