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2025.2.18

過去最大規模の『ミロ展』が東京都美術館にて開催!各時代を代表する作品が世界中から集結

スペインのカタルーニャ州に生まれたジュアン・ミロ(1893〜1983年)。太陽や星、鳥といったモチーフを象徴的な記号のように変えて描いた画家として知られ、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような作風は今も世界中で人気を集めています。

《カタツムリの燐光の跡に導かれた夜の人物たち》 1940年 フィラデルフィア美術館 Philadelphia Museum of Art: The Louis E. Stern Collection, 1963-181-46 Successió Miró Archive

そのミロの芸術を大規模に紹介する『ミロ展』が、3月1日より東京・上野の東京都美術館にて開かれます。

90歳で世を去るまで新たな表現を切り開く

《自画像》 1919年 ピカソ美術館、パリ Successió Miró Archive

まずミロとはどのような芸術家だったのでしょうか。バルセロナ出身のミロは、1910年に会計の仕事に就いたものの病気になり、カタルーニャ州南部のモンロッチにて療養生活を送ります。その後、画家としての道を歩みはじめると、1920年には憧れの地であるパリへと出ました。

1925年から「夢の絵画」と呼ばれる作品群を描くと、シュルレアリスムの画家としての地位を獲得します。そして1928年頃には、従来の伝統的な絵画を超えた現代的ともいえる表現を試み、多様な技法や支持体を用いて制作するようになりました。

スペイン内戦と第二次世界大戦により、アトリエを転々としながら制作をつづけたミロは、戦後、特にアメリカにて高く評価されます。そして世界中で個展が開かれると、1966年には東京でのミロ展のために初来日。90歳で世を去るまで特定の運動に属することなく、新たな表現を切り開いていきました。

『ミロ展』の各章に沿ってミロの画業をたどる

《絵画(カタツムリ、女、花、星)》 1934年 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード Donation of Pilar Juncosa, 1986 Successió Miró Archive

それでは各章の内容に沿ってミロの画業をもう少し詳しく追いながら、本展への出品作品の一部をご紹介します。

【第1章 若きミロ:芸術への決意】

バルセロナで生まれたミロが会計の仕事についたのは、父親の強い希望だったとされています。しかし自ら望まなかった仕事の果てに病にかかったのをきっかけに、両親から画家となる許しを得ました。

1912年からフランセスク・ガリの美術学校にて学ぶと、前衛的な芸術運動に共鳴し、セザンヌやキュビスム、フォーヴィスム、ダダイズムなどに影響を受けて制作を続けます。

《ヤシの木のある家》1918年 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード Successió Miró Archive

《ヤシの木のある家》は、1918年の夏にモンロッチで描かれた細密画的な風景画のひとつです。緻密に風景を描写する作風は1922年頃まで続きますが、その幕開けを告げる節目の作品とされています。

こうしたモンロッチの風景画などには、カタルーニャ人としてのアイデンティティと現代的な表現が同居する様子を見ることができるでしょう。

【第2章 モンロッチ – パリ:田園地帯から前衛の都へ】

1920年に初めてパリを訪れたミロは、翌年にアンドレ・マッソンの隣にアトリエを構えて、シュルレアリスムの画家や詩人らと交流します。そしてパリとモンロッチを行き来しながら、シュルレアリスムに影響を受けつつ、詩的な表現を確立しました。

《オランダの室内I》1928年 ニューヨーク近代美術館 Mrs. Simon Guggenheim Fund. Acc. no.: 163.1945 Digital image, The Museum of Modern Art, New York/Scala, Florence

17世紀オランダの画家、ヘンドリック・ソルフの絵画を基にしたのが《オランダの室内I》です。原作の自然主義的な立体感や遠近法を拒み、リュートや男性の頭部、またフリルの襟を強調して描いています。

1928年頃からはコラージュの作品も手がけ、非芸術的な素材を取り込むなど、 伝統的な絵画表現へ反抗を試みるようになりました。

【第3章 逃避と詩情:戦争の時代を背景に】

1936年にスペイン内戦が勃発すると、ミロはバルセロナからパリへ逃れました。そして次第に厳しい現実から目を背けるように、自身の内面を探求するような作品を制作するようになります。

また第二次世界大戦が勃発した翌年、ミロは滞在していたフランスの小村ヴァランジュヴィル= シュル=メールで〈星座〉シリーズを描き始めました。

《明けの明星》 1940年 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ Fundació Joan Miró, Barcelona. Gift of Pilar Juncosa de Miró.

この〈星座〉シリーズとは、目の前の戦争という現実から離れ、詩や音楽にインスピレーションを受けて触発制作されたもので、紙に水彩とグアッシュで23点が描かれました。

そしてミロ本人が「高度に詩的な次元に到達した」と語り、代表作ともいえる〈星座〉シリーズのうち、本展では3点が公開されます。

現在、〈星座〉シリーズは世界中に散らばっているため、複数の作品をまとめてみられる機会は貴重だといえます。

【第4章 夢のアトリエ:内省を重ねて新たな創造へ】

《クモを苦しめる赤い太陽》 1948年 ナーマド・コレクション Successió Miró Archive

ミロは1947年に初めてアメリカを訪れ、依頼された壁画の制作に取り組みます。そこでは旧友らと再会したほか、アメリカの若い画家とも交流して刺激を受けました。

また1956年、マジョルカに長年の夢だった広いアトリエを築くと、さらに自身の芸術を再検討しながらじっくりと作品を制作するようになります。

かねてよりミロは日本の文化に大きな関心を寄せていましたが、ついに1966年と1969年に来日を果たし、自身の芸術と日本文化の親和性を確認しました。

《太陽の前の人物》 1968年 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ Fundació Joan Miró, Barcelona.

《太陽の前の人物》とは、画僧・仙厓義梵が描いた《○△□》から着想を得たもの。それらのモチーフを太陽と人物になぞらえて描いていて、ミロの日本との繋がりを示す作品として知られています。

【第5章 絵画の本質へ向かって】

1960年代には、より大画面の作品を制作するようになったミロ。さらに伝統的な絵画技法に抗って、バケツや壺から絵の具を垂らしたり、カンヴァスに火をつけたり、あるいはナイフで切り取ったりする手法を用いるようになります。

《焼かれたカンヴァス2》 1973年 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ Fundació Joan Miró, Barcelona. On loan from a private collection. Successió Miró Archive

《焼かれたカンヴァス2》は、描いたカンヴァスにガソリンを染みこませ、火を放った5点のうちのひとつで、絵画を投機の対象とする価値観への反発を示しているといわれています。

ミロが自身の表現を1983年に90歳で亡くなるまで更新し続けましたが、それは絵画の本質を追い求めた結果だったのです。

会場は東京都美術館のみ!イベント「スペイン☆ミロウィーク」も開催

《絵画(エミリ・フェルナンデス・ミロのために)》 1963年 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ Fundació Joan Miró, Barcelona. On permanent loan from a private collection. Successió Miró Archive

代表作の〈星座〉シリーズのうちの3点をはじめ、1920年代の傑作《オランダの室内I》や、晩年においても新たな表現に挑戦した《焼かれたカンヴァス2》など、各時代を代表する作品が世界中から集結する本展。

日本でのミロの回顧展としては、存命中の画家自身が協力した1966年の展覧会に並ぶ、過去最大規模の回顧展となります。また東京都美術館のみの開催で、他会場への巡回はありません。

『ミロ展』東京都美術館

展覧会が開幕する3月1日(土)から3月16日(日)の期間には、ミロが生まれ育ったスペインの文化を体感できるイベント「スペイン☆ミロウィーク」を開催。

イベント期間中は大学生・専門学校生の入場が無料となるほか、講演会や演奏会をはじめとしたイベントが盛りだくさん!さらに東京都美術館の正門横には、スペインの食を体感できるキッチンカーも出店し、イベントを盛り上げます。

また音声ガイドナビゲーターには、アーティストの岩田剛典さんが就任。声優の坂本真綾さんがナレーションをつとめ、ミロの芸術をめぐる旅へと来場者を誘います。

なお岩田剛典さんは2025年3月6日に36歳を迎える、まさに36(ミロ)にぴったりなアーティスト。3月6日(木)は「36(ミロ)の日」として、岩田剛典さんの誕生日を記念し、3つのスペシャル企画を実施します。詳しくは公式HPをご覧ください。

For all the works by Joan Miró here reproduced: © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 E5746

展覧会情報

『ミロ展』 東京都美術館

開催期間:2025年3月1日(土)〜7月6日(日)
所在地:東京都台東区上野公園8-36
アクセス:JR上野駅「公園改札」より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分。京成電鉄京成上野駅より徒歩10分。
開室時間:9:30〜17:30、金曜日は20:00まで。(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、5月7日(水) ※ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開室
観覧料:一般2,300円(2,100円)、大学生・専門学生1,300円(1,100円)、65歳以上1,600円(1,400円)
※( )内は前売券。前売券は2025年1月15日(水)10:00〜2月28日(金)23:59までの販売。
※18歳以下、高校生以下は無料。

展覧会HP: 『ミロ展』 東京都美術館

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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