STUDY
2022.7.13
【初心者向け!】どこを見ればいい?西洋絵画を楽しむ3つのポイント
美術館巡りは好きだけど、絵画のどんなところに注目したらいいかいまいちわからないと思ったことはありませんか?
Ulemas7, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
西洋美術と一言で言っても、年代も地域も範囲が広いのですべてを細かく理解するのは難しいですよね。
この記事では、ローマの大学院で美術史を専攻している筆者が、初心者が絵画鑑賞を楽しむために注目すべきポイントを紹介します。
絵画を楽しむポイント①:筆の動き
フィンセント・ファン・ゴッホ『カラスのいる麦畑』, Public domain, via Wikimedia Commons
絵画は基本的には筆を用いて作成されます。
そのため、絵画スタイルにもよりますが、基本的には近づいたときに筆のストロークを感じることができます。
このストロークをどのくらい残すかは、画家の好みや時代の潮流によって決まります。
サイズの大きい絵画の場合は特に、遠くから見られることを想定して制作されるため、大胆な筆の跡が残っていることがあります。
ぜひ、遠くから見るだけでなく、近づいてどんな筆跡があるかを感じてみてください。
印象派のようにストロークが前面に押し出されているような作風でなくでも、絵具の走りからどのように絵が描かれていったかを想像することができます。
光の陰影や服のたゆみなど、遠くから見たときとは違った視点で絵画を見ると、新しい発見がありますよ!
絵画を楽しむポイント②:光の表現
ラファエロ・サンティ『聖ペテロの放免』, Public domain, via Wikimedia Commons
光の表現は立体感のある絵画にするためにも重要なポイントの1つです。
ルネッサンス以降、特にリアルで自然な絵画にするために、どのように光と影を描くかが大きなテーマになっていました。
イタリア語の『キアロスクーロ』という言葉は「陰影」と言う意味で、バロック絵画の巨匠カラヴァッジョが活躍した17世紀以降に多く用いられてきました。
「光」といっても、「太陽光と火は違う反射を持つ」ということを発見し、絵画への投影を試みたのはラファエロでした。
ヴァチカン宮殿の壁に描かれたフレスコ画『聖ペテロの放免』では、ろうそくと月の光が警備兵の鎧に、それぞれ異なる色で反射しています。
絵画を見るときは、どの地点から、どんな光が、どの範囲に描かれているかに注目すると、楽しいかもしれません。
絵画を楽しむポイント③:背景
サンドロ・ボッティチェッリ『プリマヴェーラ』, Public domain, via Wikimedia Commons
絵画を鑑賞する際には、つい人物像に目がいってしまいますが、実は背景も重要な要素の1つです。
西欧における中世までの絵画は宗教画が大半であり、背景は一般的にシンプルな単色や幾何学模様でおおわれていました。
ルネッサンス期により写実的な絵画を目指し、背景のバリエーションがぐんと広がります。
特に、当時画期的な発見であった遠近法を活用した建築物を絵画に含めることが、フィレンツェの画家を中心に流行しました。
建築物や街の景観だけではなく、人物像の後ろに直接自然風景を描くこともありました。
ルネッサンス期の有名な作品として、ボッティチェッリの『プリマヴェーラ』には、500種類以上の植物、190種類ほどの花が描かれていると言われています。
ボッティチェッリは、これほどの精巧な自然への観察と表現力を持った画家だったということですね。
絵画の前に立つとつい人物にばかり目がいってしまいますが、ぜひ、背景にも目を向けてみてください。
きっと見えるものが変わってきますよ!
遠くから、近くから、観る!
美術館で絵画を鑑賞していると、つい遠くから作品を観るだけで満足してしまうことがあります。
全ての作品をじっくり見るのは難しいのですが、もし気に入った作品があったら、ぜひ近づいて観てみてください。
筆のタッチ、光の反射、背景描写…遠くからでは感じられなかったディテールを見つけることができるはずです。
これらのポイントを念頭に、美術館巡りを楽しんでくださいね!

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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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