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STUDY

2024.2.16

キリスト教美術:聖ペトロとは?見分ける目印と主な主題を紹介

聖ペトロは、十二使徒のなかでももっとも重要な聖人の1人です。とくにカトリックにおいては「初代教皇」であり、天国への鍵を受け取った存在として認識されています。

イエスの最初の弟子・聖ペトロは、美術にどう描かれるのでしょうか。この記事では、西洋美術(カトリック)の観点から、聖ペトロを理解するための目印と、主な主題を紹介します!

聖ペトロの目印:白い髪と鍵

Saint Peter by Arnolfo di Cambio, Public domain, via Wikimedia Commons

聖ペトロは伝統的に白い髪と白いひげで描かれます。この伝統は初期キリスト教時代から続いており、使徒のなかでも重要で貫録がある存在です。聖ペトロは湖で弟・アンデレと魚を釣っている際にイエスに声をかけられ、イエスの最初の弟子となりました。


聖ペトロのもっとも重要なアトリビュート(目印となるシンボル)は「鍵」です。聖書によれば聖ペトロはイエスから天国への鍵を受け取ったと言われます。そのため、絵画や彫刻に登場する際の聖ペトロは鍵を手に持っていることが一般的です。

ペルジーノ『聖ペテロへの天国の鍵の授与』, Public domain, via Wikimedia Commons

聖ペトロはローマ・カトリックの初代教皇であり、教皇は代々この「鍵」を引き継いでいるとされています。教皇のシンボルには鍵が含まれているのは、この伝統のためです。

バチカン市国のエンブレム, Public domain, via Wikimedia Commons

バチカン市国にあるサン・ピエトロ大聖堂(イタリア語で聖ペトロの意)は、ローマで殉教した聖ペトロの遺体埋葬地の上に建てられたと言われています。

聖ペトロの磔刑はさかさま?

カラヴァッジョ『聖ペトロの逆さ十字』, Public domain, via Wikimedia Commons

聖ペトロは同時代の多くの聖人と同様、殉教(信仰のために命を落とすこと)しています。ローマ帝国ではキリスト教への迫害が激しく、宣教活動を行う信徒に対しては信仰を捨てるか処刑されるかの選択を迫るケースも珍しくありませんでした。


聖ペトロも一時は迫害の激化したローマから去ろうとしますが、アッピア街道沿いでイエスの聖霊に出会い感化され、殉教を覚悟のうえローマに戻ったと言われます。

聖ペトロは十字架刑に処される際、主イエスと同じ処刑法は自分には恐れ多いと考え、逆さ十字にかけるよう処刑人に頼みました。芸術作品のなかに頭を下にして逆さまに十字架にかけられている聖人がいれば、それは聖ペトロです。

主題『聖ペトロの否認』の解説

カラヴァッジョ『聖ペトロの否認』, Public domain, via Wikimedia Commons

『聖ペトロの否認』は、初期キリスト教時代から人気のあった芸術主題です。主題は、福音書のなかでももっとも重要な、イエスの受難のなかに登場します。


イエスは、聖ペトロに対し「今日、鶏が鳴く前に、あなたは3度わたしを知らないと言うだろう」と予言します。聖ペトロは当然、そんなことはありえないと否定しました。

イエスが捕縛され裁判に連れていかれた際、聖ペトロは焚火の前で召使の女性にイエスの仲間であることを指摘されます。聖ペトロはイエスを知らないと答えて捕縛を逃れたものの、さらにほかに2人から同様の指摘を受け、知らないと答え続けました。

聖ペトロはイエスの予告の意味を理解した際、激しく泣いたと言われます。初期キリスト教の主題では予告の場面で、イエスと聖ペトロと鶏が描かれることが一般的です。近世以降ではむしろ聖ペトロが「知らない」と返答するシーンに注目した作品が多く、レンブラントやカラヴァッジョなどの巨匠も主題に選んでいます。

聖ペトロは重要な聖人でありながら、「イエスを知らない」と答えたり、迫害を逃れてローマを去ろうとしたり、人間らしい弱さを兼ね備えた人物でもあります。宗教画を鑑賞する際は、ぜひそんな聖ペトロに注目してみてくださいね。


以上、聖ペトロの目印と主題についての解説でした!

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はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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