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2022.2.8
何を見ればいい?主題『東方三博士の礼拝』を楽しむためのポイント3つ
西洋美術を鑑賞していると、キリスト教を中心とした宗教にまつわる主題の作品に出会うことがあります。
これらの主題の多くが新約聖書や旧約聖書に書かれた話を作品に反映したものが多く、背景知識がないと理解が難しいものもあります。
目次
see filename or category, Public domain, via Wikimedia Commons
『東方三博士の礼拝』は、数ある宗教主題の中でもたくさんの作品が残されているテーマです。
今回の記事では、『東方三博士の礼拝』の鑑賞を楽しむために注目するべきポイントについて、3つ紹介します。
注目ポイント①『東方三博士の礼拝』のストーリー
Gentile da Fabriano, Public domain, via Wikimedia Commons
『東方三博士の礼拝』は、「マタイ福音書」から引用された芸術主題です。
「マタイ福音書」によれば、聖母マリアがイエスを馬小屋で生んだ際、東から占星術学者がイエスのもとを訪れたと言います。
これらの学者は「マギ」とも呼ばれ、『マギの礼拝』という日本語訳を当てられる場合もあります。
彼らは、東方から「ユダヤ人の王が生まれたという星を見た」という理由から、はるばるベツレヘム(イエス・キリスト生誕の地)までやってきました。
ここでいう「ユダヤ人の王」はイエスを指し、目印となったこの星は「ベツレヘムの星」と呼ばれます。
クリスマス(キリストの誕生日)に、ツリーの頂点に星を飾るのはこの「ベツレヘムの星」に由来しているのです。
三博士は道中にヘロデ王を訪れ、「ユダヤ人の王が生まれた、どこにいるのか」と尋ね、ベツレヘムが預言書の中に言及されていたことを知りました。
反対にヘロデ王は、ユダヤの王イエス(自分の地位を揺るがす存在)の誕生を知り、国中の新生児を虐殺します。
これが、『嬰児虐殺』という宗教主題につながります。
一方、三博士は無事にイエスのもとにたどり着き、誕生のお祝いとして「乳香」「没薬」「黄金」の三つの贈り物を持参しました。
実際のところ「マタイ福音書」には占星術学者の正確な人数は書かれていませんが、この贈り物の数から三人というのが定着したと言われています。
注目ポイント②『東方三博士の礼拝』では、三人の風貌に注目
Albrecht Dürer, Public domain, via Wikimedia Commons
『東方三博士の礼拝』の主役ともいえるこの三人の博士(占星術学者)は作品によって様々な風貌で描かれています。
しかし、多くの作品ではヨーロッパ系、中東(アジア系)、アフリカ系とバラバラの容姿が採用されています。
聖書に明確な記載があるわけではないのに、不思議ですよね。
これは「全世界が救世主の降誕を祝っている」ということを表現するために、このような博士の容姿のバラエティを組み込んでいると言われています。
作品によっては博士の年齢層も幅広い場合もあります。
イエスに対して恭しく挨拶をする様子は、キリスト教の偉大な歴史の始まりを予感させる壮大さがあります。
これらの博士は一般的に豪華な装いで描かれることが多く、イエスの生まれた馬小屋の背景との対比にも注目です。
注目ポイント③『東方三博士の礼拝』の贈り物の習慣は現代にも
Sandro Botticelli, Public domain, via Wikimedia Commons
日本ではあまり馴染みのない『東方三博士の礼拝』ですが、ヨーロッパの一部の国では現代でも重要な宗教行事の1つです。
例えば、スペインでは1月6日『東方三博士の礼拝』をテーマにしたパレードなどが全国各地で開催されています。
スペインの子どもたちにとってはクリスマスではなく、この『東方三博士の礼拝』の日(1月6日)こそが、博士たちからプレゼントをもらえる日なのです。
聖書に書かれた内容が現代にも受け継がれていることを、この主題を通じて感じることができます。
主題『東方三博士の礼拝』と、子どもが贈り物を受け取る情景を重ねて考えてみると、一層馴染みやすくなりますね。
実は『東方三博士の礼拝』は馴染みやすい主題!
『東方三博士の礼拝』は、複雑な要素が絡まり合っているように見える主題なので、堅苦しく感じる方もいるかもしれません。
しかし、実際はテーマ自体はわかりやすく、また存在感のある三博士のおかげで識別しやすい主題でもあります。
『東方三博士の礼拝』を美術館などで目にした際は、「ストーリー」、「博士たちの風貌」、「現在まで受け継がれる贈り物の習慣」の三つに注目してくださいね。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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