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STUDY

2022.8.5

【北方ルネッサンス】イタリアとの違いは?絵画特徴と注目ポイント解説

「ルネッサンス」という言葉は、一般的にイタリアを中心に興った15世紀の古典復興運動を指します。
実は「ルネッサンス」はこの一度きりというわけではなく、様々な時代に様々な地域で発生しており、その1つが「北方ルネッサンス」です。

ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻像』, Public domain, via Wikimedia Commons

この記事では、ローマ大学院で美術史を専攻している筆者が、北方ルネッサンスについて詳しく解説していきます。

北方ルネッサンスの歴史・背景

フーベルト・ファン・エイク、ヤン・ファン・エイク『ヘントの祭壇画』, Public domain, via Wikimedia Commons

北方ルネッサンスは、フランドルを中心に栄えた古典復興運動を指すこと多い一方、広義には「イタリア以外の」ヨーロッパのルネッサンスを指す場合もあります。
イタリア国内では15世紀前半からルネッサンスの兆しがあったものの、北ヨーロッパにこの運動が普及したのは15世紀後半になってからです。
イタリア、特にローマにおけるルネッサンスが教皇による政治戦略的な要素を持っていたのに対し、北方ルネッサンスは宗教改革の潮流が大きな影響を与えました。

15世紀前半、北ヨーロッパにおけるローマ・カトリック権力は、度重なるペストの流行や技術革新、封建制の弱体化など多くの要因から失われていきました。
その結果自助による社会の維持が加速し、神だけでなく人間そのものに焦点を当てようという試みが生まれ、ルネッサンスの基盤でもある「ヒューマニズム」が浸透しました。
この頃に発明された活版印刷機も、より多くの人に迅速にルネッサンス思想が広まった大切な要因の1つです。

北方ルネッサンス絵画の発展

アルブレヒト・デューラー『Adoration of the Trinity』, Public domain, via Wikimedia Commons

代表的な北方ルネッサンス画家には、アルブレヒト・デューラーやヤン・ファン・エイク、ハンス・ホルバインなどが挙げられます。
特にアルブレヒト・デューラーは、イタリアを二度訪れた際にイタリアのルネッサンス絵画に大きな影響を受けたと言われます。

北方では15世紀以降も後期ゴシック様式の影響は強く残っていましたが、絵画様式においては高度に発達した独自の芸術とイタリア・ルネッサンスを組み合わせる動きが活発になりました。
イタリア・ルネッサンスの影響を受けつつも独自の発展を遂げたこの美術様式を、「北方ルネッサンス」と言います。

16世紀には、芸術家自らローマやイタリアの他の都市を訪れる「ロマニズム」という運動がおこるほどでした。
宗教中心的な考え方から脱出し、古典に焦点を当てるヒューマニズムの影響を受け、北方においてもギリシア神話などをモチーフにした作品が多く制作されました。
北方ルネッサンスにおいては、イタリア・ルネッサンスよりもさらに新しい主題へのチャレンジが進み、日常生活や風景画をテーマにする作品も制作されるようになりました。

北方ルネッサンスを楽しむコツ

ヤン・ファン・エイク『教会の聖母子』, Public domain, via Wikimedia Commons

北方ルネッサンスの最大の特徴は、なんといってもその緻密さにあります。
驚くほど細かい筆致で描かれるディテールは、まるでボールペンで描かれているかのように繊細です。
人物の細部はもちろんのこと、背景のちょっとした草木に至るまで狂気的ともいうべき細かさで描かれています。

イタリア・ルネッサンスと比較すると北方ルネッサンス作品の背景ディテールに対する執着心は圧倒的で、ルネッサンスの空間表現と中世の伝統的な細密表現の融合を感じることができます。
北方ルネッサンスを楽しむためには、まずは遠くから構図を把握してから、近づいて詳細を鑑賞してみましょう。
虫メガネを使いたくなるほど細かい筆致にきっと驚きますよ!


北方ルネッサンスはイタリア・ルネッサンスからの影響を受けているとはいえ、イタリア絵画とは異なる発展を遂げた興味深い様式です。
作品鑑賞のチャンスがあれば、ぜひ近くでその繊細さを感じてみてくださいね。

【写真4枚】【北方ルネッサンス】イタリアとの違いは?絵画特徴と注目ポイント解説 を詳しく見る
はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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