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2024.4.24
因縁のライバル?2人の天才ベルニーニとボッロミーニの芸術を解説
イタリア・バロックを彩った2人の天才・ベルニーニとボッロミーニは、同時期に活躍した芸術家です。1つしか歳の違わない彼らの関係は芸術の歴史において、しばしば面白おかしく「ライバル」として描かれることがあります。
ベルニーニとボッロミーニはローマを中心にさまざまな建築を残しました。切磋琢磨しながらそれぞれが追求した芸術とは?この記事では、ローマ在住者がベルニーニとボッロミーニのライバル関係と、2人の作品を紹介します!
イタリア・バロック2人の天才:ベルニーニとボッロミーニ
イタリアのバロック時代を代表する芸術家であるベルニーニ(1598-1680年)とボッロミーニ(1599-1667年)は1つしか歳の変わらない同世代としてこの世に生を受けました。
ベルニーニは子供のころから、同じく彫刻家である父の仕事の都合で芸術家として恵まれた環境に身をおいてきました。幼くしてローマのボルゲーゼ枢機卿に才能を認められ、彫刻家として確実なキャリアを作り上げていきます。
「ベルニーニは ローマ のために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」―――この有名な格言からわかるほど、ベルニーニがローマにもたらした功績は大きく、また当時のローマの芸術的な土壌には彼の才能を最大限に活かせる豊かさがありました。
一方ボッロミーニも、建築業を営んでいた父の影響を受け、若いころから石工としての修行を積みます。ベルニーニほどに恵まれていたわけではないものの、比較的早年から才能を認められていました。
北部出身のボッロミーニは、20歳前後で故郷を離れ、巡礼者のような方法でローマにたどり着いたと言われます。こうして、すでに芸術家として名声を手にしていた1つ年上のベルニーニとローマで出会うことになるのです。
2人は1620年代のローマのサン・ピエトロ大聖堂の再建事業で、ともに仕事をしていました。ボッロミーニはベルニーニの指示のもとでサン・ピエトロのバルダッキーノ*完成を手伝いますが、ここで2人の天才はそりが合わずに仲たがいを起こしたと言われています。
*バルダッキーノ:主祭壇に置かれる祠のような小さな建築物。サン・ピエトロ大聖堂のバルダッキーノはベルニーニの代表作の1つであり、ローマの美術史のコンテクストでは伝統的に、一般名詞としてだけではなく「ベルニーニのバルダッキーノ」の意味で固有名詞としても用いられます。
活動的なベルニーニと内省的なボッロミーニ
Baldacchino di San Pietro, G L BerniniPublic domain, via Wikimedia Commons
サン・ピエトロ大聖堂の再建事業におけるベルニーニとボッロミーニの仲たがいは、彼らの性格があまりに異なっていたためかもしれません。ベルニーニは活動的で外交的な性格だったといわれ、ボッロミーニは反対に内省的で思慮深い性格だったといわれています。
ベルニーニはボルゲーゼ家の後見を中心に、ローマで幅広いパトロンを獲得して活躍の場を広げました。とくに文化・芸術庇護者であった教皇ウルバヌス8世はベルニーニに多くの作品を依頼しており、サン・ピエトロ大聖堂の再建はその仕事の1つです。
ボッロミーニはベルニーニほど多くのパトロンがいたわけではありませんでしたが、それでもウルバヌス8世のあとの教皇、インノケンティウス10世は、ボッロミーニの作品を高く評価しました。ローマの四大教会の1つであるサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂の再建は、インノケンティウス10世の依頼によりボッロミーニが担当しました。
続くアレクサンデル7世は再びベルニーニ贔屓の教皇で、ローマのサンタ・マリア・デル・ポポロ教会内のキージ家礼拝堂内の彫刻『ダニエルとハバククと天使』などをベルニーニに依頼しています。
2人の天才ベルニーニとボッロミーニは、ローマにおける最大のパトロンである歴代の教皇からの仕事を請け負うことで多くの作品を残してきました。このような状況下において、2人が「ライバル」として仕事を取り合うような関係性になっていったことは、想像に難くないでしょう。
ベルニーニとボッロミーニの対照的な作品の特徴
彼らの2人の作品は誰の目から見ても明らかなほどに異なる性質を持っており、その点からも「ライバル」として対比されることは自然な流れでした。ベルニーニは彫刻家の側面も持っていましたが、ボッロミーニは基本的には建築家としてのみ活躍していたため、建築作品で比較してみましょう。
荘厳でずっしりとしたベルニーニの建築作品は、権威を象徴する重厚感が特徴です。一方ボッロミーニの作品は流動的な印象があり、今にも動き出しそうな不安定さがあります。
2人の芸術の違いを理解するために最適な例は、バルベリーニ宮殿(現在は国立美術館)の階段です。正面入り口向かって左の階段はベルニーニが、右の階段はボッロミーニが設計したことで知られています。
ベルニーニの階段が荘厳で落ち着いた作りであるのに対し、ボッロミーニの階段は優雅で躍動的な構造ですね。いずれの階段も国立美術館を訪れる人が実際に通ることができ、2人の天才の作品を文字通り肌で感じることができます。
巨匠ベルニーニとボッロミーニは、互いに分かり合えない部分がありつつも、「ライバル」として切磋琢磨しながらイタリア・バロックの一時代を作っていきました。背景を知ると、作品がより面白く見えますね。以上、因縁のライバル(?)、ベルニーニとボッロミーニについてでした!
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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