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2021.11.30
ビザンツ様式とは?歴史的背景と、作品の特徴・見どころを解説!
西洋の美術を見ていると、作品の「様式」についての解説を目にすることがあります。
古代ギリシア、古代ローマ、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス…など、時代や地域、美術のスタイルに合わせていくつもの様式が存在しています。
美術好きの方なら、「ビザンツ様式」という言葉も耳にしたことがあるかもしれません。
この記事では、「ビザンツ様式」がどのような歴史背景で生まれたのか、どんな特徴があるのか、どう見れば楽しめるのかについて解説します。
ビザンツ様式ってそもそもなに?
ハギア・ソフィア大聖堂にあるモザイク画Till Niermann, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
「ビザンツ」という言葉はそもそも、ビザンツ帝国に由来する言葉です。
ビザンツ帝国は、古代ローマ帝国が東西分裂した際に、東ローマ帝国としてコンスタンティノープル(現在のトルコ・イスタンブール)を首都として成立しました。
現在のフランスやイタリア、ドイツなどを含む西ヨーロッパ世界では、4世紀には西ローマ帝国は滅亡してしまったのに対し、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)は15世紀末まで存続します。
そんなビザンツ帝国の中で4~8世紀に発展した美術を指して、「ビザンツ様式」と呼ばれます。
長い中世を乗り越えて、古代ローマの美術様式の伝統を残しつつ新たな様式として確立していったのが、このビザンツ様式なのです。
ビザンツ様式の特徴
スルタンアフメト・モスク(世界遺産)Moonik, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
ビザンツ様式の特徴は、「ドーム型の屋根」と「モザイク画」です。
建築としての「ビザンツ様式」は、教会などの天井部分が丸いドーム型になっているという特徴があります。
トルコの首都イスタンブールにある「ハギア・ソフィア大聖堂」は、このドーム型の屋根の代表例です。
石で作られた巨大なドームの天井を支えるためには、側面から壁をサポートしたり、重さを分散したり、高度な技術が必要になります。
古代ローマから継承したこれらの技術を駆使して造られたドームの内部には、モザイク画やフレスコ画などで装飾が施されているのが一般的です。
サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂にあるモザイク画Basilica of Sant'Apollinare Nuovo, Public domain, via Wikimedia Commons
この「モザイク画」という装飾方法は、ビザンツ様式のもう一つの特徴でもあります。
モザイク画とは、絵具などを使って絵を直接描くのではなく、鉱石など色のついた小さな石や貝殻を埋め込んで絵を構成する手法です。
モザイク画は物質を埋め込んでいるために退色することが少なく、古い時代のものでも比較的保存されやすいという特徴があります。
ビザンツ様式を楽しむ方法
ハギア・ソフィア大聖堂(内部)Maksym Kozlenko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ビザンツ様式の特徴でもある「モザイク画」は、先述したように色のついた石の組み合わせで構成されています。
遠くから見た際の印象と近づいたときの印象が大きく異なるというのがモザイク画の面白い特徴です。
そのため、まずは離れて全体像を把握してから、近づいてディテールを見ることで、作品の奥深さをより一層感じることができます。
フレスコ画などのように繊細な色彩や陰影ではなく、はっきりとした構図で作られるモザイク画では、描かれている聖人のまなざしの力強さに驚かされます。
ビザンツ様式の美術を見る際には、ぜひ遠くからと近くからの両方の視点で楽しんでみてくださいね。

はな
3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経て2021年秋よりイタリアの大学で美術史修士課程に進学予定。フリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経て2021年秋よりイタリアの大学で美術史修士課程に進学予定。フリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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