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2025.10.17
せなけいこのおばけ絵本|怖いけど癖になる名作5選
子どもが泣くほど怖すぎるわけではないけれど、ちょっとドキッとしてやみつきになる。ほどよい怖さで子どもたちを夢中にさせる絵本作家、せなけいこさん。
貼り絵のやさしい風合いとユーモアのあるおばけたちの世界は、一度読むと忘れられません。そこで今回は、親子で何度も読み返したくなる絵本を5冊ご紹介します。
1.めがねうさぎ
引用元:『めがねうさぎ』(作:せなけいこ/ポプラ社、1975年2月発行)(ポプラ社公式サイト)
山でめがねをなくしてしまった、うさこ。夜の山道で、おばけが脅かしにやってきますが、目が悪いので全然気づきません。怖がってほしいおばけは、自分の姿をはっきり見てもらうために、うさこのために一生懸命めがねを探してあげることに……。
いつもは怖がられるおばけが、なんだか健気でかわいそうに見えてくる、とってもユニークな一冊です。
◆アートな見どころ
暗い夜の背景に、うさこのチェック柄のワンピースがパッと映えてとってもキュート!うさこの服は、鎌倉にある文具店の包装紙から作られていると知ると、見るのがもっと楽しくなりますよ。
2.おばけのてんぷら
引用元:『おばけのてんぷら』(作:せなけいこ/ポプラ社、1976年11月発行)(ポプラ社公式サイト)
うさこが家でてんぷらを揚げていると、おいしそうな匂いにつられておばけがやってきます。つまみぐいをしようとしたおばけは、足を滑らせて、てんぷらの衣の中にドボン!
気づかないうさこは、そのままおばけに衣をつけてしまって……。まさかの展開にドキドキする、かわいいおばけのお話です。
◆アートな見どころ
こんがり揚がったてんぷらの、おいしそうなこと!温かみのある色使いが、物語全体をハッピーな雰囲気で包んでいます。
3.ばけものづかい
引用元:『ばけものづかい』(作:せなけいこ/童心社、1974年7月発行)(童心社公式サイト)
ばけものが出るという評判の屋敷に引っ越した、おじいさん。ろくろっ首や大入道といった日本の妖怪たちが次々と脅かしにきますが、おじいさんは全く動じません。
怖がるどころか「ちょうどいい、肩をもんでくれ」と、妖怪たちを手下のように扱ってしまいます。妖怪を労働力としか見ていないおじいさんと人間臭く見えてくる妖怪たちのやり取りに、思わず笑ってしまうはず。
◆アートな見どころ
むっとしたおじいさんと慌ただしく動き回る妖怪たちの対比がとってもコミカル。困り果てた妖怪たちの表情やポーズの一つひとつに、なんとも言えない愛らしさがあります。
4.くずかごおばけ
引用元:『くずかごおばけ』(作:せなけいこ/童心社、1975年8月発行)(童心社公式サイト)
もしも、くずかごの中に世界があったら……。
何でもポイポイ捨てる女の子が、ある日くずかごの中に引きずり込まれてしまいます。くずかごの世界で、捨てたモノたちに追いかけられることに。
「すてたのは、だれだ!」という叫びに、思わずハッとさせられる絵本です。
◆アートな見どころ
怒った顔の魚や人形、草履など、擬人化されたモノたちのキャラクターデザインが秀逸!不気味だけど、どこかユーモラスで目が離せません。
5.ドラキュラーだぞ
引用元:『ドラキュラーだぞ』(作:せなけいこ/小峰書店、1986年3月発行)(小峰書店公式サイト)
夜中に目を覚ましたうさぎの兄弟が土の穴の中で出会ったのは、なんとドラキュラ!
モンスターに出会ったというのに、兄弟たちは怖がりません。ドラキュラに血を持ってこいと命じられ、チーズにチョコ、チラシ寿司まで、「ち」のつくものを次々に持ってきて……。
怖さよりもおかしさが際立つ、ユーモアたっぷりの絵本です。
◆アートな見どころ
ドラキュラの黒いマントに、うさぎの兄弟が持ってくる赤いものの鮮やかさが際立ちます。
ページをめくるたびに増えていく赤が、いたずらみたいな楽しさを添えています。
まとめ
せなけいこさんのおばけ絵本には、怖さの中にあたたかさがあります。
貼り絵のやわらかな質感が、その怖さを包み込み、おばけたちをどこか愛らしく見せてくれます。
ユーモアたっぷりで読み終えるころには心がほっとする、せなさんの絵本をぜひ身近なアートとして楽しんでみてください。
参考文献
・せなけいこ『めがねうさぎ』ポプラ社、1975年2月発行
・せなけいこ『おばけのてんぷら』ポプラ社、1976年11月発行
・せなけいこ『ばけものづかい』童心社、1974年7月発行
・せなけいこ『くずかごおばけ』童心社、1975年8月発行
・せなけいこ『ドラキュラーだぞ』小峰書店、1986年3月発行
・朝日新聞社『せなけいこ展 展覧会図録』朝日新聞社、2019年発行
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元図書館司書のフリーランスライター。児童担当として子ども向けの本に数多く触れてきた経験を活かし、絵本を入り口にアートの楽しさをお届けします。読んだ人が「ちょっとアートに触れてみよう」と思える記事づくりを心がけています。
元図書館司書のフリーランスライター。児童担当として子ども向けの本に数多く触れてきた経験を活かし、絵本を入り口にアートの楽しさをお届けします。読んだ人が「ちょっとアートに触れてみよう」と思える記事づくりを心がけています。
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