STUDY
2023.5.10
印象派の作品はここに注目!アート初心者さんでも楽しめる3つのコツ
印象派の作品というと、どのような印象を持っていますか? 抽象的でわかりにくい、勉強しないと理解できない…そんな難しいイメージがあるかもしれません。
実際、印象派は写実的な作品に比べると、感覚的で自由な表現が特徴です。しかし、印象派の「感覚的」な表現は、緻密な視覚効果と絵画技術の上に成り立っています。
クロード・モネ『印象・日の出』, Public domain, via Wikimedia Commons
この記事では、印象派の作品をどう鑑賞していいかわからない人に向けて、注目すべき3つのポイントをまとめました。
印象派を楽しむコツ①:色彩で見る
ピエール=オーギュスト・ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』, Public domain, via Wikimedia Commons
印象派作品鑑賞の際は、色彩に注目すると新しい発見があるかもしれません。とくに、印象派の光の表現には独特な面白さがあります。
印象派の特徴の1つに、屋外で制作されたものが多い点が挙げられます。印象派が登場する19世紀後半までは、絵画制作は屋内で行うのが一般的でした。これは風景画も例外ではなく、芸術家は記憶の中の形式を思い出しながら制作にあたりました。
印象派の画家が屋外で絵画制作をしたことにより、まず大きく変化したのは色彩でした。太陽の光は時間帯や天候によって変動するため、屋外制作の影響で単純な明暗表現のほかに、新たに光の効果が追加されたのです。
印象派画家はこの「光」を表現するために、混色の中にあえて原色を作中に取り入れることがあります。1つの作品の中に激しい色のコントラストを意図的に生むことで、ゆらめく自然光の豊かな表現が可能になりました。
見慣れない人にとって印象派作品の色彩は、過剰にも感じられるかもしれません。しかし、現実世界の光は、もっと多様でもっと強烈ではないでしょうか? 天候や時間帯で繊細に変化する情景をとらえた作品は、世界がこんなにも豊かな色彩に溢れていることを私たちに思い出させます。印象派は、今、目の前で起きている出来事を忠実に切り取ろうとする挑戦なのです。
印象派を楽しむコツ②:テーマで見る
クロード・モネ『散歩、日傘をさす女』, Public domain, via Wikimedia Commons
印象派を楽しむためには、自分が共感できるテーマを見つけるのもおすすめです。
印象派のテーマは、日常生活や風景を取り扱ったものが多い特徴があります。風景や人々の生活は、神話や聖書の物語に比べると背景知識がなくても理解できるため、親しみやすいのではないでしょうか。
日常の何気ない場面を切り取ったテーマの中には、どこか懐かしさを感じるものがあるかもしれません。印象派は情景の瞬間的な切り取りを目指したため、作品を観て古い記憶とリンクすると感じる人もいます。
海、田園風景、街など、自分に思い入れの深いテーマが描かれている絵を見つけると、作品の魅力をより強く感じられるでしょう。
印象派を楽しむコツ③:筆致で見る
アルフレッド・シスレー『Winter Morning』,Public domain, via Wikimedia Commons
印象派作品の特徴の1つに、力強い筆致が挙げられます。それまでの絵画は筆致をなるべく抑え、光沢やツヤのある仕上がりが求められていました。印象派の多くの作品では、光の動きをより自由に表現するため、あえて筆感がカンバスに残るようにたっぷりと絵具を使っています。
大胆な筆致の効果により、印象派の作品は遠くで鑑賞した場合と近くで鑑賞した場合で、全く異なる印象を受けるはずです。近づくと粗く乱暴に感じる筆致でも、離れて全体像を鑑賞すると、統制のとれた包括的な構図だとわかります。
この自由な筆致は印象派の独特の躍動感を表現するための重要なポイントであり、作品の「味」を出している要素でもあります。印象派を鑑賞する際は、まず全体像を、徐々に近づき筆致を鑑賞し、もう一度離れて見るとより魅力を感じられるでしょう。
印象派の作品を鑑賞する際は、「色彩」「テーマ」「筆致」の3つのポイントに注目すると、より深い魅力を楽しめるはずです。

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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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