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2024.5.13
ローマでルネッサンス芸術を感じる!アート好き必見スポット6選
ルネッサンス芸術といえばフィレンツェ?
実は、ローマもイタリア・ルネッサンスにおける非常に重要な都市であったことをご存じでしょうか。有名なヴァチカン美術館やシスティーナ礼拝堂以外にも、ローマにはルネッサンス芸術を感じられる場所はたくさんあります。
ルネッサンス期における華々しいローマの興隆は、教皇庁をはじめとした強力なパトロンと、豊かな古代からの芸術遺産に支えられていました。この記事では、ローマの大学院で美術史を専攻する筆者が、あまり知られていないローマのルネッサンス美術鑑賞のおすすめスポット6選を紹介します!
目次
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット①:ヴァチカン美術館
Raphael8 Public domain, via Wikimedia Commons
ローマ観光の目玉の1つといえば、ヴァチカン美術館!ルネッサンスのみならず、古代から現代までのさまざまな芸術作品を鑑賞できる必見スポットです。ルネッサンス芸術を語るうえで、ヴァチカン美術館はもちろん避けて通れません。
もっとも有名なのはミケランジェロが手掛けた『天地創造』や『最後の審判』があるシスティーナ礼拝堂です。実はシスティーナ礼拝堂には、ミケランジェロ以外に、ボッティチェッリやペルジーノのような有名な画家が手掛けた作品が展示されていることをご存じでしょうか?
礼拝堂の壁の中央部分に帯のように連なる全部で12枚の作品群は、モーゼの人生とイエスの人生をテーマにしています。いずれも1481-2年にペルジーノ、ボッティチェッリ、ギルランダイオ、ロッゼッリ、シニョレッリの5人のルネッサンス画家によって制作されました。
ヴァチカン宮殿内にある4つのラファエロの間も、ルネッサンスの重要な作品です。もっとも有名な『アテネの学童』以外にも、ラファエロのたぐいまれなる才能を感じられるフレスコ画が連続して鑑賞できます。
ラファエロの間においては、人物の生き生きとして表情や仕草だけでなく、ぜひ古代風の背景や建物にも注目してみてください。ルネッサンス時代の芸術家がローマの古代遺跡をどのように理解し、作中に表現したかを感じることができるでしょう。
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット②:ファルネジーナ荘
a loggia d'Amour et de Psyché (Villa Farnesina, Rome) Public domain, via Wikimedia Commons
ファルネジーナ荘はイタリア語でヴィッラ・ファルネジーナ(Villa Farnesina)と呼ばれる、銀行家アゴスティーノ・キジの邸宅です。16世紀前半にラファエロなどの芸術家が内部装飾を手掛けており、その豪華さから当時のキジの絢爛な生活ぶりが想像できます。
とくに注目したいのがホール部分のラファエロの『アモーレとプシュケ』を題材にしたフレスコ画です。ホールは大きな窓でたくさんの光が入るため、天上や壁全体を覆うフレスコ画の優しい色味を感じられます。
有名なレストラン街であるトラステヴェレ地域にあり、気軽に立ち寄れる立地もうれしいですね。ヴァチカン美術館のようにたくさんの人で混雑することは稀なため、ゆっくり落ち着いてラファエロの絵画を楽しみたい方におすすめです。
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット③:サンタ・マリア・デル・ポポロ大聖堂
Basilica of Santa Maria del Popolo Rome Public domain, via Wikimedia Commons
サンタ・マリア・デル・ポポロ大聖堂は、ポポロ広場にある歴史ある教会です。ポポロ広場のシンボルである双子の教会とは反対側の城壁沿いにあり、「デル・ポポロ(Del Popolo)」には「民衆の」という意味があります。
教会の歴史は11世紀末にまでさかのぼり、それからルネッサンス、バロックと増改築が繰り返されました。ローマに現存している数少ない “ゴシック様式” の教会建築でもあります。
教会内にはカラバッジョやベルニーニなどバロック時代を担った巨匠の作品も多く見られます。見どころの多いサンタ・マリア・デル・ポポロ大聖堂ですが、ぜひルネッサンスの芸術作品として注目したいのが、ラファエロが設計したキジ礼拝堂です。
Santa Maria del Popolo Capella Chigi Panorama Public domain, via Wikimedia Commons
キジ礼拝堂は、ファルネジーナ荘でラファエロにフレスコ画を依頼したのと同じアゴスティーノ・キジとその家族のために建てられました。あまり知られていませんがラファエロは画家としてだけではなく建築家としても活動しており、このキジ礼拝堂は彼の建築の才能を間近で感じられる場所です。
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット④:キオストロ・デル・ブラマンテ
Santa maria della pace, chiostro del bramante 01Public domain, via Wikimedia Commons
キオストロ・デ・ブラマンテは、芸術的な価値としてはもちろんのこと、隠れ家的なカフェとしてローマっ子が通う場所としても知られています。「キオストロ」とは回廊という意味の言葉で、ルネッサンス建築の父ブラマンテが設計した回廊を指します。
ブラマンテは15世紀後半から16世紀はじめにかけて活躍した建築家で、古典復興(つまりルネッサンス)に大きく貢献しました。ローマに残された遺跡の建築様式を学び、緻密な計算に基づいた洗練された建築を多く残した建築家です。キオストロ・デ・ブラマンテも例にもれず、均整のとれた荘厳なデザインが特徴的です。
キオストロ・デ・ブラマンテは現在、現代アート美術館とカフェを併設しており、美術館と同じ入り口からカフェに入ることができます(カフェのみの場合は入場券の購入必要なし)。ブラマンテの設計した回廊の装飾部分を椅子として再利用しており、歴史的な建造物に腰を据えてコーヒーを飲む時間…なんとも贅沢!
ナヴォーナ広場から歩いて5分程度なので、ちょっとコーヒー休憩したい、というときにぜひ足を運んでみてください。
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット⑤:サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ大聖堂
Rome-Basilique San Pietro in Vincoli-Moise MichelAngePublic domain, via Wikimedia Commons
サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ大聖堂は、コロッセオから歩いて10分程度のところにある教会です。この教会には、ルネッサンス史上もっとも価値ある彫刻の1つであるユリウス2世の墓があります。(ユリウス2世はそこに埋葬されていないため、正確には葬礼モニュメント)
ミケランジェロが手掛けた教皇ユリウス2世の墓は、最初の依頼から40年近く(!)かけて完成された歴史があります。ミケランジェロの多忙に加え、なにかと衝突の多かったユリウス2世とミケランジェロの関係も災いし、長い年月がかかりました。
Michelangelo Second design for wall tomb for Julius IIPublic domain, via Wikimedia Commons
長すぎる制作期間のなかで構成プランは何度も変更され、当初の壮大な計画に比べると実際に実行された彫刻はやや落ち着いた仕上がりになっています。とはいえ、2階建て造りの作品は、ユリウス2世の像を含む7体(幼子イエスを含めると8体)の彫像が含まれる巨大さ。
下段中央に位置するモーゼは後世の芸術家によっていくどもコピーされ、ルネッサンスローマの芸術を象徴する作品として知られています。落ち着いた環境でミケランジェロ作品を鑑賞したい方におすすめのスポットです!
ローマのルネッサンス芸術おすすめスポット⑥:サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ
Santa Maria sopra Minerva (Rome)Public domain, via Wikimedia Commons
サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ大聖堂は、パンテオンから徒歩2分の立地にある教会です。長い改修工事の末、2023年から一般公開が復活しました。教会建築全体はローマに珍しいゴシック様式であり(19世紀に改築)、高い天井と尖塔アーチが厳かな雰囲気を作っています。
サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ大聖堂にあるルネッサンス芸術の作品としてよく知られているのは、フィリッピーノ・リッピが手掛けたカラファ礼拝堂です。主題は聖トマス・アクィナスと聖母マリアを中心にしています。古代哲学のキリスト教的な解釈に尽力した聖トマス・アクィナスは、近代的な人文主義を象徴する存在だったのでしょう。
Santa Maria sopra Minerva Cappella Carafa 1Public domain, via Wikimedia Commons
絵画(つまり二次元)のなかに建造物を描いて立体的な奥行きを表現するテクニックは、ルネッサンス芸術家たちの力量を発揮する絶好の要素でした。カラファ礼拝堂の作品からも、フィリッピーノ・リッピの正確な遠近法の理解や陰影表現のテクニックを感じることができます。
いずれも見ごたえ抜群の場所なので、ルネッサンスアートが好きな方はぜひ訪れてみてくださいね。以上、ローマのルネッサンス芸術必見スポット6選でした!

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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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