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2024.2.12
キリスト教美術:聖母マリアとは?見分けるための目印と主な主題を紹介
聖母マリアは、西洋美術でもっとも頻繁に登場する人物の1人です。イエスの母であり、日本語では「処女マリア」「聖マリア」などと呼ばれることがあります。
聖母マリアは、幼子イエスを抱える「聖母子像」をはじめとした、さまざまな聖書のシーンに欠かせない存在です。この記事では、西洋美術(カトリック)の観点から、より深く聖母マリアを理解するための目印と、主な主題を3つ紹介します!
聖母マリアを見分ける目印(アトリビュート)
ラファエロ『聖母マリアの戴冠』, Public domain, via Wikimedia Commons
西洋美術の世界では、伝統的に人物を見分けるためのシンボルが存在します。とくにキリスト教美術においては「アトリビュート」と呼ばれるシンボルが非常に重視されてきました。
これは、キリスト教の宣教に美術が非常に大きな役割を果たしたことに関係しています。識字率が低い異民族に対する布教を積極的に行ってきた歴史から、キリスト教には文字がなくてもストーリーが伝わる構造が必要だったのです。
時代や地域によって芸術のスタイルが変わっても、「この人物が聖母マリアだ!」と誰もがわかるよう、アトリビュートが用いられました。聖母マリアのアトリビュートの例には、白いユリが挙げられます。白いユリは「純潔」の象徴であり、処女のまま神の子を宿した聖母の無原罪の宿りを暗示するものです。
また、青いマントと赤い服のコンビネーションも、聖母マリアを見分ける重要なヒントです。青いマントは「天の真実」赤い服は「神の慈愛」を意味します。
聖母マリアの衣服の青は、伝統的にラピスラズリという希少な鉱物の絵具が用いられました。聖母マリアは赤い服の上に青いマントを羽織っており、頭は布で覆っているケースが一般的です。(すべての図像があてはまるわけではありません)
『受胎告知』のなかの聖母マリア
エルグレコ『受胎告知』, Public domain, via Wikimedia Commons
『受胎告知』は、聖母マリアが主役として描かれる人気の主題です。中世、近世、近代を通じて長く愛された主題であり、フランジェリコやレオナルド・ダ・ヴィンチの描いた作品も有名です。
『受胎告知』における聖母マリアは、赤い服の上に青いマントをまとい、天から舞い降りた大天使ガブリエルからのお告げを受けます。処女であるにもかかわらず、神の子を妊娠している、と。
聖母マリアがこのシーンで見せる表情は、時代や画家によって様々です。えっと驚いた表情をしているものや、冷静に覚悟をもってお告げを受けるものもあります。
聖母マリアの知性を表現するために、本を読んでいる際に受胎告知を受ける構図も一般的です。通常大天使ガブリエルと聖母マリアの頭上には白い鳩(聖霊)が描かれ、このお告げが神からの言付けであると示すこともあります。
『東方三博士の礼拝』のなかの聖母マリア
4世紀, ローマ, 石棺『東方三博士の礼拝』, Public domain, via Wikimedia Commons
『東方三博士の礼拝』も、受胎告知同様、人気の高いキリスト教美術の主題です。イエスが誕生した際、神の子が生まれたというお告げを聞いた東方の3人の博士が、イエスに贈り物を持参するシーンです。
3人は、時代や地域によって博士であったり、魔法使いであったり、王であったりします。『東方三博士の礼拝』に共通している点は、3人がそれぞれ贈り物を手に持ち、聖母マリアと幼子イエスに献上することです。
初期キリスト教美術では、とくに人気のある主題でした。3人の博士は、お告げに従いベツレヘムの星を目指してはるばる旅をしたと言われます。そのため、『東方三博士の礼拝』の主題には、聖母子の頭上に星や、博士たちの後ろに移動用のラクダや馬が描かれることがあります。
ほとんどのケースでは、幼子イエスは聖母マリアの膝の上に座り、贈り物を受け取っています。『受胎告知』同様、広い時代・地域で制作された主題でありながら、いずれも厳かな雰囲気のなかで聖母マリアが優しく幼子イエスを抱える構図が一般的です。父であるヨゼフが近くで寄り添っているケースもあります。
『イエスの磔刑(受難)』のなかの聖母マリア
アンドレア・マンテーニャ『磔刑』, Public domain, via Wikimedia Commons
『イエスの磔刑(受難)』は、キリスト教美術において重要かつ繊細な主題です。神の子イエスが人類を原罪から救うため、身代わりに磔刑になったとされます。このシーンにも聖母マリアは登場することが多く、主題を構成する重要な要素の1つです。
聖母マリアは『イエスの磔刑』のシーンでも、ほかの主題同様赤い服に青いマントを羽織っています。後期中世以降にはとくに、青ざめたり気絶したりする表現が多く、愛する息子の壮絶な最期を受け止めきれない悲痛な姿が描かれます。『イエスの磔刑』のあとのシーンである『キリスト降架』でも、同様に悲しみに暮れる表情が特徴的です。
聖母マリアは、「神の子」であるイエスを大切にしたというより、自分の息子を生涯愛し続けた優しい母親としてキリスト教美術に登場します。聖母マリアを作中に見つけたときは、イエスに向けられた視線や態度に注目するとより鑑賞が楽しくなるかもしれませんね。
以上、西洋美術のなかの聖母マリアについてでした!
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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