STUDY
2022.12.21
シンデレラ城のモデル?ドイツ・ノイシュバンシュタイン城の歴史と建築
シンデレラ城のモデルとも言われるノイシュバンシュタイン城はドイツの南端、オーストリアとの国境沿いにあるお城です。このエリアはアルプス山脈に近いため、真冬には雪が降ってお城全体が幻想的な雰囲気に包まれます。
この記事では、ノイシュバンシュタイン城がシンデレラ城のモデルと言われる理由についてと、お城の歴史、建築について紹介します。
ノイシュバンシュタイン城はシンデレラ城のモデル?
Thomas Wolf, www.foto-tw.de, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons
ノイシュバンシュタイン城の紹介ではよく「シンデレラ城のモデル」とされますが、実際は部分的にデザインを真似しただけで「モデル」というわけではないようです。シンデレラ城は、ヨーロッパにある複数のお城を組み合わせてデザインされており、そのうちの1つがノイシュバンシュタイン城です。
ノイシュバンシュタイン城とシンデレラ城を比較してみると、両者ともに白い壁に青色の屋根が特徴となっており、落ち着きのあるエレガントな印象がありますね。
ノイシュバンシュタイン城のちょっと悲しい歴史
alexander palace forums, Public domain, via Wikimedia Commons
そんな美しいノイシュバンシュタイン城ですが、実はその歴史には悲しい物語が隠されています。
ノイシュバンシュタイン城を建築したのは19世紀のバイエルン王国のルートヴィヒ2世です。ルートヴィヒ2世はドイツによって激動であった19世紀において、最も有力な貴族の1人として政治の世界でも常に注目を浴びてきました。しかし、実際は音楽家ワーグナーの作品に心酔しているなど、繊細で芸術的な感性の持ち主でした。
ルートヴィヒ2世は公務のために、バイエルンの政治的中心地であったミュンヘンに居住していましたが、自身の追い求める「ロマン主義」を体現したお城をフュッセンに建築する決心をします。この地には、ルートヴィヒ2世が幼少期を過ごした父の城「ホーエンシュヴァンガウ城」があります。
ノイシュバンシュタイン城の内装がある程度整った1886年頃から城に籠りきりになり、君主としての役割を放棄するようになりました。さらには城建設のために抱えた莫大な借金が原因で政府からの信用を失い、なかば無理やり「精神病」と認定されてしまいます。その後軟禁状態にあったルートヴィヒ2世は、散歩中に湖畔で謎の死を遂げました。
シンデレラ城に似ている?ノイシュバンシュタイン城の建築
Alessio Mercuri, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
ノイシュバンシュタイン城の建築は、確かにシンデレラ城に似ている部分があります。例えば壁が白く屋根が青いところや、円錐型の塔がある点もシンデレラ城と同じです。
しかし、ディズニーランドの公式サイトによると、ノイシュバンシュタイン城は東京ディズニーランドのシンデレラ城よりもカリフォルニアの「眠れる森の美女の城」のモデルになっているそうです。
参考:カリフォルニアディズニーランドにある「眠れる森の美女の城」 , Tuxyso Wikimedia Commons
ルートヴィヒ2世はお城の内装外装の装飾に深いこだわりがあり、特に全体を通してドイツの伝説に登場する「ローエングリン」という白鳥の騎士へのオマージュをデザインしました。これらのテーマはワーグナーのオペラにもよく用いられたもので、ルートヴィヒ2世は混とんとした現実の政治から目を背け、夢想の中で生きたかったのかもしれません。
まとめ
ルートヴィヒ2世が自身のロマン主義を追求して建てたノイシュバンシュタイン城は、世界中から多くの観光客を集める人気スポットです。現在では、彼がした借金とは比べ物にならないほどの富を、バイエルンにもたらす存在となっています。背景にある歴史を学ぶと、異なる視点から建築を見ることができますね。

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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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