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2022.9.6

【絵画技法】テンペラ画って?描き方、特徴、作品鑑賞のコツを徹底解説

テンペラは西洋美術の歴史の中でもっとも人気を集めた絵具の1つです。
テンペラ画はこのテンペラ絵具を使用して制作された作品を指しますが、テンペラの中にも様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。

サンドロ・ボッティチェッリ『チェステッロの受胎告知』, Public domain, via Wikimedia Commons

この記事では、テンペラ画の描き方や特徴、鑑賞のコツについて詳しく解説していきます。

テンペラ画の描き方

Joyful spherical creature, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

テンペラは、色彩を決定する顔料の他に何を固着剤として配合するかによって種類が決まります。

①代表的なのは「卵テンペラ」

最も有名なものは「卵テンペラ(エッグ・テンペラ)」で、その名の通り鶏の卵を顔料に混ぜて絵具を作ります。
卵テンペラの絵具の作り方は時代や地域によっても異なり、それぞれの時代の美術テクニックを記録した史料をみても記されている手法はバラバラです。
ヨーロッパで普及していたのが卵黄テンペラという方法で、卵の黄身と顔料を混ぜて絵具にします。
14世紀に美術技術書を著したチェッニーノ・チェッニーニは、正しい卵テンペラ絵具を作るためには卵黄と同量の顔料を水で薄めるとしています。
卵黄と卵白を泡立てて大さじ1杯の酢とオイルを加えることを進めている本もあり、ここからオイルを加えて絵具を作る文化(油絵具)が生まれたのではないかと言われています。

②時代・画家によって成分が異なることも

一方、ルネッサンスの画家であり芸術家伝記者でもヴァザーリは、溶き卵の代わりにイチジクの乳液を加えることを提案していました。
テンペラ画の含有成分は時代や画家の好みによってひとつひとつ微妙に異なるものだったようです。

テンペラ画の特徴

サンドロ・ボッティチェッリ『東方三博士の礼拝』, Public domain, via Wikimedia Commons

15世紀以降に油を固着剤とする油絵が浸透する以前には、パネル画などにはこのテンペラ画が多く用いられていました。

①時間が経っても変色しづらい

テンペラ画の特徴は、時間が経っても色味が変化しづらいという点にあります。
油絵具で描いた作品は特定の色が黒くなったり黄色くなってしまったりする問題を抱えているのに対し、卵などを固着剤としたテンペラは変色のリスクが高くありません。

②マットな質感

テンペラそのものの特徴としては、マットでややほこりがかったような質感が挙げられ、パネルやカンバスに載せると筆の跡がかすかに残ります。

③経年劣化に強いが、壁画には不向き

絵具が固まったあとはひび割れや剥落が生じにくく、変色以外の経年変化にも強い絵画技法です。
イタリアルネッサンスで制作された多くの作品はこのテンペラ画でしたが、テンペラは性質上壁画への使用は不向きでした。

参考:レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』(一部), Public domain, via Wikimedia Commons

実際、新しい技法を追い求め常に挑戦を重ねていたレオナルド・ダ・ヴィンチは壁画である『最後の晩餐』にテンペラをつかっていますが、見ての通り劣化がひどく原作の維持が非常に困難な状態になっています。

テンペラ画鑑賞のコツ

ラファエロ・サンティ『自画像』, Public domain, via Wikimedia Commons

作品に近づいて筆致に注目してみよう!

テンペラ画を鑑賞する際には、ぜひ作品に近づいて筆致に注目してみてください。
テンペラの特徴的な粘度の高さにより、筆の跡が画面上に残っているのがわかります。
色彩の豊かさは遠くから見ても十分感じとることができますが、作品に近づいて観ることで、芸術家の息吹を感じることができます。


現在では完成された絵具を簡単に変える時代になったので想像が難しいかもしれませんが、近世までの芸術家は自分で顔料や卵を混ぜて絵具を作っていました。
1つの色を再現するために、どれだけの苦労があったことか…。
そんな芸術家の偉大な制作背景に思いを馳せるのも楽しいかもしれませんね。

【写真5枚】【絵画技法】テンペラ画って?描き方、特徴、作品鑑賞のコツを徹底解説 を詳しく見る
はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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