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2022.9.20
【ギリシャ神話】西洋美術を読み解くために重要な神々を簡単解説!
ヨーロッパの美術作品を鑑賞していると、ギリシャ神話を題材にしたものをよく目にします。
西洋ではルネッサンス以降、中世のキリスト教中心の世界観のほかに、偉大な古代ギリシャや古代ローマの文化を再評価する動きが加速しました。
目次
Illustrated by Engravings on Wood., Public domain, via Wikimedia Commons
この記事では、「名前は聞いたことあるけどどんな神様かわからない…」という方のために、ギリシャ神話の神々についてわかりやすく解説します。
※見出しの()内は、ローマ神話で用いられる呼称です。
ギリシャ神話の神:ゼウス(ジュピター)
Jamain, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ゼウスは、雷を操って戦うオリンポスの神の最高神です。
正義感が強く、神々の中でも圧倒的な実力を備えています。
ゼウスは圧倒的な実力者として神々や人間たちを支配していましたが、浮気性な一面があり常に男女関係に問題を抱えていた神としても知られています。
結婚離婚を繰り返した末、実の姉であるヘラ(ジュノー)と結婚し正妻として迎え入れますが、何人もの愛人がいたため嫉妬深いヘラを怒らせいつもトラブルになっています。
ゼウスは神でありながら人間にも愛人を作っていたため、半神半人を多く生み出したとされ、ヨーロッパの王家はこの伝説を利用してゼウスの末裔を自称することもありました。
ギリシャ神話の神:ポセイドン(ネプチューン)
Lysippos (copy of lost work), Public domain, via Wikimedia Commons
ポセイドンは、海と地震を司る神です。
海以外にも、泉や川など水にまつわるものの守護神として描かれることもあり、ヨーロッパでは噴水の彫刻のテーマによく選ばれています。
ポセイドンは馬との関りも深く、競馬の守護神にもなっています。
三叉の槍を手にしている姿は、その後の創作にもよく用いられているため現代を生きる私たちにも親しみのある神の1人です。
ゼウスの兄でありながら、意見が対立することも多くよく衝突していたとされ、実力的にはゼウスの次に強かったと言われています。
ギリシャ神話の神:アテナ(ミネルヴァ)
Claude Michel, CC0, via Wikimedia Commons
アテナは父ゼウスの頭から生まれてきたとされる戦いの神です。
「戦い」というと男性をイメージされがちですが、アテナは女神で、古代ローマにおいても戦勝を記念してアテナの神殿が建てられることがありました。
戦いの神という立ち位置ではあるものの、決して戦いを好んでいたわけではなく、正義に味方して勝利をもたらす存在と信じられていました。
芸術作品の中では常に鎧かぶとをまとった状態で描かれますが、アテナは同時に知恵と純潔の女神でもあります。
ギリシャ神話の神:アポロン(アポロ)
Leochares, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
ギリシャ神話の神々の中でも最も有名な神の1人であるアポロンは、太陽の神です。
ゼウスの息子として誕生し、知性、学問、音楽、弓術など様々なものを司る神でもあります。
アポロンはエロスのいたずらにより「愛情を芽生えさせる矢」を撃たれて女神ダプネーに恋をするものの、ダプネーは同じくエロスに「愛情を拒否する矢」を撃たれたのでアポロンを拒否し続けました。
アポロンの求愛に追い詰められたダプネーは、父の力を借りて月桂樹に身を変身させ、アポロンはダプネーの月桂樹を頭にかけてもらいました。(ダプネーはギリシャ語で月桂樹という意味)
参考:ベルニーニ『アポロンとダプネー』, Dbenedik, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
このため、芸術作品においてアポロンをシンボルとしており、弓矢と堅琴を手に持っているのも特徴の1つです。
ギリシャ神話の神:アフロディーテ(ヴィーナス)
アフロディーテは、ローマ神話ではヴィーナスという名で親しまれています。
美と愛欲の神とされ、ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』のように裸で描かれることの多い女神です。
参考:ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』, Public domain, via Wikimedia Commons)
他にも『ミロのヴィーナス』はアフロディーテをモデルにしているなど、西洋美術の世界では出会う頻度の高い神の1人です。
参考:『ミロのヴィーナス』, Gary Todd from Xinzheng, China, CC0, via Wikimedia Commons
アフロディーテの息子エロス(キューピッド)は、弓矢で恋愛感情を持たせることができ、いつも母と行動をともにしています。
バラやハトをシンボルにしていることが多く、優雅で美しい姿で描かれる神です。
ギリシャ神話の神は人数も多く、すべて覚えるのは難しいかもしれません。
しかしここで紹介した5人の神だけでも識別できると、作品鑑賞がより楽しくなること間違いなしです。
ぜひ、ギリシャ神話がテーマの作品を見た際にはこの記事を思い出してくださいね。
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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