STUDY
2022.2.2
レトロかわいい“ピクセルアート”がアツい!ドット絵の歴史、注目クリエイター紹介
イラストレーションの表現手法で注目を浴びている「ピクセルアート(Pixel Art)」。日本だと「ドット絵」の呼び名のほうが馴染み深い方が多いでしょうか。もともとはテレビゲームで使われたグラフィック表現でしたが、イラストレーションのジャンルとしてさらなる進化を遂げています。気になる最近のピクセルアート事情とピクセルアーティストをご紹介します。
目次
ピクセルアートの歴史 ゲームグラフィックからNFTまで
Photo by SIMON LEE on Unsplash
「ピクセルアート」とは、その名の通りピクセル(ドット、デジタル画像の最小単位)で描かれた絵のことです。日本では「ドット絵」とも呼ばれています。
テレビゲームが誕生したころ、当時のテクノロジーでは表示できる解像度や色数に厳しい制限がありました。そのため、ピクセルの配置を工夫して色彩の幅を表現したり、隙間を持たせて濃淡を表現したり、制限の中でいかに多くを表すかの試行錯誤がピクセルアートをどんどん進化させていきました。
3Dポリゴンが登場するまでのゲームグラフィックのほとんどはドット絵で制作されています。
90年代後半から、テレビゲーム特有の描画手法だったドット絵を芸術やイラストレーションに応用させるクリエイターが続々登場します。中でも特に有名なのは1997年にスタートした『eBoy』というピクセルアートクリエイターユニット。各国の都市を描いたカラフルな作品に見覚えのある人も多いと思います。現在に至るまで、アートとしての展示や販売だけではなく、ナイキやホンダ、ルイヴィトンといった有名な企業とコラボレーションしたり幅広く活躍しています。
ゲームグラフィックがどんどんハイクオリティになる一方で、スマートフォンと共に育った世代にとってドット絵は「レトロかわいい」象徴のひとつになっているようです。日本でもイラストレーションとしてのドット絵は大変人気があり、イベントの開催やイラスト集の発売もされ、界隈は大変盛り上がっています。『UNDERTALE』など、あえてドット絵を使ったゲームが大ヒットしたり、ゲーム業界でも再度日の目を浴びています。
▼大人気のインディーゲームUNDERTALEは昔懐かしいレトログラフィック
▼ピクセルアートイベント「SHIPUYA PIXEL ART」
そして2020年代、NFTの登場で新たな風が吹いているピクセルアート界隈。高額取引で一気に名前が知られた『CryptoPunks(クリプトパンク)』を筆頭に、多くのピクセルアート作品が取引されています。現代美術家の村上隆も自身のトレードマークであるお花の作品をドット絵化させたものをNFTとして発表しました。一般的に想像する「デジタルっぽさ」を持つピクセルアートは、シリーズ化もしやすくNFTと相性がとても良いようです。
▼CryptoPunks
▼ 村上隆が初めて発表したNFT作品
国内外の注目ピクセルアーティスト
○ eBoy
ピクセルアートの草分け的存在であるクリエイターユニット・eBoy。クォータービューで描かれる都市のイラストが彼らの代表的作品です。世界中の有名ブランドの広告に起用され、90年代にデビューしてからいままで変わらず人気があります。
○ 8pxl
tea glass pixel art ✨ pic.twitter.com/n9sqEJ1SPy
— Jubilee ❣️ (@16pxl) December 17, 2021
ピクセルアート界隈ではめずらしく、静物画を描く作家です。ピンクや水色のファンシーな色合いが気持ちよく、Twitterに投稿された作品には毎回数万リツイートが。今後さらなる活躍が期待されるピクセルアーティストのひとりです。
○ waneella
ゴチャっとした街並みを切り取った作品を作る作家です。建物から伸びたパイプや室外機、ネオンや看板などの要素が敷き詰められたフューチャーレトロな情景が世界中を魅了しています。イラストの一部がアニメーションになっているものもあり、ずっと見ていても飽きないデジタル作品です。
○ Ban8ku
日本人ピクセルアーティストのBan8ku(ばんぱく)さん。ビビッドな水色や紫など絶妙なニュアンスの色使いや、最低限のドットで描かれるモチーフはパッと見て「Ban8kuさんの作品だ!」とわかるほどの個性があります。ミュージシャンやVtuberなど、幅広くコラボレーションしており、いま日本を代表するピクセルアート作家のひとりです。
○ ヘルミッペ
モノクロやコントラストの高い色を巧みに使ったハイセンスなピクセルアートを発表している日本の作家です。陰影や濃淡を彩色ではなく、ドットの密度で表現するストイックな画風が特徴です。ひとつの絵で大きさの違うドットを使うなど、制限の中での新しい表現に常に挑戦しています。
ピクセルアートブームのさらなる加速に期待!
国内外で大注目のピクセルアート。NFTやゲームでの人気の高まりもあり、最高潮の盛り上がりを見せています。ピクセルの制限を個性として上手く使うアーティストが今後も増えるのではないでしょうか。ますます目が離せません!
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のじまありさ
1988年北海道生まれボストン育ち。マサチューセッツ州美術大学卒業。ゲーム系制作会社、クリエイター就職支援サービス運営会社、写真画廊などを経てフリーランスとして活動中。趣味は深夜ラジオ。
1988年北海道生まれボストン育ち。マサチューセッツ州美術大学卒業。ゲーム系制作会社、クリエイター就職支援サービス運営会社、写真画廊などを経てフリーランスとして活動中。趣味は深夜ラジオ。
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