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2025.11.14
企画展『デザインの先生』が21_21 DESIGN SIGHTにて開催!6名の巨匠たちの視点と思想を通して、デザインのあり方を考える
東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでは、2025年11月21日より企画展『デザインの先生』が開催されます。
目次
イタリア、ドイツ、スイスなどヨーロッパ各地に生まれ、デザインの世界を牽引してきた6名の巨匠たちを「デザインの先生」として紹介。それぞれが示してきた独自の視点と思想を通して、デザインの多様なあり方を探ります。
企画展『デザインの先生』で取り上げる巨匠たちとは?
ヴァネチア・ビエンナーレ スイス館の模型をもつマックス・ビル(1948年) Ernst Scheidegger, max bill / pro litteris
今回の展覧会で取り上げるのは、ブルーノ・ムナーリ(イタリア、1907〜1998年)、マックス・ビル(スイス、1908〜1994年)、アキッレ・カスティリオーニ(イタリア、1918〜2002年)、オトル・アイヒャー(ドイツ、1922〜1991年)、エンツォ・マーリ(イタリア、1932〜2020年)、そしてディーター・ラムス(ドイツ、1932年〜)の6名のデザインの巨匠たちです。
彼らの中には、デザイン教育の現場で次の世代を育てた人物もいますが、それだけでなく、強い信念と希望をもって活動し、時代の先を見据えて社会に新たな価値観をもたらした人物である点で共通しています。いずれもデザインという行為を通して、未来を切り拓いた先生たちと言えるでしょう。
さらにマックス・ビルやオトル・アイヒャーに学び、両者と生涯にわたって親交を深めながら、日本におけるデザイン学の礎を築いた向井周太郎(1932〜2024年)の視点にも光をあてます。
6名の「デザインの先生」のプロフィール
ブルーノ・ムナーリ「Falkland(フォークランド)」(1964年デザイン)
それでは6名の「デザインの先生」のプロフィールを簡単にご紹介しましょう。
◇ブルーノ・ムナーリ(1907〜1998年)
ブルーノ・ムナーリ Photo: Ugo Mulas ©Ugo Mulas Heirs. All rights reserved.
イタリア・ミラノ生まれ。20世紀イタリアを代表する芸術家・デザイナー。絵画、彫刻、グラフィック、インダストリアルデザインなど幅広い分野で活動し、未来派の一員として出発した後、「役に立たない機械」などキネティック・アートの先駆的作品を発表。
アイロニーとユーモアに満ちた創作を展開する一方、1970年代からは子どもの創造力を育む教育活動にも力を注ぐ。絵本『ムナーリの機械』をはじめとする著作や、ダネーゼ社との協働による玩具・プロダクトは、今も世界中で愛され続けている。
◇マックス・ビル(1908〜1994年)
マックス・ビル Ernst Scheidegger, max bill / pro litteris
スイス・ヴィンタートゥール生まれ。銀細工を学んだのちバウハウスに入学し、建築、芸術、デザイン、執筆と多分野で才能を発揮した。数学的思考に基づく具体芸術を推進し、1953年にはインゲ・アイヒャー=ショル、オトル・アイヒャーとともにウルム造形大学を創設、その設計を手掛け、初代学長を務めた。
「ウルム・スツール」をはじめ、「文化財としての生産品」の思考の現われであるユンハンスの時計などは名作デザインとして現在も製造され続けている。環境形成の理念のもと、今日のデザイン教育にも大きな影響を残している。
◇アキッレ・カスティリオーニ(1918〜2002年)
アキッレ・カスティリオーニ Photo: J.B. Mondino, courtesy of FLOS
イタリア・ミラノ生まれ。建築家・デザイナー。1944年にミラノ工科大学を卒業後、兄リヴィオ、ピエル=ジャコモとともに工業デザインの活動を開始する。「タッチア」や「アルコ」などの名作照明を数多く生み出した。
教育者としても活躍し、トリノ大学や母校ミラノ工科大学で後進を指導。1956年にはイタリア工業デザイン協会(ADI)の設立にも携わり、イタリア・デザインの発展に大きく貢献した。
◇オトル・アイヒャー(1922〜1991年)
オトル・アイヒャー ©Karsten de Riese / Bayerische Staatsbibliothek
ドイツ・ウルム生まれ。20世紀ドイツを代表するグラフィックデザイナーで、ビジュアル・コミュニケーションとタイポグラフィの分野に大きな影響を与えた。1953年、インゲ・アイヒャー=ショル、マックス・ビルとともにウルム造形大学を創設。
1972年ミュンヘン五輪のデザイン・コミッショナーとして、統一感のあるピクトグラムとシステム設計を実現し、国際的な評価を得る。ルフトハンザ航空の企業デザインやフォント「ローティス」なども、アイヒャーのデザインとして知られている。
◇エンツォ・マーリ(1932〜2020年)
イタリア・ノヴァーラ生まれ。ブレラ美術アカデミーで学び、1950年代後半からブルーノ・ムナーリの紹介でダネーゼ社と協働し、デザイナーとして活動を本格化。機能と形態の卓越した数多くのプロダクトや家具を手がけた。
一方で量産品や工業デザインの倫理を重視。自身のデザイン哲学を記した著書に『プロジェクト とパッション』などがある。晩年には良品計画や飛騨産業など日本企業とも協働している。
◇ディーター・ラムス(1932年〜)
ディーター・ラムス Photo: Sabine Schirdewahn ©rams foundation
ドイツ・ヴィースバーデン生まれ。建築を学んだのち、1955年にブラウン社へ入社し、長年デザイン部門を率いる。シンプルで機能的な造形を追求し、「ET 66」(電卓)や「SK 4」(ラジオ・レコードプレーヤー複合機)など多くの名作を生み出した。
著書『Less, but better(より少なく、しかしより良く)』で提唱した「良いデザインの10ヶ条」は、現代のプロダクトデザインにも大きな影響を与え続けている。2025年には世界デザイン機構(WDO)より世界デザイン賞を受賞した。
展覧会ディレクター、川上典李子と田代かおるによるメッセージ
アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ「Taccia(タッチア)」(1962年デザイン)
それぞれが異なる原動力と哲学をもとに、戦後のヨーロッパで独自の道を切りひらいた6名の巨匠たち。展覧会ディレクターを務める川上典李子と田代かおるは、6名の巨匠たちを招聘した理由として以下のようなメッセージを発しています。
ではなぜ、仕事の手法や生き方も異なる「先生」6名を、同じステージに招聘したのかと言えば、そこに共通する軸を見たからでした。商業主義を優先した「かたち」ではなく、ヒューマニティを中心に置き、さらには環境までとらえる営みとしてプロジェクトを行なっていたという軸です。
また「先生」たちが、自身の職能についてドイツ語ではゲシュタルター(Gestalter)のほか、エントヴェルファー(Entwerfer)を、イタリア語ではプロジェッティスタ(progettista)を使用していたことにも注目します。
それは「構想者。設計者。プロジェクトする者。」にあたる言葉で、デザインをより統合的な営みとしてとらえていたことを示しています。本展では、これからの私たちの指針ともなるプロジェクトを改めて展示し、彼らの残した力強い言葉に耳を傾けます。』
※ディレクターズ・メッセージより引用
オトル・アイヒャーに関する未公開映像も!本展の見どころ紹介
アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ「Arco(アルコ)」(1962年デザイン)
ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムス。6名それぞれの仕事や制作プロセスをはじめ、当時の写真や映像、本人たちの言葉を通して、その思考と創造の源泉に迫ります。
映像ディレクター・菱川勢一(DRAWING AND MANUAL)による映像インスタレーションでは、6名のデザイナーの言葉と活動を本人の映像を通して紹介。武蔵野美術大学 基礎デザイン学科の協力のもと、展覧会ディレクターと菱川が本展の視点からセレクトした、オトル・アイヒャーに関する未公開映像も見どころのひとつです。
エンツォ・マーリ「Samosシリーズ『磁器のデザイン G』」(1973年) 撮影:エス・アンド・ティ フォト ©2022
また6名の代表作をはじめとするプロダクトや作品、活動を展示。ムナーリ、カスティリオーニ、マーリが関わったイタリア・モダンデザインの象徴的ブランド「DANESE(ダネーゼ)」の創業理念を紹介します。
さらに、ビルとアイヒャーの功績を語る上で欠かせないドイツ・ウルム造形大学、そして同大学に学び、日本のデザイン教育の礎を築いた向井周太郎の歩みにも焦点を当てます。
そのほか、深澤直人、金井政明、向井知子ら、第一線で活躍するクリエイターたちが語る撮り下ろしインタビュー映像を展示。日本との繋がりについて触れながら、デザインの先生たちの思想が今、そしてこれからの時代にどう生きていくのかを掘り下げます。
先人たちの軌跡を見つめ直し、これからの未来を考える
ディーター・ラムス「SK 4」(ハンス・グジェロとの共同デザイン、1956年デザイン) Andreas Kugel ©rams foundation
考え、つくり、伝えつづけるというデザインの行為は、生きることと切り離すことができません。ここで紹介する6名のデザイナーたちの作品や言葉、活動に触れるとき、彼らは皆、私たち一人ひとりに考え、主体的に行動することを促していたのだと気づかされます。
いま、社会が大きく変化する時代にあって、デザインには新たな「問い」を生み出す力が求められています。だからこそ、先人たちの軌跡をあらためて見つめ直し、その思想や情熱を手がかりに、これからの未来をどう探り、社会に対してどのようなメッセージを投げかけていけるのか。そのことについて考えながら、本展にて魅力に満ちた6名の先生たちと出会ってください。
展覧会情報
◆『企画展「デザインの先生」』 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー 1&2
【開催期間】2025年11月21日(金)〜2026年3月8日(日)
【休館日】火曜日、年末年始(12月27日〜1月3日)
【開館時間】10:00〜19:00(入場は18:30まで)
【入場料】一般1,600円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
【所在地】東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
【アクセス】都営地下鉄大江戸線「六本木」駅、東京メトロ日比谷線「六本木」駅、東京メトロ千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分
【美術館HP】21_21 DESIGN SIGHTギャラリー 1&2
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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