STUDY
2022.4.19
【ルネッサンス画家】フィリッピーノ・リッピの作品紹介と楽しみ方解説
みなさんはルネッサンスの芸術家と言われて、誰を思い浮かべますか?
レオナルド・ダヴィンチ…ラファエロ…ミケランジェロ…現代でも「巨匠」と尊敬されるたくさんの芸術家の名前が浮かぶと思います。
目次
Sailko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
フィリッピーノ・リッピは、ルネッサンス初期の重要な画家の1人で、宗教画を中心に制作しました。
この記事ではイタリア美術史をローマで学ぶ現役大学院生の筆者が、フィリッピーノ・リッピの作風と、代表的な2作品の楽しみ方を解説します。
フィリッピーノ・リッピの人生と作風を解説!
Filippino Lippi, Public domain, via Wikimedia Commons
フィリッピーノ・リッピ(1457~1504年)は、フィレンツェを中心に活動したイタリア人画家です。
父は画家フィリッポ・リッピで、フィリッピーノ・リッピは幼い父から絵画を習って育ちました。
フィレンツェで芸術活動をしていた父の周りには、初期ルネッサンスの重要な芸術家たちが集まっていました。
フィリッピーノ・リッピは、そこで当時の最先端の絵画技法や、ヒューマニストの思想に触れてきたと言われます。
兄弟子であるボッティチェッリの影響を大きく受け、トスカーナの伝統的な細密な画風が特徴的です。
1488年にはローマに移り古代の芸術に触れたことで、その後のフィリッピーノ・リッピの作品には古代芸術からの引用が多くみられるようになりました。
フィリッピーノ・リッピの代表作品①『サンタ・マリア・ノヴェラ聖堂』
Rufus46, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
フィリッピーノ・リッピがフィレンツェで手掛けた作品のうち最も重要なものの一つが、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の『ストロッツィ礼拝堂』です。
礼拝堂向かって右側には『聖フィリポの生涯』『聖フィリポの殉教』、左側には『福音書記者ヨハネの生涯』『ドルシアナの復活』の4つのパートに分かれています。
どちらの作品の中でも、豊かな人物の描写に加え、背景の建造物が奥行きを表現しています。
これらは、ルネッサンスの「発明」の1つでもある遠近法を用いて描かれ、古典的な構造を持った建築です。
あたかも絵画の世界が現実に存在しているかのような印象を与える役割をもつ重要な要素を持っています。
それだけではなく、初期ルネッサンスの芸術家が古典芸術への丁寧な観察を行っていたことが、絵画を通して伝わってきますね。
フィリッピーノ・リッピの代表作品②『サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂』
Miguel Hermoso Cuesta, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ローマでフィリッピーノ・リッピが残したサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂の『カラファ礼拝堂』にも、同様に古代風の建築が描かれています。
正面上部の作品は『聖母マリアの昇天』、下部は『受胎告知』です。
向かって右側は『聖トマス・アクィナス』をテーマにしています。
カラファ礼拝堂の最大の特徴は、実際の建築物と海外に描かれた建築物の統合にあります。
フィリッピーノ・リッピは、遠近法を活用して見る人が空間の奥行きを錯覚するような仕組みを構築しました。
柱の上に描かれている繊細な模様は、当時のルネッサンス画家たちの間で流行していた「グロテスク」と呼ばれる装飾です。
フィリッピーノ・リッピの独特な感性と、視覚誘導への挑戦を感じることのできる作品です。
礼拝堂で見ることのできる画家フィリッピーノ・リッピ
フィリッピーノ・リッピはフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂やローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂のように、教会で作品を見ることのできる画家です。
古代芸術への熱心な観察が細密なトスカーナ風のタッチを通じて感じることができます。

画像ギャラリー
あわせて読みたい
-
STUDY
2025.04.30
「ミッケ!」をアートの視点で楽しむ。写真で表現する自由な遊びの世界
浜田夏実
-
STUDY
2025.04.28
女性画家ベルト・モリゾの軌跡 19世紀の印象派に刻んだ才能と家族愛
加藤 瞳
-
STUDY
2025.04.24
《富嶽三十六景》の場所はどこ?美術もおでかけも楽しくなる北斎の聖地10選
明菜
-
STUDY
2025.04.23
香川県・四国村ミウゼアムの歩き方─先人たちの暮らしに思いを巡らせながら、建築・アート・自然が響き合う場所をめぐる
はろるど
-
STUDY
2025.04.18
オスカー・ワイルドとオーブリー・ビアズリーの出会いと別れ。禁断の戯曲『サロメ』も詳しく紹介!
つくだゆき
-
STUDY
2025.04.17
『浮世絵現代』がトーハクで開催!国内外のアーティストが伝統の木版画に新たな命を吹き込む
はろるど
このライターの書いた記事
-
STUDY
2025.04.14
ドガ『ベレッリ家』はどんな絵?表情と構図から見えるメッセージとは
はな
-
STUDY
2025.03.28
ルノワール『ピアノに寄る少女たち』って?作品の魅力と注目ポイントを解説!
はな
-
STUDY
2025.03.06
ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏』はどんな絵?見どころを解説
はな
-
STUDY
2025.02.27
印象派の「風景画」の技法5つ解説!オルセー美術館の名作も紹介
はな
-
STUDY
2025.01.30
溶けた時計の意味とは?ダリ『記憶の固執』の面白さを3つのポイントで解説
はな
-
STUDY
2025.01.27
印象派は常に屋外で絵を描いた?光の重要性と伝統的画法への反発など理由解説
はな

はな
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
はなさんの記事一覧はこちら