STUDY
2024.5.23
ローマでバロック芸術を感じる!アート好き必見スポット7選
ローマの芸術といえば古代遺跡やルネッサンスの芸術家の活躍が有名ですが、見どころはそれだけではありません。実はローマは17世紀のイタリア・バロック芸術を牽引した街でもあり、現在も街中で重要な建築や芸術を見ることができます。
この記事では、ローマの大学院で美術史修士を取得した筆者が、あまり知られていないローマのバロック美術鑑賞のおすすめスポット7選を紹介します!無料で鑑賞できるスポットも多いので、節約して芸術を楽しみたい方必見です。
目次
ローマのバロック芸術おすすめスポット①:ボルゲーゼ美術館
The Rape of Proserpina by Bernini, Galleria BorghesePublic domain, via Wikimedia Commons
ボルゲーゼ美術館はローマでもっとも人気のある美術館の1つです。ローマ市民憩いの場、ボルゲーゼ公園の中にあります。
ボルゲーゼ美術館といえば、やっぱりベルニーニ。イタリア・バロックの巨匠の1人であるベルニーニの圧倒的な実力を集約した彫刻作品が、ボルゲーゼ美術館では間近に鑑賞できます。
ベルニーニのほかにも、カラヴァッジョなどイタリア・バロックを彩った芸術家の作品がたくさんあります。ラファエロやティツィアーノの絵画もあり、見ごたえ抜群です!
ただし、ボルゲーゼ美術館は予約必須にもかかわらず1か月先まで予約で埋まっている現状です。(2024年5月現在)たまにキャンセルがでることもあるので、ぜひあきらめずにサイトをチェックし続けてくださいね。
公式サイト チケット購入画面: Tickets - Galleria Borghese
ローマのバロック芸術おすすめスポット②:バルベリーニ美術館
La palais Barberini (Rome) Public domain, via Wikimedia Commons
バルベリーニ美術館は、メトロAの駅バルベリーニ駅から徒歩3~4分程度の好立地にある美術館です。ボルゲーゼ美術館と肩を並べるほどの所蔵作品の数々が鑑賞できますが、なぜかいつも比較的空いているので、ゆっくり鑑賞したい方におすすめです!
バルベリーニ美術館には、カラヴァッジョの絵画やベルニーニの彫刻などたくさんのバロック作品があります。たとえばカラヴァッジョの代表作の一つである『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』はここで鑑賞できます。
建築も見事で、チケットを購入して美術館入り口に向かうまでの昇りの階段はベルニーニが、帰りの下りの階段はボッロミーニが設計しました。2人の偉大な建築家の階段を実際に通行できるなんて、贅沢な体験ですよね!
ローマのバロック芸術おすすめスポット③:サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会
San luigi dei francesi, interno, cappella contarelli Public domain, via Wikimedia Commons
カラヴァッジョ作品を無料で鑑賞したい方にぜひおすすめなのが、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会です。ナヴォーナ広場とパンテオンのちょうど中間に位置し、ふらっと立ち寄ることができます。
サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会にはカラヴァッジョの『聖マタイ』に関する三部作があり、連日多くの観光客が訪れています。『聖マタイ』の作品があるのは、入り口から向かって左側の一番奥の礼拝堂です。
1~2€のコインを入れるとライトアップされる仕組みになっており、投じた金額に応じて照明の時間が決まります。常に多くの人が作品の周りにいるので、誰かがお金を入れるのを待つか、自分でコインを入れに行きましょう。
ローマのバロック芸術おすすめスポット④:ナヴォーナ広場
Fontana dei Quattro Fiumi (Roma, Piazza Navona) Public domain, via Wikimedia Commons
ナヴォーナ広場はローマのシンボルともいえる広場で、常に多くの観光客が訪れる場所です。ここで見られるバロック作品は、もちろんベルニーニの大作『四つの川』。広場の噴水の装飾なので、鑑賞はもちろん無料です!
ベルニーニは17世紀当時に知られていた世界の川「ナイル川」「ドナウ川」「ガンジス川」そして「ラプラタ川」を擬人化してこの噴水をデザインしました。
よく見るとそれぞれの人物が地域の特徴を示した装飾をまとっています。たとえば、ラプラタ川の足元には金貨が積まれており、これはラプラタの語源「お金・銀」という言葉から来ているのでしょう。実際、当時発見されたばかりのアメリカ大陸はヨーロッパに莫大な富をもたらしました。
ナイル川にあたる人物が顔を隠しているのは、当時まだナイル川の水源が明らかになっていなかったからと言われています。一つずつじっくり鑑賞すると小さなヒントがたくさん隠されていて面白いですよ。
ローマのバロック芸術おすすめスポット⑤:サピエンツァ宮殿
It-roma-s ivo sapienza Public domain, via Wikimedia Commons
サピエンツァ宮殿は、ナヴォーナ広場から歩いてすぐのところにあります。観光地のど真ん中にありながら、あまり知られていないため比較的人が少なく、喧騒を離れてちょっと落ち着きたい方に最適です。開放されていない時間帯もありますが、無料で入場できます。
イタリア・バロックを支えた芸術家ボッロミーニが設計したサピエンツァ宮殿は、整然としているのにどことなく不気味さを感じる不思議な建築です。ボッロミーニらしい計算しつくされたデザインは、バロック芸術のダイナミズムを感じさせてくれます。
ちょっとおしゃれで特別な写真を撮りたいという方に、ぜひおすすめです。
ローマのバロック芸術おすすめスポット⑥:ジェズ教会
Rome-chiesa del Gesù002 Public domain, via Wikimedia Commons
バロック教会建築の代表作と言えば、ジェズ教会です。ジェズ教会はヴェネツィア広場から歩いて5分程度の場所にある、イエズス会の教会です。
イエズス会は現教皇フランチェスコ(2024年5月現在)の所属する修道会で知られますが、実は日本にもゆかりがあります。江戸時代に日本にキリスト教を最初に布教したのはイエズス会の宣教師たちであり、フランシスコ・ザビエルやイグナティウス・デ・ロヨラもイエズス会のメンバーでした。ジェズ教会はイエズス会のかつての本拠地であり、内部にはロヨラの墓があります。
建物全体を柱で区切らずに全体的な統一感を重視した構造は、のちに建設されたローマ・バロック建築の基礎となりました。天上を見上げると巧みに組み合わされたフレスコ画とスタッコ(白く軽い素材)の彫刻がこちらを見下ろしています。
ローマのバロック芸術おすすめスポット⑦:サンティニャツィオ教会
Triumph of St. Ignatius of Loyola, ceiling fresco by Andrea Pozzo Public domain, via Wikimedia Commons
サンティニャツィオ教会は、イグナティウス・デ・ロヨラに捧げられた教会です。(イタリア語でSant’Ignazioは聖イグナティウス)パンテオンから歩いて5分程度のところにあります。
サンティニャツィオ教会の見どころは、天上画です。見上げると天上全体を覆うような絵は、実際の建築構造との境を限りなく不明瞭にすることで幻想的な空間を作り出しています。
空に昇りゆく聖人の姿とその背景は、室内でありながら不思議な解放感があります。じっくり鑑賞するためには少し首が痛くなるかもしれません。
主祭壇の手前部分を見上げると、「クーポラ」があります。実はこれはだまし絵であり、一定の位置をすぎると遠近法的にまったく意味をなさない絵であることがわかります。資金不足によりクーポラの建設をあきらめ、代わりに絵を描いて内部からの印象を操作することにしたのだとか。
ローマにはバロック芸術を鑑賞できるスポットがたくさんあります。ここに紹介した7つのスポットはいずれも中心地にあり行きやすいため、ぜひ足を運んでみてください。以上、ローマのバロック芸術おすすめ鑑賞スポット7選でした!

画像ギャラリー
あわせて読みたい
-
STUDY
2025.10.09
色彩理論の変遷〜ゲーテからシュヴルールまで、画家が学んだ『色の科学』
Masaki Hagino
-
STUDY
2025.10.07
鏑木清方が描いた女性たち ― 静かな時間に寄り添う美人画
加藤 瞳
-
STUDY
2025.10.06
写生を極めた画家の一生 ~福田平八郎の一生と、画風の変化~
中森学
-
STUDY
2025.10.03
原田マハのおすすめ小説5選。アート小説の第一人者の名作を読もう
糸崎 舞
-
STUDY
2025.10.02
大津絵とは?鬼や猫も描かれたゆる絵画の深い魅力と歴史、浮世絵との違いをやさしく解説
明菜
-
STUDY
2025.10.01
デッサンは芸術のすべて──ドミニク・アングル、古典から未来を開いた画家
国場 みの
このライターの書いた記事
-
STUDY
2025.09.30
イタリアの世界遺産の街7選!歴史と美術の面白さを在住者が解説
はな
-
STUDY
2025.09.24
【ターナーの人生と代表作】モネと似ている?印象派の先駆け?
はな
-
STUDY
2025.07.15
シャガール『誕生日』:遠距離恋愛を乗り越えた彼女への愛が爆発したロマンチックな作品
はな
-
STUDY
2025.07.09
ゴヤ『1808年5月3日、マドリード』恐ろしさの裏に隠された背景を読み解く
はな
-
STUDY
2025.07.07
描かれたのは5人の娼婦?ピカソの『アヴィニョンの娘たち』を簡単に解説!
はな
-
STUDY
2025.06.05
「大天使ミカエル」の役割と描かれ方を解説!【キリスト教美術史】
はな

はな
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
はなさんの記事一覧はこちら